第18話 幻へ消えた747 その2
大変お待たせしました!
広大な海の上で、絶え間なく発着艦する航空機。空母にとってそれは日常である。
ここは空母コンステレーション。百を越える航空機と、万に及ばずとも劣らない人を乗せた、海上の街である。
「ご飯がもう無い……」
空になったトレーを前にクロエが膝から崩れ落ちた。
現時刻は08:45。時刻04:00からの哨戒任務を終え、任務を次の隊に引き継いだアルベルとクロエは、食事を取るために食堂へ来ていた。
「タイミングが悪かったんだ。諦めろ」
クロエの肩に手を置くアルベル。
空母内には一万人近い兵士が搭乗している。そして24時間どこかしらの隊、並びに部署が稼働している。そしてアルベル達が食堂に来る15分ほど前には、夜勤明けと始業前の搭乗員、5000人近くが一斉に朝食を取り終わる時間であった。したがって、食堂は朝ラッシュが終わりひと段落したところで、食材はほぼ残っていなかった。
「おや?イグレット隊の……」
落ち込むクロエを慰めるアルベルは、後ろから声をかけられる。その声の主は……
「貴方は、確かスワロー隊の……」
「スワロー隊、隊長マコト・ツヅキ一尉であります。先程の哨戒任務ではどうも」
アルベルらに声をかけたのは、先程の哨戒任務で先任隊であったスワロー隊の隊長、ツヅキ一尉であった。
「あぁ、任務の時はこちらこそ。……ところで、なぜこんな所に?スワロー隊の哨戒任務は04:00で終了したはずでは?」
「さっきまで仮眠を取っていた。混んでいる中の朝食は嫌だったもので、時間をずらしたら食堂の入口でトレー持って崩れ落ちた人とそれを慰めていた人が居たってわけです」
アルベルは、恥ずかしいといった具合に右手で顔を半分覆った。
「後ろから見ていて、まるで兄妹か、親子のようだったぞ」
微笑みながらツヅキ一尉は言った。ツヅキ一尉の親子のようだった、との言葉に二人がピクッと反応した。
スッと、クロエが立ち上がる。
「ご飯も無いようですので……。私はここで失礼します、隊長。何かあればお呼びください……」
トレーを戻し、フラフラとクロエが去って行った。
「……なにか、マズイこと言った?」
ばつが悪そうにツヅキ一尉が言った。
「色々と訳があるんだ。コーヒーでも飲みながら話そう」
アルベルとツヅキ一尉は食堂の奥へと進んでいった。
・・・・・・・・・・
「父親をねぇ……」
ガランとした食堂の端で食事をしながらアルベルとツヅキ一尉は話していた。
「そうなんです……。世界の戦争に首を突っ込むアメリカ軍において、戦場で戦友や友人、幼少期には、親を亡くす事は珍しくない。だが、准尉は目の前で唯一の肉親を失っている。本来なら、多少精神に異常をきたしてもおかしくない。それでも准尉は、父親の意志を受け止め、海軍に入った」
「それで、タッグを組んだのはアルベル大尉だった訳ですか」
アルベルがコクリと頷く。それを見ながらツヅキ一尉は、コーヒーを一口、口に入れた。
「複座の機体に乗るパイロットとコパイロットは家族同然ってのが大尉の考えでしたね。だが一方で、准尉には自分は父親の代わりではないと言った。アルベル大尉、それは、矛盾って奴ではないですかな?」
ティースプーンの先をアルベルに向けてツヅキ一尉は言った。そして、ツヅキ一尉こう続けた。
「幼少期に母親をなくして以来、准尉は父親しか家族を知らず、何年も生きてきた。そして父親を失った。そんな人にパイロットとコパイロットは家族同然って考えの人とタッグになって、父親と重ねるなって言うのは、無理があると思うですよね」
「やはり、他人の目から見てもそうなりますか……」
俯いてトレーの食材に目をやるアルベル。
「あくまでも、私個人の意見ですけどね。……いいじゃないですか?父親の代わりになってあげても。そうすれば、精神的にも安定するのでは?」
「それは……」
俯き、目を逸らすアルベルに、ツヅキ一尉が目を細めて口を開く。
「……何か、怖いんですか?」
ツヅキ一尉の問いに、アルベルの体がピクリと跳ねる。そして顔を上げて──
「かも……しれない……ですね」
──笑顔で答えた。
アルベルの誤魔化すような笑顔に、ツヅキ一尉は、ふーん、と呟き、頬杖をついて、食堂の大きなモニターに映ったニュースに目をやった。モニターにはニュースキャスターと大型の旅客機が映し出されていた。
