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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
二章

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1 求められていることが良く分からないや

「――それじゃあ、証明書を……」


 対面に座ったスーツを着たおじさんの説明を聞きながら、僕は出されたジュースに口をつけた。


 僕達は今、賃貸会社へとやってきている。


 横にはオクタ――もとい優太が座っている。

 認識阻害の魔法とやらで、対面のおじさんからは普通の人間に見えてるはずだ。


 視線を戻して、目の前のテーブルに置かれた資料を見る。


 そこに書かれてるのは物件の情報。六畳一間と小さいけど、風呂、トイレが別でついてる。

 内見した感じ、暮らしていくには最低限の部屋って感じだった。

 その分賃料は安い。ホテル暮らしを考えると断然安い。


 僕達が賃貸会社にやってきた理由は、もちろん部屋を借りるためだ。


 僕はこの街に来てから、ずっとホテル暮らしだった。

 元々は宝玉を探す間だけ滞在するつもりだったから、それで問題は無かった。だけど、下村さん達の平和維持活動に協力することになったので、まだ暫くはこの街にいることになったのだ。


 更に優太も僕と一緒に暮らしたいと望んでいる。

 優太は元々、下村さんと一緒に暮らしてた。

 けど、僕が優太の元兄だってことが分かってからは、僕にべったりくっつくようになった。

 まぁ、僕を復活させようとして宝玉を集めてたぐらいだしね。


 そんな優太と二人で暮らすなら、今のホテル暮らしのままはやっぱり良くない。

 そこでホテルを出て部屋を借りることにしたんだ。


 ただ、当然見た目子供な僕だけでは部屋を借りれない。

 だから優太に手伝ってもらってる。


 優太は自分たちの見た目を別人に見せる認識阻害の魔法が使えるので、それで大人のフリをして部屋を借りようとしてるのだ。

 優太の魔法は本当に便利だ。

 ただ不老(老いず)不死(死なず)の僕なんかとは全然違うや。

 魔法って、いったいどんな原理なんだろうね。


「じゃあ、これで。受渡の方は――」


 ジュースを飲みながら、そんなことを考えてる内に契約がまとまってた。

 しまった、優太に完全に任せちゃってた。

 大人だけで会話する感じになってたから、僕が入る余地があまりなかったとはいえ申し訳ないや。


 色々な書類をもらった後、二人で外に出る。

 店の前まで見送ってくれた店員さんにお礼を言って、店を離れる。

 少し歩いたところで、僕は優太へと声をかけた。


「お疲れ、ありがとうね。ごめんね、全部任せちゃって」

「全然大丈夫だよ。任せて!」


 優太が元気よく返してくれる。

 その仕草に、つい口元が緩んでしまう。


「ねぇ、優太。優太の魔法って、ちっちゃい時の実験のせいで使えるようになったんだよね?」

「そうだよ」

「どんな感じなの?」

「どんなって何が?」

「いや、どういう風に使うのかなって思って」

「あぁ、そう言うことね……うーん。何か、こう願うとうまくいく感じかな?」


 首を捻りながらも、優太は頑張って説明してくれた。


 そもそも最初に魔法が使えるようになった時。

 それは、昔僕達が暮らしてた施設が爆発して自由になった後のことらしい。

 外に出た優太は、見た目が今の姿に変わってしまってた。

 施設からは逃げ出せたけど、その先で受けるのは化け物扱いだ。

 その扱いが嫌で、やめてほしいって願ったら、何故か化け物扱いされなくなった。

 どうしてかと考えている時に、ふと鏡だったか水面だったかに映った姿を見ると、人間の姿が映っていたのだとか。

 それが認識阻害の魔法だと理解するのには時間がかかったみたいだけど、とにかくその魔法のおかげで優太は人の営みの中へ溶け込むことができた。


 そこから少しずつ何ができるかを調べていったらしい。

 人の嘘を見抜けるってのもその中で知ったみたいだ。


 僕と同じく二百年あったからね。調べる時間は沢山あっただろうね。


 僕は優太の頭を撫でた。


「頑張ったんだね」

「うん!」


 嬉しそうに頷く優太。本当に良かったよ。

 一人で生きるのは寂しかったろうし、何より大変だったろうに、本当によく頑張ったね。


 優太に関しては良かったけど……。


「ねぇ優太。施設を抜け出す時に、他の皆がどうなったか知ってる?」

「それが……僕も分からないんだ」


 爆発があった時、優太も僕と同じく実験中だったらしく、皆とは別の場所にいたみたいだ。

 瓦礫の中から抜け出した後、皆を探したけど見つからなかったらしい。


 施設で一緒に育った他の兄弟達がどうなったかについては優太も知らないか……。

 どうなったのかな……無事に施設から逃げて、残りの人生を楽しく過ごせてたら良いんだけど。


「どうしたの?」

「ううん、何でもない」


 優太が尋ねてきたので、首を横に振ってそう答える。

 そのまま話題を変えるべく、もう一つ気になってることについて尋ねた。


「下村さんや藤堂さんとしてる、契約ってのも優太の魔法の一つなんだよね?」


 契約の魔法は、優太が持つ力を他者に付与? できるらしい。

 対価として、付与された人は優太との契約時の決まり事を履行しないといけない。

 彼女達は、『平和を守る活動に協力してもらう』という決まり事を対価として、あの力を付与してもらったのだとか。


「優太が持つ力を付与してるだけなのに、衣装が変わるし、使える魔法も限定されてるんだね」

「その辺は僕も良く分からないや。魔法自体は想いや願いを力に変えるものだから、その人の想い、願いを具現化したものになるみたい」


 ふーん。そう言えば認識阻害の魔法も、優太が願ったら発動したって言ってたもんね。

 魔法のベースは、その人の想いや願いなんだね。

 下村さんはペイントローラー、藤堂さんはハンマーを使った魔法だよね。

 どんな想いや願いが具現化したんだろ?

