表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/46

5 やる気があるのは良いことだけど、無理はしちゃ駄目だよね

「――じゃあねー」

「また明日ー」

「今日さー」


 様々な言葉が行き交う校門前。

 放課後の長山第二中学校の前では、帰途に着く生徒達で賑わいを見せていた。

 長山第二中学は部活動所属が必須とはなっておらず、放課後直ぐに帰宅する層と、部活動に勤しむ層に別れる。

 今は放課後直ぐに帰宅する層の帰宅ラッシュの時間であり、下村朝陽もこの流れにのって友人たちと帰路につこうとしていた。


 いつも通りの帰り道。流れのままに歩いていた朝陽は、友人の様子がいつもと異なることに気づいた。


「どうしたの、まーか?」


 ボーっと何かを見てる友人。

 何事かと、朝陽は彼女へ問いかける。


「……ね。あの人、どっかで見たことない?」


 言われて友人の視線の先を見ると。

 一人の女性が校門の道路を挟んで向かい側に立っていた。


 薄手のニットとチェスターコートのトップスにデニムパンツを組合せた服装の、長髪の女性。校門の方へと顔を向けているが、帽子とサングラスを身につけており、その表情ははっきりと分からない。


「えー、分からん」

「ていうか、雰囲気怪しくない?」

「そうかなー、見た事ある気がするんだけど」

「不審者がいたら教えろって先生言ってたよね」


 口々に話す友人達。

 否定的な意見も出る中、朝陽がふと何かに気づいた。


「あっ。……いや、大丈夫じゃないかな」


 そう言うや、女性へと近づいていく。


「「「ちょ、あさひ!?」」」

「こんにちはー」


 友人たちが静止するも歩みを止めることなく、朝陽はそのまま怪しい女性へと声をかけた。


「ん……あら? あなた」


 声をかけられた女性が朝陽へと顔を向けると、彼女もまた朝陽に気づいた様子を見せた。


「あ、やっぱこの前の人ですね」

「久しぶりね」


 笑いながら話しかける朝陽。

 その女性は、先日朝陽が遅刻しかけて渚に叱られた日。通学中に声をかけた少女の傍にいた女性だった。


「この見た目で良く分かったわね」


 自身の姿を見下ろしながら女性が言う。

 不審な恰好をしている自覚があるのか、あるいはわざとそういう格好をしていたのか。

 真意は分からないが、問いかけられた言葉に朝陽は笑って返した。


「ちょっと変わったイヤリングしてるなーって思ってたので」

「……あぁ、なるほど。ふふ、可愛いでしょ?」

「はい!」


 髪を耳にかけていることで、そこから覗くウッドビーズのロングイヤリング。それを見せびらかすような仕草を取る女性。

 彼女の問いに朝陽は大きく頷いた。


「そう言えば、あの後学校には間に合った?」

「おかげで何とか大丈夫でした! ……まあ、ギリギリ過ぎて風紀委員の子には怒られちゃいましたけど」

「あらー、なかなか厳しいのね」

「そーなんですよー」


 屈託なく笑う朝陽。それに釣られて女性もまた笑みをこぼす。

 楽しそうな表情を見せながら、女性が朝陽の後ろに目配せする。


「後ろの子達はお友達なの?」

「あ、そうなんです! ……て、あれ?」


 友人達を紹介するべく後ろを振り返った朝陽だったが、友人達の更に背後に居た人物が目に留まった。


「――何であんたが……」


 その人物――藤堂渚が小さく呟いた。女性を見て、唇をわななかせている。

 朝陽の目から見ても、明らかに渚の様子は変であった。


「会えて良かったわ。元気……そうね?」


 何事かと首を傾げていた朝陽だったが、女性から発せられた言葉に驚いた。

 渚と知り合いなのかと問おうとした朝陽だったが、それより先に渚が叫んだ。


「あんたが何でここにいるのよ!」


 普段見ない、敵対する者を見るような目。

 その視線は変わらず、女性に向けられている。


「……ちょっと近くで用があって顔を出しただけよ。すぐ帰るわ」

「帰ってくるなって言われてたでしょ!」


 なおも叫ぶ渚に、女性が呆れたように視線を向ける。


「あなた……まだ言いつけに縛られてるの? 頭固いのは変わってないのね」

「あんたが悪いんでしょうが」


 (かたく)なな渚の態度に、ため息を吐いた女性が朝陽へと顔を向けた。


「ごめんね、お邪魔みだいだから帰るわ。ええと……」

「あ、下村朝陽です」

「そう、朝陽ちゃん。私のことは凛って呼んで。じゃあね、また会いましょ」

「あ、はい。さよなら」


 凛と名乗った女性は朝陽に手を振ると、その場から歩き去った。

 去っていく背中を睨んでいた渚だったが、凛の姿が見えなくなると、今度は朝陽へと噛み付いた。


「あさひも、何であいつと仲良くしてるのよ」

「ちょっと渚。言い過ぎだよ。凛さんが何したって言うの? ていうか、どういう関係なの?」

「それはっ……とにかく、あいつと関わっちゃダメなの!」


 そう言い捨てると、渚は早歩きでその場を去っていった。


「えー説明なし? ……渚、どうしたのかな」


 頭を掻く朝陽。


「あさひー、うちらも帰ろー」

「あ、ごめんごめん」

「ね、ね。さっきの女の人、どういう関係なの?」

「大したことじゃないよ。この前ね――」


 気にはなるが、考えても分からない。

 状況に置いてかれていた友人達の言葉に返すと、朝陽は考えるのをやめて、今度こそ帰路についたのだった。



「――ねぇ、葉月ちゃん」

「どうしたの?」


 下村さんが真剣な表情で僕を見てくる。

 何か困ったことでもあったのかな?

