第17話 幻へ消えた747 その1
誰かが聞いた
「世界で一番美しい飛行機は何だと思う?」
誰かが答えた。
「F-22だね。無駄のないスマートな機体だもの。世界で一番美しいさ」
誰かが答えた。
「Su-27だよ。溢れんばかりの曲線美がセクシーだろ?曲線の多い女性が美しいように、曲線の多いSu-27は美しいのさ。世界一ね」
誰かが答えた。
「ゼロ戦さ。軽さと曲線と直線のバランスが最高だからな!」
誰かが答えた。
「A380かな。ずんぐりとしたあのボディがたまらないよ」
誰かが答えた。
「ライトフライヤー号。空を飛ぶいう人類の欲望に忠実だから余計な物が一切付いていない。世界一美しいものだ」
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「中尉はどう思いますか?」
モップを持ったクロエが、食堂のテーブルを拭くアルベルに聞いた。
「世界で一番美しい飛行機は何か……か……」
テーブルを拭きながら悩ましいといった顔をした。
「最近、艦内はこの話題でいっぱいです。西側機派、東側機派、欧州機派、旅客機派、歴史的機体派、挙句の果てには回転翼派まで現れて、それはもう……」
はぁ……とクロエが溜息をつく。
「で、どの派閥が有利なんだ?」
「今のところは西側派ですね。日本人のほぼ全員がF-14を支持してて他より優位を保ってます」
トップガンだろうなぁ、と思うアルベルと、F-14の何がそうさせるのか?、と思うクロエだった。
「よし。掃除終わり。クロエ、飛行準備に入るから道具さっさと片付け……」
「掃除終わったかい?」
掃除を終え、器具の片付けに入るから二人の前にひょっこりと現れたのは、マグカップを両手に持ったロックス艦長だった。
「終わりました。これから片付けをします」
「そっかそっか。しっかりと頼むよ」
二人の横を抜け、食堂の奥へと行くロックス艦長。それを見てクロエが、
「コーヒーメーカーは、準備中でまだ使えませんよ?」
と言った。時刻は、日の出前の朝4:30を指している
「えっ?本当?」
素っ頓狂な声を出す船のトップを見てアルベルとクロエの二人は溜息を付いた。
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空母コンステレーションは現在、ハワイを出港し、各国の機体のデータを取りながら哨戒任務をして、オーストラリアのシドニー港を目指し太平洋を横断している。現在地は赤道を少し越えた所である。
早朝の哨戒任務の為、アルベルは装備を整える。パイロットスーツ、耐Gスーツ、救命胴衣、パラシュート、サバイバルキット、それらを繋ぐハーネス、そして緊急時自衛用の9mm拳銃M9。
「装備準備完了。さて上がろうか」
部屋を出てて、階段を上がり、甲板へ向かう。甲板に近づくにつれて飛行機の出す爆音が、耳を裂くように聞こえてくる。
コン、コン、コン、コン。
階段を上がる。
甲板に出ると機体の前でクロエが待っていた。
「遅いですよ。朝食前の哨戒なんですから、早くやってしまいましょう」
「そうだな。悪かった」
クロエが機体に架かる梯子に手をかけ、登り始めたのを確認して、機体の前で左肩、右肩、頭、腹を順に触り、十字を切る。終わると機体に架かる梯子に手をかけて、機体に乗る。座席に座り、目の前のパネルを触り始める。
「機器チェック開始。電子機器稼働開始」
アルベルは手を上げ、周囲の作業員に合図を送る。
「マスタースイッチオン、スタータースイッチオン。スターターレディ……よし。火災警告灯点灯なし。メインエンジンスタート。右エンジン点火。FTIT計上昇開始。…………安定。左エンジン点火。空気取り入れ口オート。ECCスイッチサイクル。……各システムの警告灯の点灯テスト……クリア」
手際良く発艦準備を進めるアルベル。
「各システムの警告灯異常なし。INSのアライメント……INSアライメントクリア。レーダー起動。FCS起動。機外兵装ステーション兵装の接続を確認。FCS同期スタート。短距離空対空ミサイル二機、外部接続増設レーダー3、増槽2。FCS同期クリア」
クロエも手際良く進める。
「ブレーキチェック、ハーネスチェック、座席射出アーム、キャノピーチェック……オールオーケー」
「LSO(発着指揮所)へ。こちらイグレット隊一番機、コールサインEgret1。哨戒任務につき、発艦を求める」
[LSOよりEgret1へ。現在甲板作業中。作業員の指示に従いカタパルト上まで前進せよ]
「了解」
アルベルは計器を見つつ、甲板作業員の手信号に従い機体をゆっくり前進させる。機体はポンポンポンと跳ねながら進んでいく。作業員が停止の手信号をアルベルに送る。ブレーキをかけて機体を停止。
折りたたんでいた主翼を広げる。周りを作業員がキビキビと動く。機体の目の前に旗を持った作業員が一人立つ。
「舵作動、フラップ距離ポジション、トリム距離位置チェック……」
機体の前の作業員が、バサッと、旗を持った両手を挙げる。機体の動作チェックの合図である。アルベルは作業員の合図に合わせ、操縦桿とフットペダルを操作した。一通り終えると、旗を持った作業員は正面から居なくなる。
[LSOよりEgret1へ。CDC(戦闘指揮所)より発艦許可が出た。スロットルを自動ロックし、操縦桿から手を放して射出に備えよ]
発艦の許可が出る。
「了解」
アルベルは中央のタッチパネルを操作して自動発艦システムを起動して、指示された通りに、スロットルレバーをロックし、操縦桿から手を放して周りを見る。
