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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
一章

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幕間1 テストの後の解放感っていいよね

 市立長山第二中学校は、市内に五つある中学校の内の一つである。

 鉄筋コンクリートで造られた校舎。その、とある教室に下村朝陽は居た。

 ノートを開きながら必死な表情で、問題集を解く朝陽。

 今まさに勉強に励んでいる彼女の姿勢に対し、その周りで雑談している三人の友達は、のほほんとした雰囲気を漂わせていた。


「ね。りんの新曲、聞いた?」

「まーかの好きな歌手だっけ?」

「うちはまだ聞いてないわ」

「そうそう。めっちゃ良いから聞いてみてよ」


 スマホを弄りながら、和気藹々とお喋りをする三人。そこに朝陽が加わることはなく、目の前の問題に没頭している。


「ね、ね。中間テスト終わったら、遊びにいこーよ」

「おけ」

「いいよー」

「二人はおっけーね。ね、あさひはいける?」


 質問を振られた朝陽が、そこで初めて顔を上げた。

 しかし勉強に集中していた彼女は、何を問われたのか分からない表情をしていた。


「何?」

「テスト終わったら、遊び行こって」

「あ、うん。いくいく。いつ行くの?」


 即決からの、日時の確認。

 その反応から、普段の朝陽の付き合いの良さがうかがえる。


「よっし。ね、来週末は?」

「あー、日曜ならいける!」

「日曜はうちが無理だわ。その次の週は?」

「いけるよ!」


 わちゃわちゃと話し合いは進み、中間テストが終わった翌週末に遊びに行くことが決まる。


「楽しみだね!」

「どこ行くか、また決めよー」


 テスト後に、遊ぶ約束を取り決めたことでやる気を出す面々。

 その様子を見ていた朝陽が考え込む姿勢を見せた。


「どしたのあさひ?」

「ん、ちょっとね……あっ、勉強しないと!」


 その姿に疑問を感じた友達であったが、続く朝陽のあたふたした姿に笑いを溢すのであった。



『――もしもし、葉月ちゃん?』

「……ふぁい?」


 電話先からの言葉に目を擦りながら答える。

 若干ぼーっとする頭を振って、無理やり覚醒させる。

 その間、電話相手は沈黙していた。


「どうしたの?」


 仕方ないので、自分から用件を尋ねる。ややあって、下村さんが尋ねてきた。


『……もしかして寝てた?』

「うん、お昼寝してた」


 ホテルの部屋の時計を見る。17時……少し寝すぎたかなぁ。

 まあ、それでも夜になったら寝られるんだけどね。歳をとったら寝れなくなるって聞いたけど、この身体だとそんなことないや。


『起こしてごめんね』

「ううん、大丈夫。それでどうしたの?」

『葉月ちゃん、来週の土曜って空いてる?』

「空いてるよ」

『やった! そしたらさ――』


 ――で、やってきた土曜日。僕は駅前にお出かけしていた。

 一人じゃない。下村さん、優太の三人だ。藤堂さんにも声はかけたらしいけど、彼女は塾があるとのことで今回は不参加だ。

 最近の子は勉強がいっぱいで大変だね。

 下村さんも昨日まではテストだったらしい。テスト期間中に僕を誘ってきたわけだけど、テストを頑張るご褒美が欲しかったんだとか。

 テストの解放感から遊びたいって気持ちは分かるし、今日は大人しく付き合おうと思う。

 え? 来週に学校の友達とも遊ぶの? じゃあ、別に僕は要らなくない?

 あ、はい。付き合います。

 ちなみにテストの出来はどうだったの?

 あ、目を逸らされちゃった。


 ニコニコな下村さんに引っ張られて向かったのは服屋さんだ。

 もうすぐ冬だしね。新しい服でも買うのかな?

