↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/91

幕間3 お披露目! マジック……マジック?

 休日の昼下がり、僕はマジックカフェでいつものようにパフォーマンスをやらせてもらっていた。

 今日は、最近ハマってるカードを使ったマジックをメインに据えた。

 これだとお客さんも巻き込んでやれるから、いつもとは違う楽しさがあるんだよね。


 お客さんに選んでもらったカードを当てたり。お客さんにサインを書いてもらったカードを破ったと見せかけて、復活させたり。

 お客さんと一緒にマジックを完成させていく醍醐味を味わえる。

 ウケもなかなか上々だった。


 パフォーマンスが終わった後は、いつも通りに挨拶回りをした。


「――葉月ちゃん、凄かったよ!」

「ありがとう、下村さん」


 休日ということもあって、下村さんと藤堂さん、優太もお客さんとして来てくれてた。


 三人にもお礼を返しながら、いつものようにカウンターへと向かう。


「お疲れ、葉月ちゃん」

「ありがとうございました」


 マスターに言葉を返しながら、席に座る。

 ん? マスターの表情が何かぎこちない。


「どうかしたんですか?」

「あぁ、いや。何でも……なくは無いね」


 良く分からないので、話してくれるのを待っていると、僕にお客さんが居ると言われた。


「お客さん、ですか?」

「うん、実は――」

「――こんにちは、葉月くん」


 マスターの言葉を遮るように横から話しかけられたので、そちらへ顔を向ける。


 大善寺さん……と、あれ? ミスターホリックさんだ。


 この前、温泉街でのマジックイベントで共演した人だね。

 大善寺さんは見知った仲だし、マスターがわざわざお客さんって言ってくるってことは、僕に用があるのはミスターホリックさんの方なのかな?


 僕の予想した通り、ミスターホリックさんが一歩前に出てきた。


「先程のマジック、見せてもらったよ。素晴らしい技術だ」

「はぁ、ありがとうございます」

「それに以前、大善寺くんと組んで行ったマジック。あれも君の助言と協力があったそうじゃないか」

「えぇ、まぁ」


 話の趣旨が掴めず漠然と言葉を返してると、ミスターホリックさんが真剣な顔になった。


「今日来たのは他でもない。弟子入りさせてほしい」

「弟子入り??」


 僕の?

 一瞬そう疑ったものの、よくよくミスターホリックさんの話を聞くと、僕がこの歳で素晴らしい技術を身に着けたのは僕自身の努力もさることながら、師匠が凄いと考えたらしい。


「まさか大善寺くんではあるまい」


 大善寺さんに失礼なことを言いながら、否定するミスターホリックさん。

 大善寺さんも少しムッとしてる。


「それほどの技術の持ち主、ぜひ弟子入りして教えを請いたいのだ」


 なるほど、つまり僕に師匠がいると考えて、その師匠に弟子入りしたいと思ったのか。

 何だ僕じゃないんだ。

 いや、僕にって言われてもびっくりするけど。


「そんなこと、急に言われても困るだろう? 断ってもいいぞ」


 大善寺さんが言う。


 師匠……ねぇ。

 実際のところ、僕には師匠なんていない。

 いや、前世では居たけどね。生まれ変わってからは完全に独りなんだよね。


 さすがに前世の師匠を連れてくることはできない。

 僕はミスターホリックさんに頭を下げた。


「ごめんなさい。それはできないです」

「何故かね?」


 理由を問われたけど、本当のことは言えない。

 居ないとも言い難い。

 何せ前世も含めて二百年以上マジックをやってきたわけだからね。

 僕の持ってる技術は、見た目の年齢からすると常識外だろう。それぐらいの自負はある。


 それなのに師匠が居ないとなると、天才を通り越して気味悪がられるかもしれない。


 師匠はいるけど、会わせられないってした方が良いかな?


「正直、僕も師匠が普段はどこにいるか分からないんです」

「次に会った時に紹介してもらえたら、それでかまわない」

「……師匠、あまり知らない人と会うの好きじゃないから」

「初めはメールでのやり取りからでも構わない」

「…………師匠、僕以外に弟子は取らないって言ってたので」

「君という前例がある以上、可能性はゼロじゃないのだろう?」


 駄目だ、引く気が一切ない。


「はぁ……じゃあ次、師匠に会えたら聞くだけ聞いてみますね」

「ありがとう!」


 譲歩すると肩をガシッと掴まれた。

 痛い……。


 とりあえずは引いてもらうことには成功した。

 後は適当なタイミングで、やっぱり駄目だったと伝えれば大丈夫かな?