 

 ……まあ何でもいいか。


「優太との約束事を守らないとどうなるの?」

「完全に破られたことはないから分からないけど……結構酷い目に合うと思う」


 何でも昔、契約を破ろうとした人がいたらしく、その人は全身の穴から血が噴き出たのだとか。


 何それ怖い。

 破ろうとしただけで血が噴き出るんだとしたら、完全に破ったら……うん、想像するのはやめとこう。

 ていうか、そんな契約をあの二人としてるの??


「最初にちゃんと、そのことは伝えたんだけどね。二人とも軽く頷いちゃって」


 まさかの、知った上で選択してた。

 最近の若い子は向こう見ずなのかな?

 でも契約したせいで、いつまでも命の危機を背負ったままでいるなんて辛くないかな。


「本当に辞めたくなったら、契約を破棄するから大丈夫だよ」


 あ、優太からは破棄できるんだ。

 さすがに優太の力なだけあって、優太に有利な感じだね。


 なら、少しは安心かな。


 ……それにしても、優太は他人への気遣いが少し薄いのかな?

 まぁ育った環境が環境だから仕方ないのかもしれないけど、これからはもう少し道徳心を身に付けていってもらわないといけないね。


 それにしても、魔法かぁ。


「ちなみにだけど、それって僕も契約できるんだよね?」

「え? うん、できるけど……お姉ちゃんが契約してもあまり意味ないんじゃないかな」


 え、どういうこと?


「さっきも言ったけど魔法って、その人の想いや願いを具現化したものなの」

「うん、そう聞いたね」

「でも、お姉ちゃんからは具現化できるだけの想いや願いの強さが感じられないんだ」

「……魔法を発動させるには、ただ想いや願いがあるだけじゃダメってこと?」

「うん。だからお姉ちゃんと契約しても、たぶんお姉ちゃんは魔法を使えない。ただ、僕との約束を守らなきゃいけなくなるだけだね」


 ……地味にショックなこと言われたね。


 魔法を発動させるには、『強い』想いや願いがいるのか。

 その後優太が語ったところによると、魔法が発動できるだけの『強い』想いや願いを持ってる人は少ないらしい。

 だから、下村さんや藤堂さんは貴重なんだとか。


 ……そっかぁ。


「ごめんね」

「いや、仕方ないよ。朝陽さん達が身体張ってるから、僕もそうした方が良いかなって思ったんだけどね」

「お姉ちゃんは既に身体張ってると思うけど」


 いや、それ文字通りの意味じゃん。

 僕も戦えた方が、二人の負担が減って良いよねってことだよ。


「んー、それは気にしないで良いと思うけどな」

「えー、そうかな」

「じゃあ、二人に聞いてみる?」

「うん、そうしようか」


 話の流れで、下村さん達に聞くことになった。

 下村さん達も僕が戦えた方が良いと思うけどなぁ。



「――え? 葉月ちゃんが戦えた方が良いかって?」

「必要なくない?」


 そんな訳で、二人と会うタイミングで尋ねてみたところ、否定的な意見が返ってきた。

 おかしいな。想定と違うんだけど。


「今のところ私達だけでも特に困ってないし」

「今の貴女でも十分役に立ってるわよ」


 二人の返事に首を傾げる。

 僕は戦力としては求められていないってことかな?

 いや、戦って欲しいって返されても結局、魔法は使えないから困るんだけど。

 でもさ。そこまで否定されると、複雑な気持ちになるよね。


「葉月ちゃんがもう少し大きくなったら、別の形でお姉ちゃん達を助けてくれるかな?」


 下村さんが僕の頭を撫でながらそんなことを言ってきた。

 大人が子供を諭すように言ってるけど、僕の方が大人だよ?


「いや、僕の方が年寄りなんだけど」

「あはは、ごめんごめん。葉月ちゃん、見た目があれだから、ついね」


 あれって何かな?

 全く、見た目じゃなくて本質を見てほしいよね。本質をさ。


「年寄りなんだったら、むしろこれ以上無理な運動してちゃダメでしょ」


 うっ、藤堂さんは痛いところを突いてくるね。

 確かに実年齢を考えると、僕はおばあちゃんだ。歳だけ聞くと、運動するなってなっちゃうね。

 でも二百歳は超えてても、身体は子供と一緒だから全然動けるんだけど。


「子供と一緒の身体なら、やっぱりもう少し大きくならないとね」


 ……どうしよう、論破できない。


 二人に言葉で勝つことができず、黙り込んだところで肩に手を置かれた。

 振り向くと、オクタが首を横に振ってる。

 諦めろって? ……むぅ。


「――それで、次の目標は決まったの?」


 そうこうしているうちに、藤堂さんに話題を変えられた。

 ……まぁ、いいか。求められても、どっちみち魔法は使えないわけだし。

 やっきになる必要はないよね。

 気にしてないもんね。


 少し拗ねながらも僕は、目の前で行われてるロボットの話へと加わっていった。

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