後ろを見ると、機体後方に、後続の発艦機をジェットエンジンによる気流から守るための板であるジェット・プラスト・ディフレクターが立ち上がったのが見えた。同時に作業員たちが周りから離れていく。
[LSOよりEgret1へ。甲板作業完了。これより射出する。Good Lack]
作業員ら敬礼する。アルベル、クロエも敬礼を返す。敬礼した手をピッと前に向けた。
グッとシートに身体が押さえつけられる。地上の発進よりも強く。強く。
機体が空母甲板上から打ち出され、襲い掛かる浮遊感を感じ、スロットルレバーのロックを解除、同時に押し倒しフルスロットル。ギアアップ、フラップ格納。そしてピッチアップ。機体が高度をグングン上げていく。
「Egret1より、CDCへ。これより任務引継ぎ、及び任務を開始する。前任機はどこか」
[CDCよりEgret1へ。レーダーにて確認した。このまま方位203へ向かい、前任機であるSwallow隊から状況の説明を受けろ。引継ぎ後はEgret2、3を、引継ぎを行った空域で待て]
「Egret1了解」
昇る太陽に機体を赤く照らされながら、進路を南西に取り、高度を上げる。
「little shark、Swallow隊はレーダーに映っているか?」
「確認中……、いました、レーダーコンタクト。2時の方向、方位260、距離15、速度550で、2機編隊で巡航中」
「了解、コンタクトを取る。Swallowへ。こちらイグレット隊一番機、コールサイン」
通信機をONにして呼び掛ける。
[こちらSwallow1。Egret1をレーダーで確認した。これより接近する]
視界右側から、赤と緑の光を点滅させた機体が近づき、アルベルらの機体の後方を通り過ぎていく。
「日本海上自衛隊、XF-01Mで間違いありません」
後ろから白地に青いラインを描かれた少し小さな機体が迫り横に並ぶ。
小型の機体、機体底面からわずかに上に伸びる細い主翼、一度見たら忘れないであろうイルカのような、かわいらしい機首、そして垂直尾翼に描かれた空を飛び回る燕と日の丸。
日本海上自衛隊、第923戦闘試験飛行中隊 Swallow隊のXF-01Mで間違いなようだった。
「了解した。コンタクト取る。……Egret1からSwallow1へ、任務引継ぎを行う。当該空域の状況を報告せよ」
[Swallow1からEgret1へ、了解した。当該空域の状況を報告する。当該海域、気温23℃、湿度77%、雲量36%、3日以内の磁気性積乱雲の発生確率25%前後、当該空域に事前に報告があった機体以外の機影なし。報告終了]
「了解した。Egret1、Swallow1より哨戒任務引継ぎを完了した。これより哨戒任務に入る」
[Swallow1了解。これより帰投する。Good Lack]
アルベルらの横に並んでいた二機のコックピットから敬礼をされ、敬礼を返す。Swallow隊がゆっくりとローリングして、高度を下げながら離れていく。見送ると後ろから二機近づく機体が見える。遅れてきたEgret2、Egret3であった。
「Egret2、Egret3を確認しました。両機、隊列に入ります」
先程のSwallow隊に代わって、Egret2、3が横に並ぶ。
「よし、準備完了。little shark、僚機とのデータリンク開始、データ収集開始」
「了解。データリンク開始、データ収集開始」
開始の合図と同時にスロットルレバーを押し倒す。シートに身体が押し付けられる。操縦桿を堅く握る。
ここは、太平洋の広い広いど真ん中。頼りになるのは経験と信頼。姿見えぬ敵意と好意と困惑の狭間に二人はみを置いたのである。
2月は28日までしかないんだよ?
2月のマジックにやられました。その勢いでこんなことに……(白目)。
さて、投稿こそ遅れましたが、今回から新章であります。新章です。正直だからなんだって話なんですが……。ここから先の話が、何話かまとめて一つの話が複数という形式になります。オムニバスっぽい感じですね。
さぁ、恒例の解説です。
今回の解説は、Swallow隊のXF-01Mですね。正直機体設定かなり迷いました。理由としてはいくつかの案がすでにあった事、そして昨年末に決まった護衛艦いずもの空母化決定ですね。特にいずもの空母化は完全に想定外でした。
この小説の世界線では、いずも、かが、とは別に日本は空母を新造しており、任務も現実での離島防衛ではなく太平洋公海上での哨戒偵察による、空路防衛、空路治安維持なので、離島防衛も含めると、コンセプトそのものも変えなければなりませんでした。それを踏まえて考えていくと自然と案が膨れ上がっていくわけで……。T-4ベースの軽戦闘機、F-15ベースの重戦闘機、F-2の艦上戦闘機化、F-4再生産&艦上戦闘機化、VTOL戦闘機の導入などなど。案が膨らんでは萎んでを繰り返し、最終的にT-4ベースでA-4スカイホークを作ればよいのでは?となり、結果できたのが本編のあれです。T-4の胴体底面から主翼を生やす結果でした。なお、デルタ翼じゃないので収納時は主翼は折りたたみます。個人的には嫌いじゃないです。ナンバリングは前回のあとがきをご参照ください。
今回の解説は以上になります。また解説が必要になればあとがきに書きます。
恐らくここから先、更新がかなり不安定になるかと思います。それでも一生懸命頑張って話進めますので、ふと思い出した時にでも見に来てください。感想もいつでもお待ちしております。よろしくお願いします。
Twitterもやってます、アカウントはハインド@なろう作家挑戦中です。進捗や、なんてことはないつぶやきが載っています。よろしければこちらもお暇があればどうぞ。
次回第18話です。お楽しみに!




