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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
二章

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6 話し合いで解決できませんか?

 ロボットを放棄された工場構内へ追い詰めて、いざ破壊しようとした時。

 突然現れた二人組の男の人は、ロボットの前に立ち塞がるように立っていた。

 それと対峙するように、向かい合う僕ら。

 

「君達は何者だい?」


 優太が尋ねた。緊張してるのが声で分かる。


 そりゃそうだろう。

 この二人は明らかに普通じゃない。


 背が高いスーツの男。手には鍔のついてない短めの刃物を持っている。刃物の柄の先にはチェーンか紐みたいなのがついてて、男の腰元に伸びてる。ただの短刀って訳じゃないんだろう。とはいえ、短刀は短刀だ。そんなので藤堂さんのハンマーを防いでるんだから、この人自身の膂力が相当なんだと思う。

 もう一人はロングコートを着た男。外国人だ。海外の人の年齢を当てるのは難しいけど、かなり若く見える。成人してるかどうかって感じかな。さっき現れた時には流暢な日本語を話してたから、優太の質問も理解はできてると思う。


 突然出てきて、ロボットを守るような振る舞い。

 どう考えても良い人には見えない。

 ――例えば、廃病院の地下施設に関係のある人とか。


 二人組は優太の質問には答えず、じっとこちらを見ていた。

 ややあって、ロングコートの男が口を開く。


「さっきまで兎の見た目をした奴がいたはずだが……それに、他の面々も顔つきが変わったか? 変身できるのか、あるいは……」


 そうか、優太は今認識阻害の魔法を使ってるんだね。たぶん彼らが現れた時に、急いで使ったんだろう。

 だから兎の方の姿も見られちゃったし、僕らの顔つきが変わったようにも見られた。


 まぁでもこの場は暗いし、見間違えだってことで誤魔化すことはできるはず。

 それよりも優太の兎の姿を見たっていうのに、彼らは驚いてないみたいだ。

 その事実に更に警戒心が強くなる。


「アクセス……モードアドミニストレータ」


 ロングコートの男が突然、意味の分からないことを言った。

 アドミニストレータって……管理者って意味だよね? 何のだろう。

 それを言った本人は僕らの様子を窺いながら、考え込む姿勢を見せている。

 

「……ふむ、うちの兵器ではないか」

「お? 当てが外れたのかい? 珍しいじゃん」

 

 スーツの男が揶揄するように言う。


「いや、可能性を消しただけだ。本命は《適応研》の方だからな」

「あぁ。そういや、そう言ってたっけ。つーことは遺産ってことか?」

「おそらくは、だがな」


 二人が何やら会話を続けてるけど、内容の一割も理解できない。

 ただ僕らについて語っているみたいだってことは分かる。


「あの……そのロボットは街の人を襲う危険なものなんです」

 

 膠着した状態の中、下村さんが二人組へ声をかけた。

 その言葉に反応して、ロングコートの男が観察するように下村さんを見る。


「――それで?」

「破壊したいので、どいてくれませんか?」


 率直な要求だ。

 この人達はどう反応するのかな……。


 相手の出方に注目してると、ロングコートの男が納得したように頷いた。


「なるほど、正義ごっこをしてる訳か」

「な! ごっこなんかじゃないです!」


 あまりな言い草に、藤堂さんが激昂した。

 僕らは真剣にやってるわけだし、それを馬鹿にされたら怒るのも当然だ。

 でも今は冷静に対応しないとマズい気がする。


 今にも食って掛かりそう雰囲気を出してる藤堂さんを止めるために、僕は声をかけた。


「落ち着いて。冷静に話し合わないと」


 彼らに名前を知られるのは良くない気がしたので主語をつけずに話しかけたのだけど、藤堂さんは反応してくれた。


「でもあいつらっ――」

「嫌な気分になったとしても怒っちゃ駄目。今は落ち着いて」


 そう伝えると、藤堂さんが唇を噛んで黙った。

 理解はしてるけど、気持ちが落ち着いてない感じだ。


 普段の藤堂さんなら、もう少し冷静な気がする。

 やっぱり、いつもと違って調子が悪いのかもしれない。


 どうすれば良いのか悩む間もなく、ロングコートの男が口を開いた。


「話し合いか……まぁいいだろう。こいつにそこまでの価値は無いしな。欲しいと言うならくれてやってもいいが……」

「じゃあ――」

「代わりに先程いた兎のぬいぐるみのようなもの……あれを渡して貰おうか」

「え!?」

「は?」


 譲歩してくれそうな雰囲気の言葉。反応したのは下村さんだったけど、続く男の言葉に絶句した。


 さっきから入ってくる情報が多すぎて頭が痛い。

 この人達はロボットを破壊しようとするのを邪魔してきて、でもそれはそこまで重要ではなさそうで。そして優太にも興味を持ってる。優太のことは今知って興味を持った? それとも前から知ってた?

