表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/83

17 してやられたとしか言えないね

 ロボットの襲撃を退けた翌日。

 僕は朝から浦辺さんの家で、テラスに置かれた木製の椅子に座って、優太が来るのを待っていた。


 隣には同じく、下村さんが座っている。

 浦辺さんは家の中で何かしている。体を動かしてないと落ち着かない時ってあるから、そういうのかもしれない。


 かくいう僕もじっと待ってるだけだと気分が落ち込んでくるから、下村さんと適当に話をしながら時間を過ごしていた。


「――それでね、まーかが……あっ!?」


 学校での友達とのやり取りを話していた下村さんが、突然声をあげて立ち上がった。

 その視線を追って、僕も横へと顔を向けた。


 ――優太だ!


 さきちゃんを連れて、優太が林から顔を出したのが見えた。


 良かった、無事みたいだ……え?


 僕も立ち上がって優太を出迎えようとしたところで、優太達の後ろから三人の大人の人がついてくるのが見えた。

 二人は昨日、駅で撒いた人。一人は車に走ってついてきてた人。

 ――全員、さきちゃんを追いかけていた人達だ。


「あの人達……大丈夫なの?」


 下村さんも気づいたみたいだ。警戒してる。


「……分かんない。でも争ってる感じはないよね」


 三人とも優太に、敵対してる感じは見られない。

 優太も、三人から逃げてきたようには見えない。

 どういうことだろう。

 和解した?

 組織の人じゃない?


「……ひとまず、浦辺さんを呼んでくるよ」


 直ぐにでも優太に尋ねたかったけど、待ってたのは僕らだけじゃない。

 浦辺さんにさきちゃんが帰ってきたことを伝えるべく、僕は家の中へと入った。


 浦辺さんはリビングのソファに座って、ノートパソコンを開いてた。

 その姿に少し違和感を覚えたものの、考えてる場合じゃなかったので、気にせず浦辺さんへと声をかけた。


「浦辺さん、さきちゃんが帰ってきました!」

「っ! 本当かい!?」


 勢いよく顔を上げる浦辺さん。

 パソコンを置いて立ち上がると、玄関へと走り出した。

 置いて行かれた僕も、後ろからついていく。


「さき!」


 玄関から飛び出た浦辺さんが声を上げる。

 優太達は既に軒先までやって来てた、さきちゃんも浦辺さんに気づいたみたいだ。


「あぁ、良かった」


 浦辺さんがさきちゃんへと駆け寄り、その肩を抱いた。

 その様子にまた違和感を覚えながらも、僕は優太へと近づいた。


「ゆう……お父さん、お疲れ。さきちゃんのこと、ありがとうね」

「ううん、大丈夫だよ。おね……葉月も、無事だったんだね」

「うん、心配かけてごめんね」


 危ない、思わずいつも通りに声をかけるとこだった。

 優太も一瞬、僕に飛びつこうとしてたね。今は我慢してね。


 今は先に……そっちに立ってる、三人組のことについて聞きたい。


「あなた方は……一体……」


 僕が優太に尋ねるより先に、浦辺さんが三人組へと声をかけた。

 三人はお互いに顔を見合わせると、足の速かった、いかつい顔の男が一歩前に出た。


「私達も、お子さんの保護に協力をしてまして」

「そうだったんですか……ありがとうございます!」


 浦辺さんがお礼を言うと、いかつい顔の男が更に話しかけた。


「……すみませんが、おたくのお子さんは悪い組織から狙われてる可能性があります」

「悪い組織……どういうことですか?」


 それって……ロボットのことかな。

 優太達も襲撃されたの?

 優太を見ると頷いた。そうか……昨日のうちにこの家に辿り着けなかったのは、それが理由だったんだね。

 それにしても、さきちゃんも狙われてるなんて……やっぱり組織の狙いは浦辺さんで、さきちゃんを人質に取ろうとしてたのかな。

 それに、さきちゃんが狙われてることを浦辺さんに伝えたってことは……この人達は組織の人じゃない?


