表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/80

14 心配ごとばっかり増えていくね

 浦辺さんの家で優太とさきちゃんが来るのを待ってた僕達。


 日が沈み、辺りが暗くなったとき、何故かロボットが現れた。

 招かれざる客に対応するため、僕らは家から飛び出してロボットの近くまで走る。


 暗がりの中、ハッキリと視認できる距離でロボットを見る。

 センサーが光る細長い胴体に、足がいっぱい生えてる。

 ゲジゲジを彷彿とさせるロボットだ。見た目の不快感がかなり大きい。


「気持ち悪っ」


 隣に並ぶ下村さんが似たような感想を吐く。

 下村さんは今、魔法少女の姿になってて目が良くなってるから、余計にそう感じるのかも。


 顔を少し歪めてる下村さんへと話しかける。


「……下村さん、できるだけ浦辺さんの家から離れよう」

「うん、そうだね!」


 ここで暴れたら浦辺さんの家に被害が出るかもしれないし、何より戦ってるところを浦辺さんに見られたくない。

 離れるためにも、まずはロボットの注意を引かないといけないね。


 僕は迷わず、ロボットとの距離を詰めた。

 同時に懐から袋と小瓶を取りだす。


 僕に反応したロボットが飛びかかってこようと構える。


 飛びかかってくるよりも若干早く、僕は小瓶に袋の中身を突っ込むと、小瓶を振って空中にばらまいた。

 小瓶の中に仕込んでいた液体が空中に撒かれる。

 その数瞬後にロボットが飛びかかってくるけども――残念、僕はもうそこには居ないよ。

 僕が撒いた液体はただの水。直前に突っ込んだ袋の中身は重曹とクエン酸の粉末だ。水と混ぜることで人の体温ぐらいにまで温度が上がる。

 これまでの経験から、ロボットの多くは赤外線センサーを積んでることが分かってたので、それの対策で用意したものだ。

 この程度では完全にセンサーを誤魔化すことはできないけど、少しの隙が作れれば良い。

 ロボットのセンサーを惑わせた僕は、ロボットの横をすり抜けて、背後に回った。


「――こっちだよ」


 動きに迷いが出たロボットへと話しかける。

 ロボットは直ぐに反応して、僕の方へと振り向いた。


 再び飛びかかってきそうなロボットに、今度は下村さんが近づく。ローラーで空中に描いた、カラフルな道を伝ってロボットの上方へと跳躍すると、ローラーを振ってロボットの胴体へと魔法の雫を飛ばす。

 完全な不意打ちを喰らったロボットが体勢を崩す。その傍に着地した下村さんがロボットを挑発した。


「葉月ちゃんばっか見てたらダメだよ」


 体勢を立て直したロボットが、より近い下村さんに反応して飛びかかろる。

 けどそれより早く、下村さんが後方に跳んで躱した。


 そうやって僕達二人でロボットを翻弄しながら、少しずつ浦辺さんの家から引き離す。


「――こんな所で良いかな?」

「そうだね、ここなら見られないと思う」


 家から少し離れた林の中で、僕達は頷き合うと改めてロボットと相対した。


 何本もの足を小刻みに動かしながら、近づいてくるロボットはやっぱり不快だ。

 浦辺さんにも気づかれたくないし、さっさと倒しちゃおう。


 といっても、ロボットは下村さんに破壊してもらうんだけどね。


 僕は再び、何気ない感じにロボットへと近づいて注意を引いた。


 その隙を突いて、下村さんに攻撃してもらう。

 さっきまでの気を引くための一撃とは違って、本気の攻撃だ。

 普段から、下村さんは一人でもロボットと戦うことができる。今回は僕が囮になってることもあって、あまり苦労することもなく、ロボットは間もなく破壊された。


「――お疲れ、朝陽さん」

「ん、お疲れ様!」


 壊れたロボットの前で二人で労いあう。


 下村さんが壊れたロボットへと目を向けた。


「……これ、どうしよう」


 この状況では、残骸はさすかに片付けられない。

 僕達は後で回収できるように、まとめて目立たないように木が密集している所に置いた。


 その後、変身を解いた下村さんと一緒に家に戻ったのだけど……。


「君たち……今のは何だい?」


 玄関の前に、浦辺さんが立って待っていた。

 

 まずいな……見られちゃったかもしれない。

 いや、僕達が飛び出した時には間違いなく浦辺さんは居なかった。ならこの暗闇の中、僕達が何してたかは分からないはず。


「ゆ……お父さんとさきちゃんかと思って飛び出したんだけど、違いました」

「勘違いしちゃったね」


 二人でたははと笑って誤魔化しにかかる。


「いや、でも……何か変なのと一緒に林の奥へと行かなかったかい?」

「変なのって何ですか?」


 ポーカーフェイスで堂々と尋ねる。


「あれは……とても大きい昆虫に見えたよ?」


 ……おや?


「え、いやー、そんなことは無いんじゃないですかね? ただのおっきいゲジゲジですよ」


 あ、下村さん。

 そんな言い方したら……。


「いや、あの大きさのゲジゲジはありえないよ」


 そりゃそうなるよね。ここは知らぬ存ぜぬで通すべきだったけど、下村さんは誤魔化すの苦手そうだし、まぁ仕方ないか。

 どうせバレたのなら、ついでに気になることは聞いとこう。

 

「浦辺さん、僕達が家を飛び出した時には玄関に居なかった思うんですけど、どうして分かったんですか?」

「たまたま窓から見えたんだよ」


 あぁ、そういうことか。

 もっともな理由に拍子抜けする。


「ちなみに、ああいうのをこれまでに見たことはあります?」

「ないね。びっくりしたよ」


 気にし過ぎかな?