 そう思ってたのだけど――。


「――どうだね? 聞いてくれたか?」

「まだ聞いてません」


「――そろそろどうだ?」

「あー。聞いたんですけど、やっぱり弟子は取らないって」

「一度で認めてもらえるとも思ってない! ぜひもう一度お願いする」


「――どうだね?」


 ミスターホリックさんはめちゃくちゃしつこかった。

 大善寺さんからも失礼だと注意してくれてるんだけど、聞き入れる感じが全くない。


 休日にマジックカフェでパフォーマンスをするたびに現れて、首尾を聞いてくる。

 挙句の果てには家にまで、ついてこようとした。

 さすがにそれは固辞したけども、困ったな……。


 一向に諦めてくれないミスターホリックさんを何とかしないとと悩んで、数週間。


 ミスターホリックさんに諦めてもらうために、僕は一計を案じた――。




「――いやー、ありがとう」

「今回だけですからね」

「もちろん、今回をしっかり次に繋げてみせるよ」


 ミスターホリックさんの言葉を適当に流す。

 場所はマジックカフェ。

 大善寺さん交えて、三人でテーブルを囲んでいた。


 ここで、僕はミスターホリックさんに師匠と会わせる約束をした。


 もちろん、本物の師匠なんて居る訳ないので、偽物だ。

 こういう時にうってつけの人物にお願いしたんだ。


「――葉月、こんにちは」

「あ、師匠!」


 僕達が座るテーブルに近づいてきて、挨拶をしてきた人物に返事を返す。

 やってきたのは――優太だ。


 優太に認識阻害の魔法で実在しない人物に化けてもらい、師匠の振りをしてもらったのだ。


 これなら、顔を覚えられようと困らないしね。


 優太には申し訳なかったけど、お願いしたら快く引き受けてくれた。

 ありがとうね。


「初めまして、お会いしたかったです」

「私に用があるとか?」


 席に座った優太に、早速ミスターホリックさんが擦り寄った。


「はい、単刀直入に言いますと……あなたのマジックの腕を見込んで、ぜひともあなたの弟子にしていただけないかと……」

「弟子は取らない」


 ぴしゃりと跳ね除ける優太。

 明らかに歓迎していない雰囲気を醸してる。

 普通なら、とても無理だと思うんだろうけど……。


「何故ですか?」


 やっぱり引き下がらないよね。

 優太、うまく断ってね……っ。


「弟子なら既に葉月がいる」

「もう一人取るのも問題無いのでは?」

「葉月以上の原石はいないのに、それより劣る者を弟子に取ってどうするというのだ」


 口に含んだジュースを吹き出しそうになった。

 優太……断り文句にしても、それは言い過ぎだよ。


「確かに彼女は素晴らしいものを持ってるが……私がそれに劣るかは、私のマジックも見てから判断してください!」

「見たことならある」


 これは以前のホテルでのマジックショーの時だね。

 優太がホリックさんに問いかけた。


「君は今何歳だ?」

「二十六歳です」


 優太が首を横に振った。


「君はもう歳を取り過ぎてる。二十六であの腕前なら……葉月には敵わない」


 いや、二十六なら十分若いと思うけどね。

 二百歳越えの優太が言うとシュールだ。


 あと、僕のことを上げすぎ。

 今後、やりにくくならないかな……。


 ホリックさんはと言えば俯いてた。

 さすがに、自分の技術を見た上で宣言されてしまったら、これ以上は強く言えないのだろう。


 何故か僕もダメージを負ったけど、とりあえずは何とかなりそうかな?


「……分かりました。では、せめてあなたのマジックを見せてください。弟子になるのが無理なら……せめて見て盗ませてください!」


 うぇ、そうきたかぁ。

 優太にはマジックはできないし、ここは断って……。


「良いだろう」


 え?

 優太、頷いたんだけど。

 マジックやるの?


 その後、早速マジックを見せることになり、場所を移すことになった。

 移った先は公民館の貸し出し用会議室。レクリエーションなんかもできるように地元住民が借りれる部屋を急遽借りて、そこに移動した。


 優太のマジック……何をするつもりかは予想がついてるけど、自分がやるよりドキドキする。


「葉月、布を貸してくれないか」

「はい、どうぞ」


 優太に言われて、布を渡す。


「じゃあ、いくよ」


 言うや、優太が空に浮かんだ。


 ――うん、やっぱりそうだよね。


 空中に浮いたまま布を掲げて、自分の姿を隠す。

 次に布を取り払うと、ミスターホリックさんと大善寺さんが唸った。

 たぶん、服装か見た目を変えたんだろうね。僕には、いつもの優太の姿しか見えてないから分からないけど。


 更に布で体を隠し、取り払う。それを三度繰り返した。僕にはただ布で身体を隠して、それを取り払ってるだけのシュールな光景しか見えないんだけど、二人は凄い驚いてるみたいだ。


 優太が再び布で体を隠すと、今度はその場で布を手放した。

 重力に従って、落下する布。

 しかし、どこにも優太の姿は見えない。


「……とまぁ、こんな感じかな?」


 背後から聞こえた声に、皆で振り向く。

 いつの間にか僕らの後ろに移動していた優太の姿が、そこにあった。


「凄すぎる……」

「有り得ない……」


 驚愕してる二人。まぁ、そりゃそうだろうね。

 何せタネも仕掛けもない、本当の魔法なんだから。


 宙に浮いて、認識阻害で姿を変える。

 最後は影移動かな?


 こうしてみると、優太の魔法はマジックに応用できて羨ましいね。


「盗むことができたなら、弟子になることを認めても良い」

「が、頑張ります!」


 優太の言葉に、ミスターホリックさんが勢い良く頷いた。

 いや。どれだけ頑張ろうと盗むことはできないんだけどね。だって、マジックじゃなくて魔法だし。


 まぁ、やる気はあるみたいだし、頑張ってね。


 少し同情しつつ、僕はミスターホリックさんを陰ながら応援した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。