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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
一章

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幕間5 風紀を守る活動って大変だね(後編)

 市立長山第二中学校のグラウンド端。校舎から繋がるコンクリートとグラウンドの境い目で騒ぎが起こっていた。


「だーかーらー、あんた達が割ったんでしょ!」

「知らねーって言ってんじゃん」

「しつけーなー」


 一人は風紀委員の腕章をつけた女子生徒――後藤久美。

 もう二人は坊主頭の男子生徒――昨日久美と騒ぎを起こした二人組。

 昨日と全く同じ構図で久美が二人に噛み付いてた。


 部活へと向かう生徒達がやり取りを見つつも関わらないように横を抜けていく中、久美が二人組へと主張する。


「あんたら、窓が割れた直後に廊下を走ってきたでしょ!」


 久美が廊下でぶつかり、尻餅をつかされた相手は二人組だった。

 彼らは廊下を走ったまま角を曲がろうとし、久美に気づかずぶつかってきたのだ。

 久美はその走った理由を、二人組が窓を割ってしまい逃げたのではないかと推測していた。


「それだけで犯人扱いかよ」

「窓割った証拠でもあんのかよ」


 当然二人組も反論する。久美の主張はあくまで二人組が窓ガラスが割れた直後に、現場から走り去ろうとしたという状況証拠のみ。

 彼らが犯人とする明確な証拠があるわけではない。

 犯人と疑われるのは心外だと言わんばかりの勢いで、久美へと言い返す。


「だって、あんたら現場から走ってきたじゃない。割っちゃったから、逃げようとしたんじゃないの!」

「走ってただけだろ!」

「窓が割れるのとは関係ねぇだろ!」


 勢いよく責め立ててた久美だったが、二人組の言い分に怯みを見せる。

 状況証拠のみで二人組を犯人だとする、彼女の主張は間違いなく弱い。

 久美の分は悪かった。


「――久美ちゃん!」


 そこに駆けつけてきたのは藤堂渚、そしてその隣には件のガラスを処理した吉井先生がいた。

 渚はともかくとして先生の姿があったことで、久美も二人組も口論を止める。

 場が落ち着いたのを確認した渚は事情を確認した。


「――つーわけで、こいつが難癖つけてきたんだよ」

「お前の後輩だろ。ちゃんと指導しろよ」

「そんな、私は――」


 あくまで自分達は潔白であり、被害者なのだと宣言する二人組。

 対して久美は、明確な証拠がないことから発する言葉に勢いがない。


 両者の話を聞いた渚は思案顔で尋ねた。


「ぶつかったのは事実なのよね?」

「ん、あぁ。それは悪いと思ってるよ」

「そして、窓ガラスが割れた方から走ってきた」

「そうだよ」


 一つずつ、確認するように質問を重ねていく。

 その隣で吉井先生は黙って話を聞いていた。


「あんた達が犯人じゃないなら、犯人は見てないの? 割れたすぐ後に現場から走ってきたことになるけど」

「あー、それは――」

「走ってたから見てねーよ」

「お、おう。そーだよ」

「そう……」


 二人組のうちの一人が一瞬どもったが、もう一人が間髪居れず答える。その言葉にのっかって、どもった方が首を上下させた。

 怪しい様子を見せる二人を見て、渚は手元に何かを取りだした。


「これ、あんた達のゴムボール?」


 それは中庭で見つけたゴムボール。

 小さなガラスの破片が突き刺さったままであり、ガラスを割ったのがそれであることを如実に物語っている。


「あー……知らねーな」


 言い淀みながらも、否定する二人の男子。


「昨日、同じの持ってたわよね?」

「だから何だよ」

「これ、ガラスの破片がくい込んでてね。たぶんこれがぶつかってガラスが割れたんだと思う」

「たまたま同じのを持ってたやつがいたんだな」

「そいつの持ち主が犯人だな」


 あくまでシラを切る二人。

 渚は小さく嘆息すると、吉井先生を見た。

 その視線を受けて、先生が一歩前に出る。


「実はな、犯人を見たって生徒がいてな……お前らがやったって言っててな」


 その言葉に、その場に居た全員が目を丸くする。


「嘘だろ!?」

「あの場には他に誰も居なかっ――」

「バカっ、お前!」

「あ――」


 一人が口を滑らした。もう一人が慌てて止めるも後の祭りであった。

 吉井先生の顔を見た二人は諦めたのか、肩をがっくりと落とした。

 目撃者が居て、発言でもボロを出した。誤魔化しようがないと判断したのだろう。

 渚は先生に何かを言おうとして、しかし口を開けたところで静止した。

