057/波紋は白く濁る
「南15区で中華の富裕層旅行者の一団を襲撃・略奪が2つ。どちらもスレッジハンマーズです」
「ほむ。ハンマーズは脳筋だから問題ねえ」
「南西区でマイティーズとプラグスが小競り合い程度の争い、どちらも最近セディショナリーズ傘下になったチームですね。
こちら両チームリーダーを呼び出し査問を……」
「いらね、問題ね。うち傘下ってことは内輪揉めだろ」
「……畏まりました。では、なんの問題もございません。
ラストリゾートのメンバーがしばらく休暇をとると……」
「……きゅ、休暇? え? 会社か? こないだもどっか温泉旅行とか行ってなかった?」
「ラストリゾートの皆さんは体力がないので続けて開発など無理とのことで……。」
「ああ~……。アレか。また新兵器だかの開発してんだっけか。いやアイツらは……気力の問題だろ。
まあいいや、休みは大事だな。どっか旅行行くならお土産よろしくって言っといて」
「はい。ではそのように伝言致します。
ええ……それと……」
「いやまだあんの? もういいよ。
なんかこの定期報告最近欠かさずしてるけどさー、覚えらんないよ。
次飯食う頃にはもうすっかり忘れてるよ俺」
「このような瑣末な事、意に介さないお兄様の胆力、素晴らしいです。
ですが、セディショナリーズも他チームを吸収、傘下につけ規模も大きくなってきておりますのでやはり全体の把握は必要かと」
「……昼飯なに食べよっかなー」
「続いて……。少し前より何かと話題になっていた フルーティーというクルーですが……。
昨日ヘブンズに現れ数件の強奪と暴行、破壊行為を起こしたとのことです」
「ふるーてぃー? ああーフルーツ盛り食いたいな」
「……フルーティー。どこのエリアもホームにしない神出鬼没の街賊です」
「あっそ。興味ねえや。終わり?」
「南東エリアの……スナッファーと例の白い連中、
つまりユールフォルス・ロザリー教徒との交戦が確認されました」
「え? マジ? キリちゃんとことロザリー教……。
それまず最初に報告じゃね? てかそれしかいらねえよ。で? ロザリー教徒は?」
「現在行方不明。おそらくは隠れているかと。
ビル一棟破壊するような事案だったようで」
「それはキリちゃんが壊したんでしょ? 昔っから何かと爆破すんの好きだからな。
……探すぞ。そのロザリー教徒」
「承知致しました。では手配致します。
あっもう1件、シャーベッツと……こちらはアレックス様が衝突ということで……
アレックス様がシャーベッツメンバーのご友人の女性2名を執拗にお誘いしたことが原因という……」
「……いつも通りだな……問題ねぇ。てかそれさっきのデカい報告のあとにどうしても付け加えるもんか!?」
ココは、ホテル・ヘブン7階の小部屋。
コンクリート打ちっぱなしの壁と天井、床には波打ち際にいるような気分になる冴えたブルーの絨毯。
その上にふかふかのベロア素材のソファと鉄のテーブル。それだけの部屋。
そこでヒコがカノンからチームの近況報告を受けていた。
退屈極まりない感じでソファに脚を投げ出し半ば寝そべるヒコ。肉まんを頬張る。
だけどこれはセディショナリーズ周辺の近況。そのボスであるヒコへの報告は当然とばかりにカノンは表情を変えない。
街は俄にザワつき始めている。
キリ率いるスナッファーが暴れだした。
それはこの八華にとっては大事だ。
この街には悪党と呼べる街賊が数多いるとは言えその規模は大小様々。
小さい方を数えれば全貌を把握するのもなかなか難しいが、大きい方を数えればすぐ済む。
三極と呼ばれる、三大勢力のうちの1つ。
それがスナッファー。
そんなスナッファーに比べれば未だセディショナリーズはまだまだの存在。
キリが元々いたところがスナッファーであり同じ立ち上げメンバーであるヒコがいるからこそ
ひとまずセディショナリーズは一目置かれ最重要警戒対象になってるわけで。
キリからしたら、
「んなもん秒で潰してやるわ」と言ったところ。
だから、ザワつく。
「お兄様。ひとつ情報がありまして……。例のロザリー教徒が頻繁に目撃されている場所。
中央区の……大学周辺エリアとなっております」
「八華芸大? そうか。なるほど……。あのへんならまあ……隠れやすいか……よし……」
そう言って残りの肉まんを頬張るヒコ。
「リリスとアレックス。あと……シヒロも呼んでくれ。奴らを捕まえるぞ」
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一方その頃、もう1つの、いや数多の世界もザワついていた。
場所は変わって
多元界連盟議会。
もちろん会議は紛糾中。
「一体ユールフォルスは何を考えているんだ!」
「そうだ! こんな大事件を起こして! そのツェッペリン大司教はなぜここにいない!? 重罪だぞ!」
「彼は現在行方不明となっておりまして。ここには……」
「関係あるかー! 多元界の存在が明るみに」
「だいたいロザリー教はいつも好き放題に」
「おおー!? なんだ貴様! いつもは大人しいくせに!」
「ここは多数決で」
「なんのケツをとるんじゃあ!!」
「議長……これどう納めるんですか? 特務班使って対応してたんじゃないんですか?」
「いやまあ……してたんじゃが……」
「どうして動いてないんですか?」
「いや……あそこの長官がいまは動くなと……」
「それは議長がそう命令したからでは?」
「ま、まあ……いや……動くのはまずいんじゃないのかと助言を……他にもかなりのオオゴト案件があったりしてだな……」
「それは……そもそも動きたくない部署にそう言ったら動かないでしょ……」
また議長と側近のヒソヒソ話。
片や議場は罵詈雑言の嵐。
まとめ役の議長がすぐ眼を離すからもはや定例化している。
中にはこれを楽しみに来てる者もいるぐらい。
ストレス発散だ。
大声大会とも言う。
「騒がしいな。品のない連中だ。意見があるなら挙手で述べよ!」
よく通る美しい声が響いた。
雷鳴のような、しかし鳥の囀りのような。
真逆の印象ではあるが一気に議場は静まりかえる。
「あ、あれは……」
「まさかこのタイミングで……」
「ヴぃ……ヴィヴィアン王女……」
ロザリア王家、王の長女。第一子。
つまりは後継者第一位。
ヴィヴィアン・クローネンが登場だ。