 さきちゃんのことで謎が多すぎて、少し警戒しすぎてるのかもしれない。


 内心で反省すると、僕は浦辺さんを真っ直ぐに見上げた。


「えぇと、浦辺さん」

「うん」

「さっき見た僕達の事は忘れて貰えると助かります」


 これ以上は誤魔化せない以上、変なことは言わず、直球で交渉した方が良い。

 そう思った僕は真剣な表情で、浦辺さんをじっと見た。


「……分かった。今は何も尋ねないことにするよ」

「「ありがとうございます!」」


 ……通じてくれた!

 僕は下村さんと一緒にお辞儀して、しっかりお礼を伝えた。


 その後は新たなロボットが現れることは無かったけど、結局優太達も来ることはなかった。

 もしかしたら向こうでもロボットに襲われてるのかもしれない。

 優太なら大丈夫とは思うけど……不安は増すばかりだ。



 ――時間も遅くなり、今晩はこれ以上待っても仕方ないと判断した僕達は、居室の一つを借りて下村さんと一緒に休むことになった。

 お風呂も借りちゃったし、浦辺さんには申し訳ないや。


「――ねぇ、葉月ちゃん」


 二つ並べた布団の片方に座り込んだ下村さんが、話しかけてきた。

 

「どうしたの?」

「今日さ……何でロボットが襲ってきたと思う?」


 それは僕も気になった。


 今日出てきたロボットは、今までと違う。

 今までは、夜道で一人になっている人を襲ってた。目撃者を出さないようにする狙いがあったはずだ。

 でも今日のは違う。明らかにこの家に目的があって、寄ってきた感じがする。


「……分からない。けど分からないなりに推測するなら、あのロボットは廃病院の地下施設で作られたものとは違うのかもしれない」

「……どういうこと?」


 地下施設は既に廃棄された施設だ。そこから脱走したロボットは、廃棄される前にプログラムされた命令に従って動いている。

 だから僕みたいな、見た目小さな子供が夜道を無防備に歩くだけで、釣りだすことができた。

 でも今回は違う。人が何人も滞在している民家を襲おうとした。

 おそらく、ロボットにプログラムされた命令そのものが違うんだと思う。

 であれば地下施設のロボットに誰かが別の命令をプログラムしたと考えるよりも、地下施設とは別のところで作られたものと考えた方が自然な気がする。


「命令が違う……あのロボットは民家を襲うようにプログラムされてたってこと?」

「うーん。その可能性もあるけど、それだとしっくりこないんだよね」


 無差別にどっかの家を狙ってただけって可能性はあるけど、それだと余りにも偶然がすぎる。

 謎の三人組。さきちゃんが狙われていたこと。それと、ロボットが現れたことに意味があるとすれば……。


「例えば……浦辺さんが組織に狙われてるとか?」

「……っ」


 下村さんが息を吞んだ。


 僕達の存在は組織にバレてないとヴィクターさんは言ってた。

 それを信じるなら、ロボットの狙いが僕達だとは考えにくい。

 なら浦辺さんか、さきちゃんがロボットに狙われてるって考えた方が良い。

 さきちゃんは執拗に狙われているけど、ただの子供であることを考慮すると、実は本当に狙われているのは浦辺さんなのかもしれない。


「でも……何で浦辺さんが?」

「それは分からないけど……漫画みたいな考え方をするなら、浦辺さんが組織の存在に気づいたとか?」


 まあ、ロボットの存在を知らなかったみたいだし、これは無いか。

 他には……浦辺さんの仕事が関係してるとかかな。


 晩御飯の時に聞いたら、浦辺さんはフリーのプログラマーだと言ってた。

 浦辺さんが作った何かを狙われたとかは……あるかもしれない。


 他にも適当に理由を考えてみたけど、一番しっくりくるのはプログラマーとしての浦辺さんが狙われたってことだった。


「じゃあ、さきちゃんは人質に取ろうとしたとか?」

「もし、僕の考えが合ってるならね」


 僕の言葉に、下村さんが眉根を寄せた。


「……ねぇ、だとしたらあの三人って組織の人かもしれないの?」

「……そうだね」


 ……念の為、連絡は入れといた方がいいかな。


 そう思って、スマホを触る。

 その後、しばらく雑談してると着信が入った。

 見ると藤堂さんからだった。


「――もしもし」

「もしもし、こんばんは」


 僕は藤堂さんに、手短に事情を説明した。


「――何で、そんな変なことに巻き込まれてるのよ」


 電話越しだけど、藤堂さんが呆れてるのが分かる。

 本当にね。僕も不思議だよ。


「とりあえず、朝一で私もそっちに向かうから」

「危険だよ?」

「だからよ」


 その短いやり取りで、止めても無駄だということは分かった。


「気をつけて」

「あなた達もね」


 そう言って、電話は切れた。

 藤堂さんに来てもらうのは申し訳ないけど、正直心強い。


 大善寺さんのマジックショーもあるし、明日の午前中にはケリをつけないといけない。

 大善寺さんには今日は帰れないって伝えてあるけど、大丈夫かな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