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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴


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3 僕たちの戦いが今始まる

 電気の通った地下室。

 明るくなったスクリーンの前で、放置されていた椅子に、僕はぼーっと座っていた。

 僕の体格に対して椅子は、僕の体がすっぽり収まるぐらいには大きい。それに深く腰掛けて体育座りをしながら、スナック菓子をポリポリと食べる。


 灯りがついて良く見えるようになった部屋は埃だらけで、とても汚かった。

 なので先に掃除をしたのだけど、それだけで二日が潰れてしまった。

 ようやくましになったから、一休みしているところだ。


『いやー、助かったわ。予備電源にも限りがあるから、ヤバいなって思てたんよねー』


 やっぱりコンソメ味は美味しいなぁ。

 後はコーラがあれば完璧なんだけどなぁ。


『待機モードで精一杯節約してたんやけど、それでも消費はされてくし。お嬢ちゃんが後一ヶ月来るの遅かったら、うち死んでたかもやわ』


 あ、手汚れちゃった。

 こういうお菓子の唯一の欠点は手が汚れることだよなぁ。

 この施設には……洗える場所は無いよねぇ。


『ほんと、お嬢ちゃんは命の恩人やわ。うちにできることは何でもするから言うてやー』


 ていうか、お風呂入りたくなってきたよ。掃除して汗かいてるしね。

 ……いったん、銭湯に行こっかな。


 僕は椅子から飛び降りると、スクリーンに背を向けた。


『――て、ちょい待ちぃ! 何で、どっか行こーとするん! つか、ずっと無視するのって酷くない!?』

「うるさいなぁ」

『いや、うるさいって。うちを助けてくれたのお嬢ちゃんやん!』


 いや、だって。ここまでうるさいなんて思わなかったし。

 ため息を吐いてから椅子に座り直し、スクリーンへと目を向ける。


 さっきから方言剝き出しで喋っているのは、この施設のナビゲーターAI? とやらだ。

 予備電源で動いていた時はまとまな会話をしていたのだけど、発電機を動かして電気を供給した途端、喋り方がこうなった。

 意味が分からない。

 とりあえず、うるさいのは苦手なので無視を決め込んでたのだが、一向に静かにならないので諦める。

 情報だけもらったらお別れしよう。


「とりあえず僕の質問に答えてくれる?」

『ひゅー。お嬢ちゃん、僕っ子なんかー。リアルでは初めて見たわー』

「それじゃね、ばいばい」

『あ、待ってぇな。ごめんて、真面目に喋るから行かんといて』


 椅子を降りようとしたら必死に引き止めてきたので仕方なく留まる。


 そもそもその喋り方、何? 

 製作者の趣味? それとも、製作者がこういう喋り方してたの? どっちにしても、要らない趣味をぶち込んでくれたもんだ。

 ていうか、さっきまではそんな喋り方してなかったよね。

 予備電源で動いてたから省エネにしてた?

 じゃあ今も省エネで動けばいいのに。


 そこから、すぐに話を脱線させるAIにイライラしつつ、何とか話を聞き出した。

 僕の予想通り、こけしのロボットはこの施設で作られたものらしい。部屋に残されてたスパコンのデータベースに類似するロボットのデータが残っていた。

 どうやらこの施設は無機物に命をもたらすことを目標に色々な研究をしていたらしい。今スクリーン上で話してるAIも、その一貫で作られたのだとか。

 で、放棄されたのが二十年程前。理由は記録が残ってないので不明。当初こけしは施設内に保管されてたけど、施設の電源が落ちた際に大型設備搬入用の通路が解放されて、なんだかんだで逃げ出したんじゃないかとAIは推測してた。

 肝心なところは謎なままだけど、それはまあ電源が落ちてたから仕方ないとは思う。


 というわけで、僕の名推理で見事にこけしが作られた施設を探し当てた訳なんだけど。

 肝心の、昔僕が居た施設と、この施設が同一のものなのか? という疑問については解消されなかった。

 何せ、僕が実験を受けさせられてたのは二百年前。

 AIもさすがにそんな昔の情報は持ってなかったのだ。


 施設内には明らかに人体実験を行ってた痕跡があったので、二百年前と言わなくとも、そういった研究はしていたはずなんだけど、AIは知らないと言った。データベースとやらに情報が残ってないのか、はたまた知ってるけど誤魔化しているのか。