 いや、落ち着け。今知らないといけないことを考えるんだ。

 

 僕らにとって最悪なことは何だ?

 彼らが地下施設に関わりのある人間だってこと? いや、違う。それは後から考えるのでも構わない。

 刃物を持った大人の男と対面している今、重要なのは彼らに僕らを襲うつもりがあるのかどうかだ。


 それを知るためにも……優太に興味を持つ理由――彼らの目的を知らないといけない。

 優太は今、認識阻害の魔法を使ってくれてるから兎なんて居ないって誤魔化しつつ、情報を探れれば……。


「――申し訳ないけど、その兎が何のことか分からないんだけど。仮に、そんなぬいぐるみがあったとして、何でそんなのを欲しがるの?」


 僕が言葉を吐くと、ロングコートの男はじっと僕を見てきた。


「ふん、隠すか。僕は無駄な会話が嫌いだ。はぐらかすというのなら、話し合いはやめて実力行使をさせてもらう。……迅、やれ」


 対応の仕方を間違えた!? 知性派な雰囲気を出しといて、ロングコートの男も喧嘩っ早いんだけど。

 ……いや、そもそも話し合いなんてするつもり無かったのかも。優太の存在も確信してるみたいだし。


 僕らの間で緊張感が高まる。


「えー、俺がやんの?」

「さっきは興味ありげだったろうが」

「いや、一瞬面白そうには見えたんだけどな。ガキばっかだからなぁ」


 スーツの――迅と呼ばれた男の人、やる気が無さそう?

 そのまま引き下がってくれると助かるんだけど……。


「迅。僕の言うことが聞けないのか?」


 ロングコートの男が強めの口調で言うと、スーツの男が肩を竦めた。


「へいへい。やりますよっと。……ということでお嬢ちゃんたち、早めに兎を渡さないと痛い目に合うぜ」


 持ってた刃物を軽く払うと、一歩前に出てくる男。

 駄目か……こうなったら逃げることを考えないと。


 一旦自分が矢面に立つために前に出ようとしたけど、それより早く藤堂さんが一歩前に出た。


「未成年への暴行教唆。あなた達がやろうとしているのは立派な犯罪行為です。見逃せません」

「ちょっ、渚!」

「藤堂さん!?」

「渚!」


 やる気満々にハンマーを構える藤堂さん。思わず、静止する声が出たけど、それは他の皆も同じみたいだった。

 下村さんが藤堂さんへと詰め寄る。


「人相手に戦うのはマズイよ。傷つけたらどうするの!?」

「向こうが犯罪を犯すつもりなら、止めなきゃいけないわ。それに……」


 藤堂さんがスーツの男をじっと見据える。


「このまま戦うことなく、この場をまとめるなんて無理でしょう」

「そっちの嬢ちゃんは分かってるじゃん。言っとくけど、やるとなったら逃がすつもりはねぇからな」


 不適に男が笑う。

 それを見ていた下村さんが頭をがしがしと掻いた後、ローラーを構えた。


「あぁ、もう! 分かったよ」


 いや、下村さんも戦う気になっちゃってるじゃん。


「二人とも――」

「葉月ちゃん、大丈夫。犯罪を犯すつもりはないから」

「そういう問題じゃ……」

「危ないから、あなたは下がってなさい」


 駄目だ。聞く耳をもってくれない。


 犯罪云々関係なく、相手も普通じゃさそうだから、戦うのはやめて欲しいんだけど……。

 でもスーツの男の人も引き下がってはくれなさそうだし、こうなってしまったら止めるのは無理そうだ。

 危険なことはして欲しくないけど、そうも言ってられない。

 二人は魔法少女の姿になって、身体能力も上がってるはずだ。そうそう負けることは無いだろうし、最悪僕が盾になればいい。 


 念のために周囲を見渡して工場内の様子を窺いながら、いつでも介入できるように三人の睨み合いを見守ることにした。

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