第34話 謎の金属
アーツたちは大量の金属片を持って、航宙船へと戻ってきた。
「こ、これは……」
「ああ、ノワールたちが頑張ってくれたんで、たくさん見つかったぜ」
「ありがとう、これだけあれば何か面白いものが作れるかもしれない。試してみますよ」
早速金属片を目にして力を使おうとするニック。
だが、いくら待てども反応はまったくなかった。
「な、なんで……」
うんともすんとも反応がないので、ニックは呆然としている。
「力が目覚めたばかりだから、いきなり大きなものは無理なんじゃないかだって」
落ち込むニックに、ブランがノワールたちの言葉を伝えている。
これにはアーツたちもちょっとがっかりしたようだ。
「そううまくはいかねえか」
「まあ、そうだな。ニックはほとんど航宙船に閉じこもっているというのもあるだろう。俺たちに比べて目覚めるのが遅かったのも、その影響だしな」
アーツとレンクスの言葉に、ニックはショックを隠し切れないようだった。
「まあ、気を落とさないでよ、ニック。理由は分かっているんだったら、ニックもこれから外に少しずつ出ればいいわけだしね」
「う、うん。そうですね、クロノ」
クロノの呼び掛けに、ニックはこくりと頷いている。
「そんなわけだから、明日からは私はニックとこの航宙船周りを見ているわね」
「ああ、だが、気を付けろよ。戦闘力がないんだからな」
「心配要らないわよ。ヴェールがいてくれるものね」
『任せろ』
アーツの心配を聞かされて、クロノはヴェールに抱きついていた。
ヴェールもその気十分らしく、鎌を振り上げて護衛としての力をアピールしている。
クロノがノワールたちを気に入っているように、ノワールたちもクロノにはブラン同様に懐いている。主の友だちは主というような感覚なのだろうか。首を傾げたくなるばかりである。
とはいえ、ブランの配下に加わった虫がいるのなら、それだけで安心感が違うというものだ。
「それはそうと、ブランの従えている虫に新しいのが加わっていますね」
ニックはオレンジ色の虫を見ながら、話しかけている。
こうも毎日ノワールやヴェールを見ていたせいか、虫が一匹増えたところで驚かなくなっていた。
「ふふっ、今日仲間に加えたの。オレンジ色だから、オランジュっていうの。ノワールと同じで女の子みたいだよ」
『主様のために、忠誠を誓いましょう』
なんとも騎士然とした物言いだが、この言葉はブラン以外には伝わらないのがもどかしいものだ。
『我の方が先だが、おぬしは空が飛べる。我が地上、おぬしが空から主たちを守るのだ』
『心得た』
「なんだか、とても仲良くできそう。ちょっと安心したな」
ノワールたちのやり取りを聞いていたブランは、安心したように笑っている。
この日もいろいろあったものの、アーツたちはゆっくり休むことができた。
翌日になると、アーツたちはいつものようにノワールたちに乗って出発していく。今まで調べた場所でも金属片が落ちていないか確認するためだ。
航宙船にはニックとクロノ、それとヴェールが残る。
ニックは魔素に慣れるようにと、初めて航宙船の外で長時間を過ごすことになった。
「アーツたちが言っていたように、少し蒸し暑いようですね。航宙船の中は機械で自動的に適切な環境に整えられていますから、これはなかなかに不快な環境です」
ニックは外の環境について淡々と感じたままを述べている。
「単純に空気中の水分が多いのでしょうね。そのおかげで僕たちは毎日の飲み水には困っていませんが、なんとももどかしいものですね」
「本当にニックってば、分析したがるわね」
「性分というものでしょうかね。僕の家は昔からエンジニアの家系ですから、機械をいじったり、分析をしたりというのは好きなんですよ」
「そういうものなのね」
真面目に語るニックに対して、クロノは小さく微笑んでいる。
そんな中、ヴェールがのそのそと動いていく。
「どうしたの、ヴェール」
クロノがすぐに気が付いて声をかけると、ヴェールはとある地点で止まって、鎌の先を地面に突きつけている。
「何かあるみたいね」
ニックとクロノが近付くと、そこには何か奇妙な金属が落ちていた。
「今まで気が付かなかったなんて、一体どういうことなのかしら」
クロノは首を傾げている。
確かに今いる場所は、出入り口となっているハッチの反対側、操舵室の真下くらいにあたる場所だ。
しかし、この程度の距離であるならノワールが気が付かないわけがない。
そうなると、今日になって急に降って湧いたことになる。
「ちょっと見せて下さい」
ニックは眼鏡に手をかけて、じっと地面の金属片を見る。
「何かも字が書いてあるみたいですね。ですが、地球語ではなさそうです。これではさすがに読めませんね……」
どうやら、見つけた金属には文字が書かれていたようだ。しかし、今の地球に現存するどの言語とも違うらしく、ニックたちに読むことはできなかった。
「念のため、航宙船の解析にかけてみましょう。何か分かるかもしれません」
「ええ、そうね」
落ちていた金属を拾い上げると、ニックたちは一時的に航宙船の中へと戻っていった。
昨日まで感知できなかった金属。一体誰がどうやってここに置いたのか。
まったく不思議な話である。




