第15話 目覚めゆく能力
ブランとクロノを背に乗せたノワールを先頭にして、アーツたちは食べ物を探しにやって来た。
今歩いているのは、確かに一度やって来た場所のようだ。
なぜ分かるかというと、ところどころの足元に、アーツたちがつけた目印が残っていたからだ。
さすが閃光剣といったところだと思われる。
「結構歩いたと思うが、まだ着かないのか?」
空を見上げると、日の光がだいぶ高くなってきていた。もうお昼がかなり近いという状況である。
ノワールは答えることなく、突然ぴたりと足を止めた。
『着いたぞ、ここだ』
「着いたそうよ」
ノワールの言葉をブランが通訳する。
「ここが?」
話を聞いたアーツたちが周りを見回しても、何かがあるようには見えない。
『主、ここの草をかき分けて下され』
「草を?」
ノワールの背中から降りたブランが、指し示された草を手で押しのけると、そこには見事な果実がなっていた。
しかし、困ったことに宇宙生まれ宇宙育ちのアーツたちには、それが何か分からなかった。だから、手あたり次第に摘んでくるしかなかったのである。
『この果実は食べると甘い。ただ、傷むのが早いので摘んでその日のうちに食すといい』
「ふむふむ、そうなのですね。あたしたちの食事はこのような形では出てくることがないので、これが何なのか分からないのよ」
『そうなのですか。でしたら、持って帰って調べるといいかと。摘んで一日なら腐らぬから、お腹を痛めることもない』
「分かったわ。それじゃ、分析するために少し摘んでいきましょうか。安全かどうか分からないし、ここで食べることはないわ」
『なるほど。あの不思議な物体で外から来たのなら、ここで手に入るものは合わない可能性があるか』
ノワールは納得していたようだった。
ブランの通訳もあって、アーツとクロノが二人で果実を摘み始める。
「なんかデータベースで見たラズベリーとかそのあたりと似てるな」
「そんな感じよね。でも、食べたことがないし、やっぱり調べてからよね」
「だな」
レンクスが箱の近くに立って見張る中、箱の中には思ったよりも果実が溜まっている。摘み過ぎたようだ。
『そのくらいにしておこう。摘み過ぎると次が育たなくなってしまう。他にもあるからな』
ブランがノワールの言葉を伝えると、ようやく摘む手が止まる。
果実を摘み終え、他の場所にも移動していく。
さすがは哨戒を務めるアリとだけあって、ノワールはあちこちにあるものをしっかりと把握しているようだった。
『草や木の実といったものばかりですまない。肉となるとトカゲどもぐらいしか思いつかなくてな。我らではあやつらには太刀打ちができぬゆえに、我慢してもらいたい』
案内を終えたノワールは申し訳なさそうに話をしている。
「いや、これだけでも十分さ。当面の食事は確保できそうだし、助かったぜ、ノワール」
アーツがお礼を言うと、ノワールは照れたように顔を逸らしていた。
ところが、ここで問題が発生する。
「褒めるのはいいんだが、これをどうやって持って帰るんだ? 結構重たそうなんだが」
レンクスから苦情が出ている。
よく見てみると、箱の中にはどっさりと草や木の実が入っている。実はここから箱は一度も移動させておらず、ノワールの案内で近場ですべてを集めていたのだ。
『どれ……』
ノワールが反応して、頭で箱を押そうとするが、これ面白いくらいまったく動かない。
『ふむ……。かなり集めたから重くなってしまったようだな』
実にノワールは冷静に分析していた。
「おいおい、せっかく集めたのに持って帰れないなんて……。集めた意味がねえじゃねえか」
アーツはわしゃわしゃと頭をかいている。
これにはブランとクロノもどうしたものかと戸惑っているようだが、ノワールだけが落ち着き払っていた。
『何を驚いている。そこのでかいやつ。そなたがやればよかろう』
「はあ? 俺がか?!」
ブランの通訳を聞かされたレンクスが、顔を歪めながら大声を出している。
『うむ、そなたからは強い魔素の力を感じる。おそらく、そなたの力は既に目覚めている。ただ、必要がなかったから使われていないだけのようだがな』
「俺の……力……?」
言われてみると、レンクスは自分の両腕に何か力が集まってきているような不思議な感覚を覚えた。
「まさか……な」
信じられないといった顔をしていたレンクスだったが、採取したものを詰めた箱の角に手をつけ、思い切って持ち上げようとしてみる。
「無茶よ、レンクス」
「そうだぞ、レンクス。持ち上がるわけがないだろうが」
みんなが騒いでいる中、レンクスは思い切って箱を持ち上げてみる。
するとどうしたことか。すっかり重くなったはずの箱が、軽々と持ち上がってしまった。
「嘘だろ……」
アーツは目を丸くしているが、ここでとあることを思い出した。
「まさか、ここにきてすぐの頃、俺を突き飛ばしたあの力って……」
そう、軽く叩かれただけで吹き飛んだことを思い出したのだ。
「つまり、レンクスの能力は、怪力ってことなのか?!」
目の前の光景と以前の記憶から導き出した答えに、アーツは思いきり叫んだのだった。