 分からないことだらけで混乱している間にも話は進んでいく。


「あなた達は一体……」

「私達は、その悪い組織と戦ってる者です」


 浦辺さんの問いかけに、いかつい顔の男が答えた。

 戦ってる者……それって、もしかしてヴィクターさんが言ってた――。


「そうですか……」


 何か考える仕草を見せる浦辺さん。

 続けてさきちゃんへと顔を向ける。

 ……あれ? そう言えば、さきちゃんの反応が薄い。

 さっきの違和感って、これ……。


「……つまり、組織の敵という訳ですね」

「その通りです」

「分かりました……さき、()()()()()


 ――瞬間、いかつい顔の男が吹っ飛んだ。


 さきちゃんが腕を突き出してる。

 さきちゃんが殴った?

 何で?


「兄貴!?」


 三人の内の、垂れ目の男が驚きの声をあげる。

 その男に、さきちゃんが近づいて――男が弾かれたように吹っ飛ぶ。


「あなたっ、何で!?」


 驚いてる気の強そうな女も、続けて吹っ飛ばされる。


「ふむ……さすがは新型。素晴らしいね」


 目の前で起きた状況についていけずに固まってると、浦辺さんが呟いた。

 ……新型?


 分からないままに浦辺さんを見ると、目が合った。


「ん? あぁ、気になるかい? 何、邪魔者を排除しただけだよ」

「邪魔者? どういう……」

「簡単な話さ。今の話を聞いただろう? 彼らは組織の敵。……つまりは私の敵なんだよ」


 眼鏡を直しながら、男が言う。


 ――頭が真っ白になった。

 この人が……組織の人?


「あぁ、そうは言っても君達には分からないだろうね。まぁ、組織というのは……人類を導くことを目的とした崇高なる人の集まりだよ」

「崇高なる……人?」


 下村さんが浦辺さんの言葉を繰り返す。

 信じられないという雰囲気を感じる。僕も同じ気分だ。

 三人の方じゃなくて、まさか浦辺さんが組織の人だったなんて……。


「そうさ。だから我々と敵対する、彼らは邪魔なのさ」


 得意気に語る浦辺さん。

 正体を現したからなのか、その表情にはどこか悪意がこもっているように見えた。


「さて。邪魔者を排除したところで……君達とは話し合いをしたいんだがね」

「……話し合い?」


 組織の人が……僕達と?


「私は君たちの……特に下村君の持つ力に興味があってね」

「……私の?」


 下村さんの力……間違いなく、魔法少女としての力についてだ。

 昨日の晩にロボットと戦った時のことか……。


「君の力は以前に見てるんだよ。……そう、クリスマスの時にね」


 背中に衝撃が走る。

 クリスマスってことは……雪だるま型ロボットの時ってこと?

 そんなに前から、僕らに目をつけてたの……っ!?


 驚く僕達に、浦辺さんはこんこんと語っていった。


 どうやら浦辺さんは統制局の人間らしい。それでAIの実験のために、雪だるま型のロボットを暴走させたそうだ。

 ある程度のデータが取れた段階で、証拠隠滅のためにロボットを破壊しようとし考えていたところに、下村さんが現れた。

 適応研の遺産なのか、全く別の力の持ち主か。

 それを知るために、下村さんに近づこうとしたらしい。


「怪しまれずに接触するために、この子が役に立ったよ」


 そう言って浦辺さんが、さきちゃんの頭を撫でた。

 さきちゃんは感情が溶け落ちたかのように無表情になっていて、意思が感じられない。


 浦辺さんはさきちゃんに迷子のフリをさせて、僕らをここまで――浦辺さんのアジトまで引き寄せようとしたのだと語った。


「途中、邪魔が入ったのは予想外だったが……それも上手く利用して、君らをここまで連れてくることができた。上出来だよ」


 邪魔……さっきの三人組のことだ。

 駅で下村さんと合流したっていうのも、たまたまじゃなかったってことか。

 

