第35話 集まる金属片
ニックはその後も他にないかと周辺を探して回る。
しかし、言葉の通じないヴェールとは意思疎通がうまくいくわけもなく、結局一枚を見つけたっきりになってしまった。
「結局これだけでしたね。でも、なぜ急に出てきたのでしょうか」
「それが分かれば苦労はしないわ。それよりももう中に戻りましょう。そろそろアーツたちも戻ってくるでしょうし、解析にかけてみましょう」
「そうですね。それじゃ戻りますよ」
ニックとクロノは航宙船の中に戻ろうとする。
ところが、ヴェールだけはその場からまったく動こうとしなかった。何か気になるものがあるのか、じっととある方向を見つめたまま立ち尽くしていた。
「ヴェール?」
クロノの声が聞こえると、ようやくヴェールが振り向いて走ってくる。
「あっちに何かあるのかしらね」
「どうなんでしょう。でも、今日はこれ以上外にいるのは危険でしょうから、中に戻って帰りを待ちましょう」
「そうね」
ヴェールの見ていた先が気になったものの、いい感じに日が傾いてきている。このままではすぐにでも日暮れを迎えるだろう。
まだまだ分からないことだらけの世界だ。ニックとクロノは戦える人員ではないので、あまり下手に出歩くべきではないのである。
しばらくすると、ハッチが開く。どうやらアーツたちが戻ってきたようだ。
「戻ったぜ」
「まったく、酷い目に遭ったぜ……」
アーツは元気そうだが、レンクスはぐったりとしていた。
「お帰り。何があったのよ、レンクス……」
出迎えるクロノだが、ヘロヘロになったレンクスにまったく言葉がなかった。
「また、ずいぶんと酷いことがあったみたいね」
「前見て歩かねえからだぞ、レンクス」
「うるせえ! あんなところに池があるとか誰が想像するか!」
どうやら、歩いている間に足元と前方不注意から池に落ちたらしい。全身ずぶ濡れなのはそのせいのようだ。
「金属片を探し出そうとして、無駄に張り切るからそうなるのよ。ノワールとオランジュに頼まないから……」
「俺だって見つけたいんだよ」
レンクスは叫んでいるが、魔素を感じ取れる能力がないことにはいくら目を凝らしても金属片を見つけることはできない。
実際、ノワールたちからブランに伝え、そこからアーツやレンクスに伝えるという伝言ゲームでしか、二人には見つけることができていない状況だ。張り切るだけ無駄というものである。
「とりあえず、ノワールとオランジュのおかげで、今日もこれくらいの収穫があったよ」
「思ったよりもあちこちに落ちているみたいね。でも、あたしたちじゃ見つけられないから困ったものだわ」
ブランが首を捻る中、アーツが拾い集めた金属片をニックへと渡している。
「ずいぶんと見つかりましたね」
「ノワールとオランジュが頑張ってくれたからね。ニックたちの方はどうだったの?」
自慢げに自分の眷属を自慢するブランは、取って返すようにニックたちに質問をぶつけてきた。
これには、ニックとクロノは顔を見合わせている。
「はは~ん、何かあったのね。教えてよ、クロノ」
「うん、それは落ち着いてから話すわ」
「そっか。それじゃ先に汗を流しておきましょうか。ここの気候ってかなりじめじめしてるから、汗で気持ち悪いのよね」
そんなわけで、詳しい話をする前に、まずはお風呂で汗を流すことになった。
すっきりしたところで、ニックたちは分析室へと集まる。
「なんで分析室にしたの?」
集まった場所が分析室だったので、ブランが疑問に思ってニックに問いかけている。
「それは後のお楽しみよ」
クロノは意地悪そうに笑っているものだから、ブランは首を傾げている。
クロノがアーツたちを引き留めている間、ニックはさっき分析器に放り込んだ金属を取り出していた。このくらいの時間なら、簡易分析くらいは出るだろうと思ったからだ。
「すまないですね。ここに集まってもらったのは、これを見てもらうためなんです」
「金属?」
「またずいぶんと大きいな」
アーツたちがまじまじと見つめている。
「実はこの金属、操舵室の真下の辺りでヴェールが見つけてくれたんです」
「えっ?」
驚いたことを出したのは、もちろんブランである。
ブランの配下の虫たちは、魔素を感じ取る能力がある。そのため、こんな近くにあるものを見逃すわけがないのだ。
「それは私たちも思ったわ。ブランの虫たちがこんな近くにあるものを見落とすわけがないって」
「だから、今日になって急に出現したんだと思うんですよ。ヴェールが気が付くまでにはずいぶんと時間がありましたからね」
ニックとクロノの話す内容は、アーツたちにとっても信じられない話だった。
だが、現実に起きてしまった以上は、そうなのだろうと納得するしかないのである。
「それで、この金属には他にはない特徴があるんです。見て下さい」
ニックがとある面を上に向けておくと、アーツたちがそこをじっと覗き込む。
「変な模様があるな」
「なんだ、これは」
「きっと文字だと思います。きれいに横一列に並んでいますからね。そして、少し隙間を開けてしたの段に続いています。ですので、なんらかの文章だと思われるんです」
「そんなまさか……」
ニックの推測に、アーツたちは信じられないようだった。
そこで、ニックは先日見た夢の一部をここで話すことにした。
「先日、変な夢を見たのですが、僕は最後にこう言われたんです。『主の二の舞になるな』と。だから、これもそういったメッセージ性のある言葉だと思うんです」
唐突なニックの話に、アーツたちは驚きを隠せなかったのだった。




