第27話 追撃
長い細いトンネルを抜けて、アーツたちは地上に出る。
「ぷはっ! 狭すぎるぜ」
「まったくだな。何度引っかかるかと思ったぜ」
「あそこから抜け出せたんだから文句言わないの」
「ノワール、ヴェール、ありがとうね」
最後尾にいたブランが、二匹の虫にお礼を言っている。
改めて立ち上がって周りを確認するアーツたち。ここがどこなのかまったく分からない。
「どこを見ても森だな」
「ええ、そうね。これだけ木々が生い茂っていれば、あいつらから見つかることもないでしょうね」
「かもな」
高さといい密度といい、自分たちの姿を隠すには十分なほどだった。
とはいえ、アーツたちにはもうひとつ問題があった。
「ここは、どこなんだよ、本当にさ……」
そう、現在地が分からないという問題だ。
暗くて狭い穴の中を抜けてきただけに、アーツたちの感覚では現在地を知ることは不可能だったのだ。
「ノワール、分かる?」
様子を見ていたブランが、穴を掘った張本人であるノワールに問いかける。ノワールは方向感覚がしっかりしているらしく、こくりと頷いていた。
アーツたちはそれを信じて、ノワールの後について航宙船へ向けて歩き始める。
どのくらい経っただろうか。
行けども行けども航宙船には到着できず、アーツたちは焦りの色を見せつつあった。
それというのも、周りはずっと森の中の景色が変わらなかったからだ。
平地を歩くに比べてあまりにも景色の変化が少ないし、アップダウンに富んでいる。アーツたちは容赦なく体力を奪われていき、苛立ちが募っていっている。
「くっそう、いつまでこんな森の中を歩けばいいんだよ!」
耐え切れなくなってアーツはその場に座り込んでしまった。
「アーツ、仕方ないでしょ。外に出ればあの恐竜たちにいつ見つかるか分からなんだから」
文句を垂れるアーツに、クロノが怒っている。
クロノの怒りように、アーツは完全に黙り込んでしまう。昔から、アーツはクロノには簡単に勝てないのだ。
ところが、このケンカがよくなかった。
ギロリ。
どこからともなく恐竜の頭が目線の高さに現れ、アーツたちを睨み付けてきたのだ。
『なんてことだ。あの程度のことで気付かれたぞ!』
ブランの通訳を通じてノワールの声が伝えられると、アーツたちは一斉に走り出す。
ノワールとヴェールは、それぞれブランとクロノを背中に乗せて走り出す。男たちは自分で走れと言っているようだ。
「くそっ、覚えてやがれ!」
アーツは思わず恨み節を言い放つ。
「グワアアアアッ!!」
その瞬間、恐竜のしっぽが上空を薙ぎ払う。
地面から相当高い位置を過ぎていったものの、辺りの木々はその衝撃で一斉に姿を消してしまっていた。
「ふえええ……」
あまりの威力に、ブランが震えている。
これだけ木々がなぎ倒されてしまえば、森にいる意味がなくなってしまう。
どうにかしてあいつを倒さないとと、アーツは必死に考えていた。
「くそっ!」
アーツは恐竜がしっぽを振り回そうとした動作を見ると、閃光剣を取り出していた。
「何をする気だ、アーツ!」
「一か八か、俺の能力に賭けてみる。まだ正確に把握してないが、いちいち確認なんてしてられねえ!」
閃光剣を取り出し、自分の頭上に掲げる。
(頼む、うまくいってくれよ。あの時のことが確かなら、俺の能力はこの閃光剣や閃光銃に有効のはずだ)
その次の瞬間、恐竜のしっぽが再び振り回される。
(今だ!)
アーツはぐっと剣を握る手に力を込める。
「だっりゃあーーーーーっ!!」
その瞬間、アーツの握る閃光剣が大きくなる。
ズバッ!!
「ギャアアアアッ!!」
アーツの持つ剣が恐竜の太いしっぽを切り落とし、痛みで恐竜が暴れまわっている。
「へへっ、どうだ。この野郎……」
一撃をお見舞いしたことで、アーツはにやつきながら恐竜を睨み付けている。
「バカ野郎、油断するな!」
レンクスが叫んでいる。
それも無理はない。しっぽを切られた恐竜は、アーツを睨み付けて大きく息を吸い込んでいる。
これは火を吐く予備動作だ。
ところが、アーツはなんとも落ち着いた様子で立っている。
「おい、アーツ!」
レンクスが叫んで飛び出そうとするが、それをヴェールとクロノが止めている。
「おい、クロノ!」
「あなたも焼け焦げるつもり? それに、アーツは考えがあるみたいだから、私たちは信じてここで待機しましょう」
「く、クロノ……」
レンクスは黙り込むしかできなかった。
「くそっ……。死ぬなよ、アーツ」
祈るレンクスの目の前で、恐竜の口からまさに火が吐かれようとしている。
「待ってたぜ、この瞬間をよ!」
アーツは閃光剣から閃光銃に武器を持ち換えていた。
その閃光銃の照準は、恐竜の頭にぴたりと合っている。
「二度も食らうと思うなよ!」
火を吐く瞬間を狙って、アーツの持つ閃光銃から銃撃が放たれる。
アーツの能力が乗った閃光銃の一閃は恐竜の火を吹き飛ばし、恐竜の口を完ぺきに捉えていた。
「ギャアアアアッ!!」
閃光銃の一撃を食らった恐竜は、反撃しようにもしっぽは既に切り落とされてしまっており、そのまま体を横倒しにしてしまった。
「勝った……」
大きな音を立てて倒れ込んだ恐竜の姿を見て、アーツは小さく呟く。
「勝ったぞおっ!!」
かみしめるように、もう一度雄たけびを上げて喜んだのだった。