 そのまま二人組へ向き直る。


「全く……つまりあんたらが犯人ってことでいいのね」

「くそっ」

「誰だよ、チクったやつ」

「先生が教える訳ないでしょ……とりあえず竹下先生の所行くわよ」


 二人組の言い草に呆れ声を出す渚。

 学年主任へと報告させるべく、項垂れた二人を連れだって校舎へと向かった。


 三人の後からついて行こうとした久美だったが、ふと気づいて吉井先生へと振り返った。


「先生は行かないんですか?」

「……私はちょっと用があるから、先に行っといてくれ」

「はぁ、分かりました」


 首を傾げながらも三人の後をついていく久美。

 その後ろ姿を見送りながら、吉井先生は呟いた。


「――やれやれ、これで僕の役割はこなせたかな? 全く、人遣いが荒いよ」



「――ふーん。そういうことがあったんだ」

「えぇ、そこから先生方に事情を説明したりして、大変だったわ」


 夕方。ファミレスの一角でオレンジジュースを飲みながら、感想を溢す藤堂さん。

 今日は皆で話し合いをする日だったんだけど、藤堂さんが待ち合わせ時間に大きく遅れてきたんだよね。

 疲れた様子だったので、少し休憩しながら話を聞いていたんだけど、なかなか大変な一日を過ごしてたみたいだ。


 何でも話に出てきた野球部の二人組は毎日、昼休みになると中庭に出てゴムボールでキャッチボールをしてたらしい。で、今日も中庭に向かってたらしいんだけど、何故か向かう途中でも投げ合いを始めちゃって、それで窓にぶつけちゃったんだとか。

 廊下で遊ぶのは危ないって分かるだろうに、何でやっちゃうんだろうね。

 何か昔――前世でも、そういう子は居た気がする。


「お疲れ様。色々大変だね」


 労いの言葉をかけると、藤堂さんは「全くだわ」と呟いた。

 そして、優太へと顔を向けた


「オクタ、ありがとう」

「どういたしまして」


 藤堂さんが優太にお礼を伝えた理由。それは優太が吉井先生に扮して、藤堂さんをアシストしたことだ。

 中庭でゴムボールを見つけた藤堂さんは、その時点で犯人が野球部の二人だと考えたらしい。でも、そのままゴムボールを突きつけても彼らはまず認めない。だからオクタに同席してもらって、彼らが嘘をついてるかどうか判断しようとしたみたいだ。

 認識阻害の魔法って、実在する人物の姿に化けることもできるんだね。便利で羨ましいや。


「助かったには助かったけど、あれはどういうこと?」

「あれってのは何のことかな?」

「何って、犯人を見た生徒がいるって言ったことよ。あれって、噓なんじゃないの?」

「あぁ、それはそうだね」


 怒ったような様子を見せる藤堂さんに首を傾げる。

 話を聞くと、どうも優太は二人をとっちめるために、目撃者が居たと噓をついたらしい。

 藤堂さんは、噓をついてるかどうか判別することだけ、優太にお願いしてたのかな?

 それで、優太が機転を効かせて嘘をついたと。


「目には目をってやつだよ。彼らが嘘をついて言い逃れしようとした。だから僕も噓をついた」

「でも、噓は良くないわ」

「じゃあ、仮に僕が嘘を見破るだけに留めたとして、その後彼らを犯人として捕まえることはできたの?」

「う……それは、そうだけど」


 優太の言うことはもっともだ。

 噓かどうか判別しただけじゃ、その二人を追い詰めることはできなかっただろうね。


「それでも……こっちまで嘘をつくのは良くないと思う」


 藤堂さんとしては噓をつくこと自体が嫌なんだろうね。だから優太のやったことが素直に受け入れられない。でも、そのおかげで助かったってのも理解してる。

 複雑な気持ちなのかな?

 

 凄く、真っ直ぐな子だ。その分、損しちゃわないか心配だね。


 ともかく、今は答えの出にくい話題を続ける必要もないよね。話題を逸らしとこうかな。


「後輩の子もお手柄だったね。先んじて、犯人の目星をつけてたわけだし」

「あぁ、久美ちゃんのことね。……目星をつけてたのは偉いけど、あの子に対してもあの後、しっかり叱ったわよ」

「え? そうなの?」


 どうやら、証拠もないのに勢いで突っ込んで、余計なトラブルを招きそうになったからってのが理由らしい。

 ……うん、まぁ正論だね。

 どんまい久美さん。


 顔も知らない子に向かって、僕は内心で合掌した。

ここまでで幕間は終了となります。

次回からは二章に入ってきます。


二章の投稿は明日から始める予定です。

ここからは毎日更新ではなく、週二回ほどのペースでの更新になりますが、

引き続き読んでいただけると嬉しいです。

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