第5話 隊長
お待たせしました。
「私とカーター准尉?」
アルベルはカーター准尉の方…集団へと目を向けた。それを気にする様子もなく集団の後ろから出てこないカーターと相変わらず難しい顔をするレイリー。
「そうです。私の資料ではアルベル中尉とカーター准尉が乗ることになっています」
てっきり単座に乗るものと思っていたアルベルは、一瞬理解が追い付かなかった。複座機に乗っていた時期にアルベルがどのような呼ばれ方をしているか他の隊員や人事部、大将でも知っている。アルベル自身も自分がどのように呼ばれているか知っていた。だからこそ複座機どころか戦闘機からも降り、偵察機隊に自ら異動したのだから。それがまた複座で、戦闘機に乗ることになるとは。しかも共に乗るのが若い女性だとは完全に予想外であった。
「もしも、この火器管制兼機体コントロールシステム…使うことはないとは思いますが、十分に注意してください。コントロールされた機体は、火器管制下から離れない限りパイロットは機体を操作できません。この事をよく覚えておいてください」
ざわざわと少し浮足立った雰囲気が、一瞬にして引き締まった。
〝火器管制下から離れない限りパイロットは機体を操作出来ない"
この意味をその場にいた全員が理解したからであろう。と同時にこの相方殺しの異名を持つ隊長に命を預けていいものかという考えがよぎったからだ。
一方で、アルベルは今すぐここを立ち去りたかった。異動も、ここで聞いた事も全てなかったことにして元の配属先へ戻りたい程に。
レイリー曰く、恐らく使うことはないとのことだが、それでもそのシステムを使う事が出来る、持っているというだけで周りからプレッシャーを感じるのだ。そしてそのプレッシャーからは決して逃れることが出来ない。
「機体の型式が若干違うのはこのシステムが入っているためです。ほかに違いはありません。これで機体の説明は以上です。私の配属先は皆さんの機体の専属整備小隊になりますので、気になることがあれば聞きに来てください。次に指令書があるのでこれをアルベル中尉に。機体に関するマニュアルと資料はこちらにおいておきますので皆さん目を通してください。それではこれで失礼します。」
アルベルがレイリ―から指令書を受け取った。レイリーが敬礼をして格納庫から去っていった。
「…国連軍総司令部より通達。XF-38実戦試験部隊、アメリカ合衆国第485試験飛行小隊 Egret隊は、二か月後の7月25日、空母コンステレーションの運用を開始と同時に実戦配備。二か月間でXF-38の飛行ライセンスの取得を実施せよ」
アルベルが指令書を読み終えると全員が敬礼し、「イエッサー!」と答えた。アルベルは、自身の機体の状態を確認せよと指示を出した。固まっていた人がばらけていく。
「アルベル・バーン中尉」
ばらけていく人の中で一人、近づく人間がいた。カーター准尉であった。
「初めまして、カーター准尉。どうやらこれから私たちは相棒のようだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします、中尉」
二人は渡された資料を見ながら自分が乗る予定の機体に向かって歩く。
「カーター准尉、出身と年齢と軍歴は?」
「出身はメリーランド州、22歳です。海軍には1年半前に。それまでは陸軍攻撃ヘリ部隊に4年ほど」
「西海岸の出身か…ヘリ部隊といったが、戦闘機は乗れるのか?」
「最低限の訓練は受けています。問題ありません」
「なるほど…身長、体重、3サイズは?」
「身長161㎝、体重56㎏、3サイズ…お答え出来ません」
「少し小柄か…?持病、視力、健康状態は?」
「持病なし、視力両目1.8、健康状態問題なしです」
「うん…パーフェクトな回答だ。これからよろしく頼む。…おっと、TACネームを聞いていなかったな。私のTACネームはflameだ。カーター准尉は?」
TACネームの話をし始めるとカーター准尉が少し俯いた。
「………little sharkです」
「little shark?さっきはJawsと呼ばれていたが?」
カーター准尉がさらに俯く。
「あれは…私の異名みたいなものです。こんなTACネームだし、前に乗っていた機体にもシャークマウスが描かれたので…おそらくそれで」
「そうか、分かった」
俯きが気になったが、本人が問題ないと言うのでアルベルはそれ以上の詮索を止めた。二人は足を止める。目の前には静かに佇む機体が、翼を鈍く光らせていた。
この出会いが、運命の歯車を噛み合わせた。
長らくお待たせしました。一か月も過ぎていました…。時が過ぎるのは速いですね…。さて、次回ですが、やっと戦闘機描写を出す予定です。頑張ります。
Twitterもやってます、名前がクラカヂールとなっていますが。進捗やなんてことはないつぶやきが載っています。よろしければこちらもお暇があればどうぞ。
次回第6話です。




