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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
四章

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7 不幸中の幸いってやつなのかな

「こんにちは」

「こんにちはー」


 挨拶をしながら僕らの家に上がる藤堂さんと下村さん。

 藤堂さんはいつも通りの雰囲気。下村さんは少し元気が無さそうだ。

 そんな二人を僕と優太は出迎えた。

 

「二人ともこんにちは」

「こんにちは」


 リベレイターズと話をした翌週末。

 修学旅行から帰ってきた藤堂さんと下村さんが家にやってきた。


「これ、お土産ね」

「あ、ありがとう」


 藤堂さんと下村さんがそれぞれお菓子のお土産をくれた。

 可愛らしい絵柄がプリントされた缶のクッキーと……こっちは飴だ。

 一日目の京都や、二日目に行った遊園地で買ったらしい。


 せっかくなので、お土産のお菓子を開封してテーブルに置き、お茶を入れる。

 皆でテーブル周りに座ったところで、話し合いを開始した。


 話の重さから、先に修学旅行での話を聞くことになった。

 基本的には藤堂さんが説明してくれた。


 遊園地でロボットを見つけたこと。

 二人でこっそり変身して対処しようとしたこと。

 でもロボットは、勘違いで人形だったこと。


「――というわけなの」


 藤堂さんが話し終える。

 色々と気になることはあるんだけど、まずは……。


「大人しくしようって言ってたのに、変身したんだね」

「ごめんなさい」


 藤堂さんが頭を下げた。


「でも、友達が襲われるかもって考えたら、止まることはできなかった」


 謝りながらも、自分の意見をはっきりと言ってきた。

 それはつまり……次に同じようなことがあったら、また変身をするってことだ。


 ため息を吐いた。

 まぁ、そうだろうね。

 たぶん藤堂さんの性格上、止めるのは無理だ。


「……分かったよ。でもせめて、誰にも見られないようにはしてね」

「うん。そこは、本当に気をつけるわ」


 お願いすると、しっかりと頷いたので信じることにする。

 藤堂さんはきちんと考えられる子だ。

 どうしても変身しなきゃいけない時には、ちゃんと気をつけてくれるはずだ。


「とりあえず何ともなくて良かったよ」


 ひとまずは何とも無かったことを喜ぶ。

 まぁ何かあってからでは遅いんだけどね……。


 今回はロボットじゃなくて、ただの人形だったから本当に良かった。


 人形が建物の上に置かれていたことについては何で? って思ったけど、ネットで調べたら記事が出てきた。

 テーマパークに似つかわしくない人形が置かれてて、炎上してるという内容だった。

 テーマパーク側としては話題性を考えて攻めた結果、失敗したみたいだ。


 そのせいで藤堂さん達も勘違いしてしまったわけだね。


「それで、その時に朝陽さんが変身できなかったの?」


 尋ねると、それまで俯いてた下村さんが顔を上げた。


「うん……いつもの通りに変身しようとしたんだけど……できなくて……」


 むぅ、だいぶ深刻な感じだ。


「優太、原因って分かる?」


 藤堂さんが尋ねた。

 元々彼女達が変身できるのって、優太と契約してるからだ。


 優太には相手が変身……というより、魔法を使えるかどうかが分かるみたいだ。

 以前に僕は、契約しても魔法が使えないと言われたし、確か神前さんにも使えないって言ってた気がする。

 確か……魔法はその人の想いや願いを具現化したものだって言ってたっけ?


 ……ん、てことはもしかして今の下村さんって。


「……そうだね。一つ言えるのは、朝陽の想いの力が弱まってるってことだね」

「想いが……?」


 優太がはっきりと答えた。

 やっぱり……僕が魔法を使えないって言われたのと同じ理由だ。


 優太が続けて説明してくれた。

 魔法を使うのには強い想いや願いが必要になる。

 藤堂さんなんかは、その想いがことさら強くなった時に、もう一段階変身するそうだ。


 下村さんも普通の人より強い想い、もしくは願いを持ってた。

 だけど、今はそれが弱まってる。それで変身ができなくなったということらしい。


「そんな……」

 

 下村さんがショックを受けた顔をした。


「優太。朝陽さんが元々、どういう想いとかで変身できてたかは分かる?」

「それは……ごめん、そこまでは分からない」


 首を横に振る優太。

 どうやら分かるのは、魔法が使えるぐらいの想いや願いを抱えているかどうかだけらしい。


 優太が下村さんに向かって問いかけた。


「むしろ、朝陽自身は分からない? 自分がどういう想いで変身していたのか」

「え? 私は……いつも誰かを助けたい、守りたいって思ってるよ」


 考える仕草を見せた後、下村さんが答えた。

 でも、その内容だと今回も変身できてないとおかしい。下村さんも友達を守りたいって想いで隠れて変身しようとしたんだから。

 

