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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
三章

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4 彼らの組織って……やっぱりそういうことなのかな

 皆で僕らの家に集まって話をした日の翌日。

 神前さんとヴィクターさんの二人には、もう一度家に来てもらった。

 昨晩は時間が遅くなったことから、できなかった話をするためだ。


 今日の話し合いに下村さんと藤堂さんは呼んでない。

 ヴィクターさんの要望で昼間に会うことになったので、学校の授業がある二人は集まれないというのが理由の一つ。

 もう一つの理由は、あの二人が居たら少し話しづらいことをするつもりだからだ。


 今日話を聞く目的。それは彼らの組織と、二百年前に僕らを人体実験してた組織が同じかどうかを確かめること。

 そしてもし同じなら、僕の不老不死を解いたり、優太を元の人間に戻す方法が無いかを確認することだ。

 そういった確認をしていく上で、ヴィクターさん達に対しては、僕らの体質については秘密にしておきたい。

 申し訳ないけど、あの子達がいるとリアクションでバレちゃうかもしれないからね。特に下村さんとか……。

 

 それに、もし僕らの不老不死を解く手掛かりが彼らの組織にあったとしたら、その情報を得るために僕らは組織とより深く関わらないといけなくなるかもしれない。

 二人にはせっかく安全な生活が戻ってきたのに、また巻き込む訳にはいかないという思いもある。


 まぁ、少し待てば宝玉が使えるようになるから、わざわざ危険な橋を渡る必要はないかもしれないのだけれど、それは情報を集めてから考えれば良いと思ってる。

 話を聞いて危険そうなら、関わるのをやめて宝玉に力が貯まるのを待てば良いのだ。


 なので情報を手に入れても直ぐにどうこうするかは決まらないということもあって、今は二人に急いで伝える必要もないかなって感じだ。


 そんな訳で平日の昼間に、僕ら四人は改めてちゃぶ台を囲んでいた。

 ヴィクターさんは無駄話が嫌いだそうなので、お茶を神前さんとヴィクターさんに出したところで早速話を切り出した。


「君達の組織ってどれくらい前から存在するの?」


 二人に向かって尋ねたわけだけど、神前さんは首を横に振った。


「さぁな。悪いがそういうの、俺は疎いんだわ」


 そう言って、ヴィクターさんへと顔を向ける。

 釣られて僕らもヴィクターさんを見る。


「詳しくは僕も知らない。……ただ二百五十年以上前から続いてるのは間違いないな」


 お茶を一口飲んだヴィクターさんが、そう答えた。


 二百五十年……。

 なら僕らで人体実験をしてた組織と、彼らの組織が一緒だという可能性は十分にある。


 むしろあんな規模で人体実験するような組織が、同じ時期に幾つもあるとは思えない。

 同一の組織である可能性が高くなったと考えて良いと思う。

 ……いや、待てよ。彼らの組織が二百五十年前から存在したとして、その時から人体実験をしてたかどうかは分からないのか。


「二百五十年前から、人体実験とか兵器開発ってやってるの?」

「内容は分からんが、おそらくはやってたはずだ」


 当時はまだAIについての研究はされてなかったから、むしろ人体実験と兵器開発がメインだったはずだとヴィクターさんは続けた。


「人の進化を目指して、やってたってことだよね?」

「あぁ。手段は変われど目的は変わってないはずだ」


 手段は変われど? どういう意味だろう。

 

 良く分からなかったので尋ねると、深い意味は無いと言われた。


 何でも組織はトップについてる人が運営の舵取りをしていて、技研や適応研なんかはその時のトップの意向で方針が大なり小なり変わるそうだ。


「例えば、先代の《技研》のトップ――総代は自律型ロボットの研究に重きを置いていた。が、今の《技研》の総代は人が扱う兵器の発展に重きを置いてる」


 続くヴィクターさんの説明に、なるほどと納得する。

 要は人の進化を目指すという目的は変わらないけど、それをどうやって達成するかという手段が時代によって変わるということか。


 人体実験は適応研の分野。潰される前は人の進化を目指すために人体実験をしてたけど、二百年前も同じように人体実験してたかは分からない。そういうことかな?

 ……いや。ヴィクターさんは、内容は分からないけれど、人体実験自体はしてたはずと言ってた。

 人の進化を目指すために人体実験はしてたはずだけど、その実験内容が分からないってことだね。


「技研や、適応研の人たちが昔、どういうことをしてたのかって調べることはできる?」

「時間がかかるが、問題ない」

「それじゃあ、お願いしたいな」


 おそらく二百年前に僕らで人体実験してた組織は適応研とやらのはずだ。これで、適応研の実験内容に不老不死に関わるものや、優太の魔法に関わるようなものがあれば、僕らの体質を解く手掛かりになるかもしれない。

 この辺の情報を露骨に聞くと、僕らの体質がバレるかもしれないので、二人には念のため技研のことについても調べてもらうことにした。その分、情報を集めてもらうのには時間がかかるかもしれないけど、そこは仕方ないね。

 

 とりあえず、今日聞きたいことは確認できたわけだけど、これで話し合いを終了してしまったら、何か疑われてしまうかもしれない。

 なので、ここからは僕らの目的をけむに巻くために、追加で質問をしていくことにした。


「ちなみに技研や適応研の話ばっか出てくるけど、本家は何をやってるの? 昨日は本社みたいなものって言ってたけど」


 そう尋ねると、ヴィクターさんが少し困った顔を見せた。


「《本家》か……正直あそこは謎が多い。《本家》以外の集団をまとめているのは間違いないが……彼らが活動しているという話はあまり聞かないんだ」


 まとめてるけど、活動している話は聞かない?