 そう思ってたんだけど――。


「かわいー。ね、ね。次こっち着てみてよ!」


 何故か今、僕が着せ替え人形にされてる。

 この街にやってきてからずっと似たようなシャツとズボンを着てたんだけど、下村さんはそれが気に入らなかったみたいだ。

 服なんて着れれば何でもいいと思うんだけどなぁ。

 まぁ、それで下村さんが楽しいならいいか。何か優太もノリノリで服を選んでるのが気になるけど。


 散々楽しんだ後はカフェに入って休憩した。

 結局、服は幾つか買うことになった。散々試着した手前、買わない訳にはいかなかったんだ。

 ガーリーって言うのかな? あとはロマンティック系とかいうのも買ったりした。

 良く分からないけど、女の子のファッションって色々あるんだね。


 服は下村さんが買おうとしたけど、流石に断った。子供にお金を出させる老人なんて居ないからね。

 ……ちょっと、金策増やそ。


「葉月ちゃんって見た目そんなだけど、二百歳超えてるんだよね?」


 コーラを飲みながら下村さんが尋ねてきた。


「そうだね」

「ね、ね。そういうの、合法ロリって言うんだよね?」

「……どこでそんな言葉学んだの」


 下村さんが知ってそうな言葉じゃない。この子の周りの環境が気になるぞ。


「んーとね、そういうの詳しい友達がいるの」


 えぇ……その友達の将来が不安だなぁ。

 ため息を吐きながら、少し迷って口に出す。


「一般的じゃないとは思うのじゃが……確かに合法ロリとは言うのじゃ」

「葉月ちゃん、何それ!?」


 吹き出す下村さん。


「合法ロリって、何かこういう感じの口調で喋ったりするイメージなのじゃ」


 のじゃ口調って言うのかな? 僕も詳しくはないけど。

 僕の見た目で、のじゃのじゃ言うギャップが下村さんのツボに刺さったみたいで、腹を抱えて笑ってる。

 ……まあ、楽しんでくれてるならいっか。


「ね、葉月ちゃんは合法ロリとしてさ。オクタも二百歳超えてるよね?? 合法ショタって言葉もあるのかな?」


 ひとしきり笑った後、下村さんがそんなことを尋ねてきて、僕は優太と顔を見合わせた。


「それは……知らないかな」

「うん、考えたこともなかったしね」


 別にそういう言葉に詳しい訳じゃないし、あるかどうかすら考えたことがなかった。

 三人で悩んでも仕方がないので、下村さんがスマホで調べてくれたのだけど、合法ショタという言葉はあるみたいだ。

 そして、のじゃ口調は合法ロリというよりロリババアに多い喋り方らしい。

 何それ、変な言葉多すぎない?


「へー、何か奥が深いね」

「まあ、女の子に対する言葉あるなら、男の子に対する言葉もあっておかしくないよね」

「合法ショタは喋り方に特徴ってないのかなぁ」


 下村さんの言葉に、また優太と顔を見合わせる。

 優太は少し考える仕草を見せると、ひとつ咳払いをした。


「……まろはオクタと申す」


 今度は僕も吹き出した。それは何か違う気がするよ、優太。


 そこから皆で合法ショタの喋り方について色々と話し合ったのだった。



「――で結局こんな感じになったのね」


 呆れ声の藤堂さんに向かって頷く。


「そうじゃ、どちらも同じ感じになるんじゃないかって結論じゃな」


 先日、下村さん、優太とお出かけしたときに話し合った合法ロリ――正確にはロリババアだけど――と合法ショタ――こっちも正確にはショタジジイらしい――の話し言葉。

 僕らの中で結論が出たので、せっかくだから藤堂さんにも披露しようと思ったのだ。


「というわけで、今日はこの話し方なのじゃ」

「僕も同じくなのじゃ。似合ってると嬉しいのじゃが、どうじゃ?」


 優太と並んで話す。


「見た目と言動が合わな過ぎて、脳がバグりそうだわ」


 言いながら、藤堂さんが眉間を押えた。

 まあ、そりゃそうだよね。

 僕に至っては、せっかくなのでお出かけの時に買った服を着てるから、可愛らしい服着た女の子が年寄りくさい言動してることになるわけで。

 藤堂さんの脳がバグってもおかしくないね。


「あぁ、そうだ。その服似合ってるわよ」

「……ありがとう」


 ――翌日。


「今日は口調変えないの?」

「んー、飽きたから」

「そう」


 ちなみに翌日には飽きたので、優太ともども口調は元に戻した。

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