第24話 目立った収穫はなし
アーツたちがやって来たのは、先日恐竜と出くわしたポイントだった。
「ノワール。例の金属はどこで見つけたんだ?」
ヴェールから降りると、早速アーツはノワールに問いかけている。
ノワールはアーツの言葉を理解しているようで、ブランとクロノを乗せたままとことこと歩き始める。
ある程度進んだと思えば、ぴたりと足を止めた。
「ここらしいわ」
「……何も見当たらねえな」
やって来た場所は、周囲に木々が立ち並ぶ、ちょっとした空き地だった。
周りを見回してみても、これといって変わったところがあるようには見えなかった。
アーツたちがいくら周りを見てみても、本当に変わったところが見受けられない。
今となっては頼もしい仲間なのであまり疑いたくはないが、アーツたちからすればしょせん虫かとしか思えなかった。
しばらく周辺を探索していた時だった。
「アーツ、レンクス、こっちに来て」
一緒になって探していたブランとクロノから、二人を呼ぶ声が聞こえてくる。
「おう、どうしたんだ、二人とも」
呼ばれたので、アーツとレンクスは慌てて二人のところに駆け寄っていく。
二人は揃って地面をじっと見つめているのだが、男二人の目からは何かあるようには見えなかった。
「ここがどうしたんだ、二人とも」
「アーツ、もっとよく見てよ。何か見えないかしら、ここ」
「ううん?」
じっと地面を見つめるアーツだったが、何もおかしなところは見受けられない。
「おい、アーツ。お前、本当にちゃんと見てるのか? ここを見てみろよ」
レンクスが声を荒げている。どうやら、レンクスの方は何かが見えたようだ。
それでもアーツは首を捻っているので、見かねたレンクスが周りの土や葉っぱを取り払っていく。
「な、なんだそれは!」
そこに現れたのは、この場所の世界観にはふさわしくない金属の板だった。
よく見ると、何かが付いていたような形跡があるので、ノワールが見つけた金属の塊はおそらく取っ手か何かだったのだろう。
「分からねえよ。ただ、この場に似つかわしくない物質だってことには違いなさそうだな」
「開けられそうか?」
「分からん。取っ手が壊れちまっている以上、このまま開けるのは厳しいだろうからな」
「そっか……」
試しにレンクスの怪力で開けてもらおうとしたものの、そもそも手も指も引っかけられなかった。
なにぶん取っ手は根元から壊れているので、どこもつかむことは不可能だったようだ。
「ダメそう?」
ブランとクロノが心配そうに見つめているが、レンクスは首を横に振っていた。
「まったく、面白そうなの見つけたのに、探れねえっていうのはつまんねえぜ」
両手を広げながら首を大きく左右に振るレンクス。どのくらいがっかりしているかというのがとても分かりやすいというものだ。
「しょうがねえ。これはニックにでもどうにかしてもらうしかねえな。ブラン、周りの様子はどうなんだ?」
ノワールとヴェールの二体に周辺を探らせているブランに、アーツが状況を尋ねている。
「二人が言うには特に変わったものはないそうよ。恐竜たちもいないみたい」
「そっか……。それじゃ、今回のめぼしいのはこれくらいか。クロノ、撮ってもらっていいか?」
「了解。見た目から何か分かればいいんだろうけど、さすがに私たちにはさっぱり分からないわね。ただ、相当の技術を持ってそうってのは分かるわ」
撮影をしながら、クロノはそんなことを言っている。
いろいろと話をした結果、今回はこの金属の板が何なのかを調査するのは諦めることになった。
周辺の調査も行い、段々と陽が暮れ始めてきている。
今日のところはこのまま野宿ということになりそうだった。
よくよく思えば初めての野宿ということで、アーツたちはまったく分からないことばかりである。
「とりあえず、どこか安全に休めるようなところがないかを探そう。航宙船の中以外で休むのは初めてだからな」
「賛成。ブラン、二人に聞いてみてくれる?」
「うん、分かった」
クロノに言われて、ブランは早速ノワールとヴェールに周辺に休めそうな場所がないかを確認する。
「ついて来てだって」
どうやら、見つけていたらしく、ブランを通じてアーツたちに付いてくるように伝えていた。
アーツたちはそれに従って、ノワールを先頭にして進んでいく。
しばらく進んでいくと、切り立った崖のような場所に出てきた。
あまりにも垂直な崖に、アーツたちは思わず息を飲んでしまう。
下の方に目を向けると、いい感じの横穴が開いていて、中に入ることができそうだった。
「安全なのか?」
ノワールに問いかければ、こくりと首を縦に振っている。
「追い出しておいたから大丈夫、だそうよ」
「そっか。そいつは頼りになるな」
アーツたちはノワールたちの優秀さに感心しているようだ。
中に入っていくと、入口は少し狭いものの、広さは十分あるようだった。
「よし、今日はここで休むぞ。明日もまた、近くを散策してニックに情報を持って帰ってやろうぜ」
「おーっ!」
ゆっくり安心して休めそうな洞穴に、アーツたちは歓喜するのだった。
「ノワール、ヴェール、何をしてるの?」
ブランが顔を外に向けると、なにやら葉っぱをくわえて戻ってきていた。
「これを敷いて、その上で寝ろって? もう、気が利くわね」
レンクスに葉っぱを受け取ってもらい、ブランは二匹を褒めながら撫でている。
二匹が入口の警備をする中、葉っぱの布団にくるまりながらぐっすりと眠ったのだった。