 どっちにしろ、このAIはあまり信用できなさそうだ。


 なのでスパコンの中を直接覗きにいけないかと思って、そちらを確認しようともしたけど、こちらも空振り。

 というか、セキュリティでパスワードがかけられていたので覗くことができなかった。

 考えてみれば当たり前だ。

 自分たちの研究、それも法律に触れてそうなものの情報を簡単に抜き出せるようにはしていないだろう。

 むしろ、何かしらの情報が入っているだろうスパコンそのものを壊されなかっただけマシかもしれない。まあ、覗けない時点で役には立たないのだけど。


 つまり、僕が情報を得られるのはAIからのみな状態で、そのAIは昔の施設について何も知らない、もしくは知ってて黙っているということだ。

 ……うん、詰んだね。

 一応、不老不死であることを利用してスパコンのパスワードを総当りで調べるって手段も考えたけど、何回か入力ミスしたらロックがかかって永久に解除できなくなるタイプのやつらしくてそれも無理。時間で解決できない問題はどうしようもない。


 そんな訳で、僕の目的である不老不死を解く手掛かりは見つからなかった。

 ……疲れたな。お風呂行こうかな。


『ちょ、待ってーな』

「何? まだ何かあるの?」

『いや。ここでお嬢ちゃんを行かしたら、もう帰ってこんのとちゃうかって思って』

「よく分かったね」

『それは勘弁してーな。ようやく復活できてん。また放置されたら敵わんわ』

「でも、もう用が無いし」


 僕の目的は不老不死を解くことだ。その情報が得られないなら、ここにいる意味は無い。


『いやいや、まだ何かあるかもしれんで。うちにも役に立てることがあると思うんよ』

「役に……ねぇ。例えば?」


 尋ねると、スクリーンに何かが表示された。


『ここで作られてたもの。その情報をうちは持っとるよ!』


 あぁ、じゃあスクリーンに映ってるこれは、その情報のリストってことか。


「でも、それってここ百年ぐらいのものなんでしょ?」

『それでも役に立つものがあるかもしれんやん』


 言われて考える。

 確かに。別に不老不死さえ解ければいいんだから、僕が居た研究施設に拘る必要は無い。ここで作られたものの中で、僕の不老不死を解けるものがあれば、それでも良いわけだ。

 無機物に命をもたらす、という研究に手掛かりがあるようには見えないけど、まあ見てみる分には損はしないか。


 僕は椅子に座り直すと、スクリーン上のリストへと目を落とした。

 ……うん、多いな。

 表示されてる件数を見て、僕は早々に諦めた。ナビゲーターって言うぐらいだし、こういう時こそAIの力を頼るべきだね。

 体を起こして、背もたれにもたれかかる。


「役に立ちそうなものって、例えば何があるの?」 

『せやなぁ。うちのお勧めはやっぱス・ノーメンやな』

「スノーマン?」

『ちゃうちゃう。ス・ノーメンや』


 一発目から、何か色物っぽいのが出てきたんだけど。


「……どんなのなの?」

『雪だるまの見た目をしている双子型のロボットやな』


 やっぱスノーマン(雪だるま)じゃん。


「何がお勧めなの?」

『暑い時に、彼らが傍に居ってくれると涼が取れる』

「はぁ、なるほどねぇ……え、それだけ?」

『それでも十分過ぎるくらいにはメリットある思うけどな』

「……他には?」


 脱力しながら問いかける。


『他やと……雨雲レーダーのコロン・ルブスくん。ネイリストのラ・メアートルさん。あ、触手の磯ぎんちゃくんなんてのも居ったな』


 いや、碌なの居ないな。特に最後のは用途すら分かんないんだけど。


『お嬢ちゃんは若いから知らんと思うけど、触手に対してコアなファンがおったりするんやで』


 知るか! こう見えても、もうすぐ二百五十歳(前世含む)になるけど、そんなの聞いたことないし!


