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ドラゴニックプラネット  作者: 未羊


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第21話 目覚めぬ者

 クロノから発生した光が、アーツの体に吸い込まれていく。

 その光が吸い込まれていくと、アーツが負った傷がまるで巻き戻るかのごとく跡形もなく消え去っていく。

 すべての光が消え去った時、アーツの状態はすっかり元通りに治っていた。


「おい、嘘だろ。ケガひとつなくなっているぞ」


「服自体の傷は元々なかったですけど、これはなんとも不思議な現象ですね」


「えっ……。一体何が起きたの、今」


 目の前で起きた現象に、その現象を引き起こした本人が一番驚いている。


「すごい、クロノの能力って傷を治しちゃう能力なの?」


「能……力……? これが、私の?」


 ブランが目を輝かせながらいうものの、クロノはやっぱり状況を把握できないようである。


「ということは、クロノの能力は傷を癒す力ってことでいいのか?」


「多分、そうだと思う」


「ってことは、これからは多少ケガをしても大丈夫ってことか。それなら探索が進みそうだな」


 ケガをしても治せるとなれば、多少の無茶はできる。

 なんとも脳筋なレンクスらしい言い分である。


『主、あそこを』


 大げさに喜びまくるレンクスを横目に、ノワールとヴェールがブランに近付いて何かを示している。

 何かと思って顔を向けた先にいたのは、ニックだった。

 そう、ニックだけはまだ能力に目覚めていないのだ。

 みんなと同じように魔素を吸い込んで生活しているというのに、ただ一人だけまだ何の能力も持っていない。

 それがいかに残酷な現実かということを、子どもであるブランたちには今一つ理解できなかったのだ。

 下を向いて歯を食いしばるニックに、ブランがそっと近づいていく。


「ニック、大丈夫?」


「く、悔しくなんてないんですからね。僕は技師なんだ。変な能力になんて頼らないんですからね!」


「ニック!」


 ブランが呼び止めようとするも、ニックは自分の部屋へと飛び込んでしまった。


「ニック……」


『主、今はそっとしておこう』


『一人だけ仲間外れになるのは、誰だってつらいというものだからな。俺もノワールに賛成だ』


「そっかあ……。うん、分かった。今日のところはそっとしておきましょうか」


 レンクスが一人盛り上がる中、ブランは一人走り去ったニックを心配していた。


 アーツの傷は治ったものの、しっぽに攻撃された時の衝撃が強かったのか、航宙船に戻ってきてからかなり時間が経つというのに、なかなか目を覚まさない。


『……うーむ』


「どう、ノワール」


 あまりに目を覚まさないので、ブランはノワールとヴェールの二匹に、アーツの容態を見てもらっている。


『魔素の流れは問題ない』


『体の状態もすっかり良くなっている。ただ、受けた衝撃が強すぎて、しばらく回復がかかっているようだ』


「そっか。それで、いつ目を覚ましそうかな」


 二匹の診断を聞いて、ブランは一番重要なポイントを確認する。


『はっきりとは言えんのだが、何か刺激になるようなことでも与えれば目が覚めるのではないだろうか。いや、暴力はやめろと伝えてくれ』


 ブランが同時通訳をしている、それを聞いたレンクスが、アーツの襟元をつかんで何かをしようとしていた。


「ちょっと、レンクス。何をしようとしているのよ」


「いや、衝撃を与えようって話だから、俺が頬を叩いてやれば目が覚めるかと思ってな」


「レンクス……。あなた自分の能力を忘れているの?」


「はっ!」


 心配そうに眺めるブランと、睨みつけるように文句を言ってくるクロノに挟まれて、レンクスはたじたじになっていた。

 ここでクロノに忘れていると指摘されたレンクスの能力を確認してみよう。


 ……怪力である。


 つまり、まだコントロールのおぼつかない状態では、アーツを目覚めさせるどころか逆効果になりかねないのだ。

 いくら傷はクロノが治せるとはいっても、それではクロノに負担を強いるというものだった。

 アーツが目覚めたとしても、今度はクロノが倒れる可能性だってある。

 というわけで、アーツを安全に目覚めさせる方法を改めて考えることにした。


 ぐぅ……。


 静かに唸り始めた時だった。

 突然妙な音が鳴り響く。


「ご、ごめん。私のお腹の音だわ」


 恥ずかしそうにクロノが名乗り出ていた。


「そうだわ。みんなが拾ってきた草をおいしくできる方法を見つけたっぽいから、それを試してみるわね」


「あ、ああ。そういえば飯の時間か」


「みたいね。あたしもなんかお腹が空いてきちゃった」


 夕食の時間になったので、レンクスたちは慌ただしく動き出す。


「ニックはどうするよ」


「今はそっとしておきましょう。一人だけ仲間はずれになっちゃって、ショックを受けているみたいだからね」


「そっか。それじゃ、俺はアーツを見てるから、ブランはクロノを手伝ってくれ」


「分かったわ」


『俺も手伝うぜ』


 ヴェールがブランに後についていった。

 アーツのことはレンクスとノワールで見守っている。


「まったく、いつになったら目を覚ますんだよ、アーツ」


 レンクスはぐっと唇をかんでいる。

 傷はすっかりよくなったものの、未だに目を覚まさないアーツ。

 この間にも少し友人たちの絆にひびが入りつつある。

 そんな状況下においても、全員が共通して思っていることがある。


『早く目を覚ませ、アーツ』


 なんだかんだ言っても、みんなの中心にはアーツがいるのであった。

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