 てことは、下村さんが変身するのに必要な想いや願いは、守りたいって気持ち以外にあるはずだ。

 それがどんな想いや願いなのかが分かれば、何かしら対策を考えれるかもって思ったんだけど……。

 下村さんには思い当たるものが無いみたいだった。


 僕らから見ても、下村さんがどういう想いや願いを抱えてたのかは分からない。

 藤堂さんだったらたぶん正義に対する想い、みたいな感じじゃないかなと思うんだけど。

 本人としても、どういった想いや願いが強かったのかが分からない以上、そこから対策を考えるのは無理だ。


 でも、そうなると現状打つ手は無いということになる。


 まぁ幸い今は大人しくしてなきゃいけないし、変身できないからといって今すぐに困ることはないはずだ。


「これまで色々あったから、きっと疲れてるんだよ」


 少し休んだら、また変身できるようになるかも。

 そう言って下村さんを励ました。


「じっくり休んで、また変身できるようになるのをゆっくり待とう」


 僕の言葉に、下村さんが小さく頷いた。

 そうして、下村さんが変身できない件はいったん保留となった。

 その後、話はリベレイターズのことになった。


 僕は二人に、文月さんと古谷さんという人達が来たこと。

 彼女達は僕達が予想してた通り、適応研の被害者であること。

 同じ被害者仲間を探して、僕らを勧誘に来たことを告げた。


「それなら、私とあさひには関係ない話ね」


 藤堂さんの言葉に頷いた。

 藤堂さんと下村さんは優太との契約で魔法が使えるだけで――下村さんは今は使えないけど――あくまで一般人だ。


 リベレイターズが勧誘する対象とは違う。


「葉月ちゃん達は……彼らの仲間になるの?」


 下村さんが尋ねてきた。少し不安そうな表情をしている。

 僕は彼女を安心させるように、落ち着いた表情で首を横に振った。


「ううん。今のところ、そのつもりは無いよ」


 彼女らと会った後、僕は優太とどうするか話し合った。

 その結果、仲間にはならないという結論になったんだ。


「どうして? あなた達もたぶん被害者なんでしょう?」


 藤堂さんが尋ねてくる。


 そうだね。確かに僕らは人体実験の被害者で、あの人達もそうだ。

 境遇は同じで、だからこそ彼女達には親近感は湧く。


 でもたぶん、あの人達の根底にあるのは組織への復讐だ。

 そのために同じ境遇の仲間を集めて、今もおそらく組織に大して何かをやろうとしている。


 対して僕らは――。


「組織に復讐したいって気持ちは、特に無いんだよね」


 たぶん、僕らは歳を取りすぎたんだと思う。何せ二百年だからね。

 組織には嫌な目に合わされたけど、今となってはそういうこともあったなぁ、ぐらいにしか思ってない。

 その時代の人達は皆もうとっくに死んでしまっているしね。

 今更組織に対して復讐したいなんて感情は持ってないんだよね。


 むしろ今は、関わりたくないって気持ちの方が強い。


 優太は僕よりも好戦的ではあるけど、それは降りかかる火の粉は振り払うってだけだ。

 関わらなくて済むなら、その方が良いって考えは僕と一緒だ。


 そりゃ、当時の家族が組織に捕まってる、とかであれば話は変わってくるけどね。

 もしそんなことがあれば、僕も優太も全力で組織から助け出そうとするだろう。


「リベレイターズの人達には親近感は湧くけど……家族とは違うのかなって」


 そう説明すると、藤堂さんも下村さんも分かったような分からないような、という表情をした。

 まぁ微妙な気持ちの問題だからね。

 僕らもうまく説明するのは難しいし、理解しにくいのも当然だよね。


「でも、あの人達ならあなたの体質も気にしないでしょ?」


 藤堂さんが尋ねてきた。

 それは……僕の不老不死のことだね。


 確かに、あの人達は僕が不老不死だと知っても受け入れてくれるかもしれない。

 しれないけど……。


「僕のことを知ってるのは藤堂さんと朝陽さんだけで良いよ」


 僕は首を横に振った。

 あの人達は僕達の兄弟と違う。そして、あの人達の仲間が何人いるか分からない。

 全員が全員。本当に僕の体質を認めてくれるかも分からない。気味悪がられる可能性も、無いとは言えない。

 そんな心配をするぐらいなら、今の小さいコミニュティで安全に生きていけば良いと思う。


「葉月ちゃん……」


 下村さんが少し嬉しそうな顔をした。

 藤堂さんも何か満更じゃなさそうな顔をしてる。

 あれ? 僕、そんなに二人が喜ぶこと言ったかな。

 ……まぁ、いいか。


 その後も色々と話しあった結果、リベレイターズとはもう少し話し合いが必要だと言う結論になった。

 下村さん達が一般人だと伝えた時に、彼女達がどういう約束を持ち出してくるのか。それを見極めるまでは、迂闊に僕達のことを話せないというのが理由だ。

 でもあの人達と敵対したいわけでも無いし、協力できることがあればしても良いとは思ってる。


 良き隣人としてのお付き合いができたらって感じだね。

 ……向こうの約束次第になるけど。

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