 これから一仕事しなくちゃいけないし、できるだけ――。


「何で、その格好なの?」


 ……恰好?

 

 自分の姿を見下ろす。

 マウンテンパーカーとズボン。パーカーで隠れてるけど、下はいつも着ているシャツだ。この街に来てからも似たようなのは着てるし、別に変じゃないと思うけど。


「一緒に買いに行った可愛い服は?」


 口を膨らませながら文句を言われて、ようやく下村さんが言いたかったことを理解した。

 彼女は僕がオシャレをしていないのが、お気に召さないみたいだ。


「今回は必要ないでしょ?」

「えー、可愛いくない」


 前回みたいに、可愛い恰好をすることでロボットを釣りだせるなら着るけどね。

 今日は服装は関係ないから、着る意味がない。むしろ動きやすい方が良い。

 それに服を買った時よりも、最近は寒くなってきてる。この身体になってから風邪をひいたことはないけど、暖かい恰好はしたい。


 まだ納得がいってなくて駄々をこねてる下村さんを見る。

 我儘言われるのは困ったものだけど、元気そうで何よりだ。



 今日は久しぶりの活動だ。


 ロボットを追い詰めたものの取り逃した前回。下村さんも藤堂さんも寝不足気味だったから、僕らは一週間の休みを取った。

 そうして迎えた今日。しっかり休みを取ってくれたおかげか、下村さんはやる気がみなぎってるみたいだ。

 うん、頼もしいね。

 でも――。


 下村さんから目を離して、隣を見る。


「何よ」


 藤堂さんは何だかイライラしてるみたいだ。

 あまり休めなかったのかな?


「もう少し休んでからにする?」

「何でよ。葉月達が頑張って探してくれたのに、無駄にはできないでしょ」


 うーん、やる気はあると思って良いのかな?

 藤堂さんが言うように、二人が休んでる間に僕と優太は、色々と調査をしてロボットが潜んでる場所のあたりをつけてた。学校に通う彼女達と違って、僕らには昼間の時間があるからね。

 藤堂さんはそのことを言ってるんだろうけど……。


「別に、今日絶対に何とかしないといけないわけじゃないし。もう少し休んでからでも大丈夫だよ?」

「十分休んでるし、問題ないわ」


 問題ありそうなんだけどなぁ。

 下村さんと優太を見ると、彼女達も何か言いたげな顔をしてた。

 やっぱ、心配だよね。

 

 でもなぁ。本人が大丈夫って言ってる手前、無理に止めることもできないし。

 ……仕方ないかぁ。

 前回戦ってるのを見た感じ、今追ってるロボットはそんな強くなかったし。何かあってもまた取り逃がすだけで済むだろうから、今日のところはこのままでもいいかな。


「そっか、無理はしないでね」


 藤堂さんに向かって頷いて、そう返す。

 とりあえず、彼女の様子には注意しとこう。



 不安要素はあるものの、僕らはいつもの活動を開始した。

 肌寒い夜の街を、四人で静かに移動する。

 程なくしてロボットを発見した。


 ロボットも僕らの存在には気づいたようで、すぐに逃げようとした。

 けど、数の有利は偉大だ。

 挟み撃ちをかけるようにして追い立てて、僕らはどこかの放棄された工場へとロボットを追い詰めた。

 窓からの月明かり程度しか光が存在しない、暗がりの構内。

 乱雑に放置された用途不明の鉄板や鉄骨。それらに囲まれて、形作られたスペースでロボットと対峙する。


「今度は逃がさないわよ」


 言いながら、藤堂さんがハンマーを振りかざした。

 勢いのままにロボットへと叩きつけようとした直前――。


「――なっ!」


 黒い人影が突然現れて、ハンマーを受け止めた。

 藤堂さんは驚きの声をあげながらも、後ろに跳んで人影から距離を取った。


 藤堂さんに怪我がなさそうなことを横目で確認してから、その場に立ったままの人影を注視する。


 ――それは、スーツの男だった

 手には短い刃物のようなものを持ってる。あれでハンマーを受け止めたのだとしたら、とんでもない膂力の持ち主だ。


「――へぇ、大した力だな」


 スーツの男が、低い声で呟いた。

 こちらを見る冷めた目に、警戒心が湧き上がる。

 藤堂さんはもちろん魔法少女の姿をして巨大なハンマーを持っている。それらを目にしてるのに、驚いた様子が見られない――この人がここに現れたのは偶然じゃない?


「……その体格で振り回せて、かつ迅が認めるだけの力を発揮する武器か」


 工場内に低い声が小さく響いた。目の前にいる人とは、別の声だ。

 慌てて周りを見ると、工場内の暗がりから更に人影が現れた。


「思わぬ拾い物かもしれんな」


 その人影――ロングコートを着た金髪の少年が、冷たい視線を僕らに向けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