 どういうことだろう。


 僕がヴィクターさんの言ってる意味を理解できてないのが伝わったんだろう。

 ヴィクターさんが続けて話してくれた。


 組織の各集団は定期的に総代だけ集まって会議をしているらしいのだけど、本家はその場で指示を出すだけで、それ以外では口を出してこないらしい。

 そして、それ以外では活動している様子が見られない、と。


「それ……本家って本当に存在するの?」

「おそらく存在はする。うちの……《技研》の総代から聞いた話だがな」


 技研の総代……ヴィクターさんの上司が存在するって言ってるのか。

 その上司がヴィクターさんを騙そうとしてるとか、そういうのでない限りはいるってことだね。


「本家については、良く分かってない上に色々と噂がある」


 頭の中で情報を整理していると、ヴィクターさんがそう言ってきた。

 噂って何だろう。


「本家の総代――僕達は当主と呼んでいるが……組織が作られてから今に至るまで、当主は代替わりしてないという噂がある」

「それって、どういう……」


 尋ねる僕を観察するように見ながら、ヴィクターさんが言葉を続けた。


「――当主様は不老不死だと言われてるよ」


 衝撃が走ったような気がした。

 

「不老……不死?」

「荒唐無稽だから信じにくいのも無理は無い」


 思わず呟いた僕の様子を、ヴィクターさんはじっと見ていた。


「実際噂があるだけで本当かどうかは分からん。何せ……当主を見たことがあるのは各集団の総代だけで、その総代も入れ替わっていっている。昔の当主と、今の当主を比較をした者はいないということだ」


 だが、火のない所に煙は立たない。噂がある以上は何かしらの根拠があるはずだ。

 そう続けるヴィクターさん。


 良く分からないと言いつつも、噂は本当かもしれないんだね。

 というか、不老不死については僕という本物がいるし、本当である可能性は高いのかもしれない。


 組織のトップが不老不死……僕の体質と関係あるのかな……。

 気になって、思わず僕は尋ねた。


「……ねぇ、ヴィクターさん。その当主さんのこと、もっと知りたいんだけど」

「それは……お前の力と関係してるのか?」


 気を落ち着けようとお茶を飲んだところで、そう言われて思わず(むせ)た。

 咳き込んだ後に、ヴィクターさんを見る。


 それって……僕が不老不死だってバレてるってこと?


 あまりにも衝撃的な問いかけに、たぶん僕はポーカーフェイスができてなかったんだと思う。

 ヴィクターさんは僕の様子を見てため息を吐いた。


「これまで得た情報からの単なる推測だ。他意は無いし、誰にも言うつもりはない」


 マジか……。

 この人の前で、不老不死に関わるようなところって見せてなかったと思うのに……。

 この人の頭を良さを見誤っていた。


「……それは推測だけに留めて、誰にも言わないようにして貰えると助かるよ」

「良いだろう。その言葉で十分だ」


 あぁ、推測が確信に変わったみたいだね。でも仕方ない。

 これなら下村さんと藤堂さんにも同席してもらっても変わらなかったね。

 ごめん下村さん。僕が普通にドジっちゃったみたい。


 神前さんの方を見ると、彼は僕らのやり取りについて特に理解はできてない様子だった。


「俺だけ置いてけぼりかよ」

「気にするな。僕と違って頭が悪いんだから仕方ない」


 ヴィクターさんに辛辣なセリフを言われて、神前さんが肩を竦めた。


「それで、お前の質問に戻るが……現状僕が当主について分かってることは少ない」


 総代からも、あまり詳しくは聞いてないそうだ。

 

「それって調べることはできる? ……危険そうなら無理はしなくて良いけど」

「怪しまれない程度にやってみよう」

「ありがとう、よろしくお願いするよ」


 ――その後、今後の動き方について少し打ち合わせて集まりは解散になった。

 二人が帰って少し広くなった居間に、優太と二人で座り込む。


「お姉ちゃん、大丈夫?」


 優太が聞いてきた。

 たぶん、僕が色々考えてたからだろうね。


「うん、大丈夫だよ。少し驚いただけだから」


 ヴィクターさんに僕が不老不死であることがバレたのもそうだけど、一番の驚きは彼らの当主についてだ。

 まさか組織のトップとの関わりが出てくるなんて……。


 事が大きくなりそうな予感に、僕は大きくため息を吐いた。

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