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アルラウネと魔王様  作者: 化猫


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12/17

12、アルラウネと城下町2


「さてと、そろそろ昼頃だな」

「・・・バ、バート様もお腹すきました?」


 やっぱり呼びにくい。


「ああ、アルーナも燃費は良いが食べられないことはないんだろう」

「はい、光合成の方を少なくしたら良いので」

「・・・光合成するのか?」

「しますよ」


 魔王様が驚いた顔をしている。


 魔王様がなんだか幼く見えた。

 気のせいか。


 それにしても、そんなに驚くことだろうか。アルーナは、キョトンと首をかしげる。

 アルラウネは植物の魔物だ。当然光合成もする。


 魔王様でも驚くことがあるんだ。逆にアルーナの方はそれにビックリだ。


「いつもフルーツばかり食べているが、お前は肉は食べるのか?」

「お肉は食べないです。野菜とかフルーツばっかり」

「そうか、ならカフェのが良いか。普通の食堂だと肉しか無いところもあるからな」


 魔王様は、当たり前のようにアルーナのご飯を優先して考えてくれる。

 たぶん魔王様は肉食だ。私にご飯を与えながらも、自分にご飯を召し上がっている時はステーキとかも多い。


 あれこれ悩む魔王様を不思議な気持ちで見上げた。


「此処にするか」

「ここ・・・」


 魔王様が連れてきてくれたのは、街の隅の方にある店だ。

 甘い香りも漂ってきている。


「ああ、ここのケーキは旨いからな。魔王城にもよく卸している。ハウウェルは大の甘いもの好きだからな。何やかんや言い訳をしながら食ってるぞ」

「ハウウェルって誰ですか?」

「お前に紹介していなかったか。襲撃の後に入ってきてた魔族だ」

「ああ、あの方ですね」


 ハウウェルとは、銀髪の魔族のことだったのか。

 几帳面で潔癖なところがある彼が甘いもの好き、なんて知っていても良いのか。

 本人は隠していそうな感じだな。会っても、スイーツの話題は振らないようにしよう。


 照れ隠しに燃やされたら溜まったもんじゃない。


 魔王様が扉を引いて中に入れてくれた。


 透明なショーケースの中に綺麗なケーキが並んでいる。それに目を奪われていると、肩に手を乗せられた。


「いらっしゃいませ」

「二人だ。奥の席を頼む」


 魔王様は懐から何かを取り出すと、スタッフに何かを見せている。

 スタッフは頷いて、奥の席に案内してくれた。テーブル席で布で覆われている。他の者の目を気にしなくてもいい席だった。


「何を見せたんですか?」

「これだ。魔王軍の紋章だな。ある程度はどこもこれで融通がきく。便利なものだろう」


 魔王様が見せてくれる。

 木の板に細かく彫られた魔石が嵌め込まれていた。

 魔石を彫るのは大変だと聞いた覚えがある。こんなに細かい意匠だと尚の事だ。


「欲しいか?」


 魔王様がとんでもないことを聞いてくる。

 アルーナは慌てて首を横に振った。


「欲がないな。ツケ払いも利くぞ?」


 ツケ払いって、絶対それ以外の効力がスゴいやつだよね。

 間違ってでも手から滑らせて落とさないように、丁寧に返した。


「私は弱いので、すぐに奪い取られてしまいます」

「心配するのはそこか」


 魔王様が面白そうに笑っているが、アルーナにとっては持っていることを知られたら、襲われそうなものは要らない。

 なんなら、一人で町中を歩くこともまず無い。アルーナには過ぎたものだ。

 森ではお金なんて使わないからね。


「まぁいい、アルーナは今後一人で外を歩くこともないだろうからな」


 魔王様の言葉にアルーナは首をかしげる。

 町中限定ではなく?

 謎の言葉にアルーナは聞こうとするがメニューを見せられて、流されてしまった。


「お待たせいたしました。サンドウィッチのセットと季節のフルーツの盛り合わせでございます」


 メニューにあった通り、とても美味しそうだ。フルーツがつやつやとしている。


 魔王様の前には、サンドウィッチとパスタのセットになっている。サンドウィッチには、フルーツが挟まっている。フルーツサンドだ。


「では頂くか」

「はい」


 アルーナはフルーツが盛られた皿にフォークを伸ばす。ここにもグレイプの実が盛られている。真っ先にそれを口に入れた。


 このお店のも美味しい!

 アルーナの頭の上の葉っぱがピコンと立った。

 じゃあ、こっちはどうだろう。

 次はこの赤い実だと、フォークくぉ突き刺した。

 これも甘くて美味しい。もっと食べたくなる!


「フッ、そんなに旨いか?」

「・・・んっ、はい。とても美味しいですよ。よかったら食べますか?」


 フォークに赤い実を刺す。

 柄の部分を差し出した。 


「・・・じゃあ、食べさせろ」

「えっ・・・」


 魔王様がニヤリと笑うと、口を開いた。

 アルーナは、フォークを握ったまま、ピシリと固まる。

 そんなアルーナを見て、魔王様は面白そうに笑っているのだ。


 ・・・悪趣味!


 食べさせて貰う方は馴れたけど、食べさせる方には馴れていない。しかも、アルーナが幼い姿の時ばかりだ。


 森にいる頃だったら気にならなかったのに、なんで最近気になるんだろう。


 アルーナは頬を赤く染めて、睨み付けた。

 しかも、絶対に退いてくれなさそうだ。

 ううっ・・・。人目がないだけよかったと思っておこう。


 フォークを持って、赤い実を魔王様の口許に入れた。


「如何ですか・・・」

「うん、旨いな」


 目を細めて笑っているのを見ていると、仕方ないなという気になってしまう。


 でも、不思議だな。

 魔王様でもこんな風に笑うんだ。

 いつものキリッとピリッとしているのが通常なのかと思っていた。


 魔王様は意外な一面が多い。

 可愛いもの好きだし、甲斐甲斐しいしね。

 引きこもり期間は除いて、出会って間もないのに気が緩んでいる気がするな。

 たぶん魔王様からしたら、ペットみたいなものなのに・・・。


 アルーナは自分自身に苦笑する。


 魔王様の怖い面以外をみてしまうと、遥か雲の上の魔族が身近な存在に感じてしまう。

 うーん、流石に図々しいな。

 

 アルーナは自分の考えを振り払うように、首を横に振った。

 アルラウネ以外と交流がなかったアルーナが、他の魔族と関わることになって浮かれているだけだ。

 そうに決まっている。


 森に戻るまでは、そんな生活を享受しても良いか。

 アルーナはそんな風に考えていた。


 

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