『まあ、どれもこれも今は居らんねんけどね』

「居ないって?」

『施設内に反応が無いんよ。ここのシステムが落ちた際に、まとめて脱走してもうたみたい』


 さらっと爆弾発言してきたな、こいつ。

 じゃあ、こけし型ロボットみたいにそいつらも街中で暴れる可能性があるってこと?

 何この街、めっちゃ危険じゃん。


『どしたん?』

「いや、頭が痛くなっただけ」


 まあ、いいや。この街には正義の味方っぽい魔法少女がいるし。それは彼女達に任せよう。

 ひとまず、ここには何も無いって分かったし、帰ろうかな。


『あー、待ってぇな。役立つのがきっとあるって。今思い出すからっ!』


 帰ろうとしたところを再び止められる。

 ……はぁ。まぁ、次の方針がある訳でもないし、もう少し付き合おうか。

 仕方ないので、ジト目でスクリーンを見ながら、検索をかけにいったAIの回答を待つ。


『後は……後は……あ、宝玉とか!』


 うるさっ。

 急に叫ぶの止めてよ。


「……って、宝玉?」

『そう、宝玉。こいつは凄いでー。七つ集めると、なんと願いが叶うんや』


 何それ? 何の漫画の世界の話?


『いや、何か北海道の神玉巡拝を参考に作られたとからしいわ』


 何か元ネタがあったんだけど。

 いや漫画の話は置いといて、だ。宝玉を集めると願いが叶うってのは興味深いな。


「それって、どんな願いでも叶うの?」

『どんな、までは無理やね。限界はあったはずやわ』


 そうか……それなら確定ではないね。

 でも僕の不老不死を解ける可能性はあるわけだ。

 今のところ他に手掛かりは無いし、宝玉を集めてみるのも良いかもしれない。

 でも、そんな凄いモノを作ってたのに、この施設は放棄されちゃったんだね。いったい、何があったんだろう。

 ……まあ、考えても分からないことはいいか。


「それって、この研究施設にあるの?」

『お、興味津々やねぇ。お嬢ちゃんはどんな願いを叶えてもらいたいん??』

「喋る気がないなら、もう行くけど」

『ああぁ、ごめんて。ちょっと待ってぇな。今から検索するから』


 このAI、すぐに話を逸らしてくるな。

 はっきり言って会話するのが面倒くさい。


『うーん、ここには無いみたいやね。この街に点在しとるみたいやわ』


 少しの間待ってると、AIからそんな回答が返ってきた。

 ここで作られたのに、街に点在してるってどういうことなんだろう。


『何か、自然からエネルギーを吸い上げるため、みたいやね。そのエネルギーを使って願いを叶えるみたいやね』


 へぇ、自然のエネルギーを使うんだ。それは確かに願いを叶えてくれそうだ。

 でも大丈夫かな? そういうのって使い過ぎると、自然破壊に繋がったりしないのかな。


『そこまでのデータは残ってないわ。宝玉が正式に使われた記録もないし、一、二回使うぐらいなら問題ないんちゃう?』


 いや、そんな凄いもの作って、今まで使われたことないの?

 まあでも、AIの言う通りだね。僕が使いたいのは一回だけだし。ちょっとだけ自然の力をお借りしようかな。


「宝玉がある場所を教えてくれる?」

『えー、どうしようかなぁ。結構な情報やから、無料って訳にはなぁ』

「分かった自分で探すよ。じゃあね、バイバイ」

『いや、冗談やん。待って。教える、教えからー』


 まったく。油断すると直ぐにふざけようとするな、このAIは。

 何で、AIの性格をこんな風に設定したのかな、作った人は。

 

 その後、とりあえず一個、宝玉の場所を教えてもらったので、そこへ向かうべく僕は椅子を降りた。


『でも気いつけてな。宝玉は簡単に盗まれないように、プロテクトがかかってるで』

「プロテクト?」

「取出すためには危険なセキュリティを解かなあかんってこと」


 ふーん。確かに願いを叶えられるぐらいだし、宝玉って重要アイテムっぽいもんね。

 まあ、今の僕は不死だし。何とかなるかな?


 こうして、七つの玉を巡る僕の戦いが幕を開けた。

 ……その前に、とりあえずお風呂行こ。

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