「全部……噓だったんですか……!」


 下村さんが絞り出すように、呻いた。

 

「私達を……騙したんですね!?」

「人聞きが悪いな。行動したのは君達だ。……まぁ、多少は善意につけ込んだがね」


 悲痛な叫び声。でも、浦辺さんは鼻を鳴らすだけだった。

 この人は……たぶん、人を騙すことに抵抗感が無いのだろう。

 悪びれるどころか、僕達の自己責任だと言わんばかりの態度がそれを物語っている。


「……さて、ここには誰も助けは来ない。ゆっくり、君達の力について話を聞かせてもらおう。……と、その前に。さき、この子達の足の骨を折りなさい。逃げようという気も起こさないようにね」


 続く浦辺さんの言葉にぎょっとした。思わずさきちゃんを見る。

 さきちゃんは浦辺さんに向かって頷くと、一番近くにいた優太へと足を向けた。


「――ダメ!」


 下村さんが前に出て、叫んだ。


「さきちゃん、そんなことしちゃダメだよ!」

「……お姉ちゃん?」


 下村さんの言葉に、さきちゃんが立ち止まった。

 その顔には迷いが現れていた。


 それを見て僕も、さきちゃんの元へと駆け寄って説得にかかった。


「さきちゃん、浦辺さんの言ってることは悪いことなんだよ。だから、聞いちゃ駄目だ」


 さきちゃんが浦辺さんの言うことを聞く理由も、大人を吹き飛ばせるような強い力を持ってる理由も分からない。

 でも、下村さんの言葉で戸惑ってるなら、止めることはできるはずだ。


 そんな僕らの様子を見てか、浦辺さんが言葉を吐く。


「さき、ダメじゃないか。私の言うことが聞けないのかい?」

「でも……お姉ちゃんが……ダメなものだって」


 狼狽えるさきちゃんに、浦辺さんがため息を吐く。


「なるほど……悪影響も受けるのか。成長には欠かせないとはいえ、難しいものだな……」


 そう言うや、懐に手を入れて何かを取り出した。

 ……ペンダント?


「――モード、アドミニストレータ」


 続けて呟かれた言葉に、さきちゃんが動きを止めた。

 表情も、身体も、まるで人形になってしまったかのように全く動かない。


 待って。それで止まるってことは、さきちゃんは……。


 浦辺さんの持つペンダントが淡い光を放つ。


「デウスの御心のままに」


 浦辺さんが言葉を発した瞬間――さきちゃんの体に変化が起こった。

 さきちゃんに着せてた僕のコートを突き破って、背中に翼のようなものが生えたのだ。


 もはや疑いようもない。

 さきちゃんは……組織が作ったロボットだ。


『管理者モードに移行します。マスター、指示を』


 感情の乗ってない平坦な口調で、さきちゃんが言葉を紡ぐ。

 満足そうな表情を浮かべた浦辺さんが、頷いた。


「命令だ。……この子達の足を折りなさい」

『承知しました』


 さきちゃんが下村さんへと身体を向けた。

 ――いけない!!

 

 咄嗟に、さきちゃんと下村さんの間に割って入る。


「――っ!?」

「葉月ちゃん!」

「お姉ちゃん!?」


 さきちゃんに、足を容赦なく蹴られて倒れ込む。

 鈍い、嫌な音がした。

 倒れたままに見ると、足が変な方向に曲がってた。


 本当に折りにきてる。


「優太! 朝陽さんを!」


 再び下村さんへと体を向けるさきちゃん。

 そこへ優太が影を伸ばして、さきちゃんの手足に絡みつかせた。


「ほぉ、これは何だ? 兎だと?」


 浦辺さんが目を丸くさせる。

 認識阻害の魔法が解けた?

 いや、組織の人に見られるのはもう仕方ない。捕まれば、どっちみち優太の正体はバレてしまうんだ。

 それよりも今は、この状況を何とかしないといけない……っ


『障害……排除します』


 いまだに戸惑いを隠せない僕達を前に、さきちゃんが冷たい声で宣言した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