「……カナダの副総督を乗せた政府専用機が消えてもうすぐ一年って話だったか……たしか、この辺の海域で消えたって報告を、前に見たような気がする」
ツヅキ一尉は、これ以上の追及は得策ではないと感じ、モニターに映ったニュースの話題をアルベルに振った。
アルベルもこの話は続けるべきではないと判断。振られた話題に乗ることにした。
「……一年前、ニュージーランド、オーストラリアを訪問予定のカナダの副総督、ダニエル・アウレル氏の乗ったボーイング747が太平洋上で突然レーダーから姿を消した。カナダ海軍が最後に確認した空域と海域を必死に捜索しているが、何一つとして見つからない、という話だ」
「なるほど、それでカナダ海軍機がうろついていたのか」
ツヅキ一尉は一人納得したような顔をした。
「見たのか?カナダ海軍機を?」
「あぁ。イグレット隊に任務を引き継ぐ少し前、1時間ぐらい前だったと思う。未確認の機体がレーダーに引っ掛かったんで、確認したら、カナダ海軍所属だった」
「なるほど……。そんなに早くから哨戒していたと言うことは、カナダは747が墜落したのではなく、渡り迷い鳥になったと判断したということだろうか……」
「可能性は高いでしょう」
二人の顔の表情が、険しくなった。
「ううむ……。この事は既に艦長たちに?」
「もちろんしましたよ。今洋上に出ている奴らも、皆知っているでしょう」
「うまく、見つかればいいんですが……」
「ですね」
「…………………………」
「…………………………」
重い沈黙が、空間を支配する。重々しい空気に耐えられなくなり、アルベルは再び話題を変えた。
「ところで、一尉」
「…………何ですか?」
「世界で一番美しい飛行機は何だと思います?」
早朝、クロエと話した話題に。
ツヅキ一尉は、目の前のコーヒーをスッと一口、口に含んで顎に手を添えて考え込んだ。少しばかりの沈黙。口に含んだコーヒーを飲み込み、アルベルを見つめる。導き出した答えは……。
「……瑞雲」
「ズイ……ウン……?」
瑞雲……それは、どこか不思議な言葉だった。
・・・・・・・・
一人自分のベッドが割り当てられた部屋に戻ったクロエは、暗闇のなか、自分のベットに突っ伏して……
──中尉はお父さんでもなければ、兄弟でもない。そんなことは分かってる。でも、無意識に中尉の背中に、お父さんの背中を重ねてしまう。重ねてしまった……ううん、重なってしまったあの日から、ずっと……。
……葛藤していた。
「中尉はお父さんじゃない。でも、あの後ろ姿を見るとお父さんに見えてしまう。……どうすれば……」
複座戦闘機のパイロットとコパイロットは、戦場において生死を共にする。そのため、空母内での共同生活とは別に、地上での休暇等でパイロットとコパイロットが家族ぐるみで過ごすことも無くはない。
しかし、これはあくまで信頼する相棒としてであり、家族や親族という意味合いはない。
「人間は、……難儀なものね」
独り言を呟くと、そのまま眠りについてしまおうと顔を枕へ押し付けた。
しかし、現実はクロエを夢の世界へ逃がしてはくれなかった。
[休憩中の各隊へ緊急召集。休憩中の各隊へ緊急召集。哨戒任務中の岐隊よりスクランブル要請。本艦より北北西145km付近にて磁気性積乱雲の発生を確認。直後、磁気性積乱雲より現れた所属不明機により攻撃を受けている。各隊は援護へ迎え]
ベットから飛び起き、ハンガーにかけてあったジャケットを持って、格納庫へ走り出した。
えっ、ええ~……もう11月?前回の更新から8か月? 長っ……長いわー……引くわー……まるで皆さんのオソm。(マッスル鎮守府リスペクト)
読者の皆様……大変長らくお待たせいたしました。すんません!色々あったんですぅ!パソコン壊れかけたり、お引越ししたり、もうとにかく色々あったんで許してくださいなんでも(ry
さて、恒例の解説ですが、解説部分は皆無ですね。変な所を掘っても後々きつくなるでしょうからやめておきましょう。また解説が必要になればあとがきに書きます。
ここから先、今回と同じく、更新がかなり不安定になります。それでも一生懸命頑張って話進めますので、ふと思い出した時にでも見に来てください。感想もいつでもお待ちしております。よろしくお願いします。
Twitterもやってます、アカウントはハインド@なろう作家挑戦中です。進捗や、なんてことはないつぶやきが載っています。よろしければこちらもお暇があればどうぞ。
次回第19話です。お楽しみに!




