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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴


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16 急なやさしさに触れると戸惑うことってあるよね

 僕は廃病院の地下施設にやってきていた。


『いやー、嬢ちゃんがあんま来てくれんから寂しいわー』

「僕も色々と忙しいからね」


 いつもの如く絡んでくるAI。

 面倒くさいなと思いつつ、適当に返す。


『ひえっ、マジか』

「どうしたの?」


 急に驚いた声をあげてきたので、顔を上げた。

 何かあったのかな?


『いや、嬢ちゃんがまともに返事してくれたから。驚いたんよ』

「そんな邪険に扱ってたったけ?」

『せやでっ。いつもの嬢ちゃんなら『知らないよ。ちょっと黙っててくれる?』ぐらいのこと言ってくるんちゃうかな』

「……ふーん。そういう風に返事してほしいんだ」

『あ、いや冗談やって。ごめんやん……ちょっ、返事してーなー』


 単に僕の反応に驚いただけか。

 ていうか、人の声真似しないでくれるかな。それ合成音声?

 まあ、何でもいいや。


「後で話すから、今は黙っててね」

『必要な時だけ声をかけてくるなんて、DV彼女みたいやな』

「ふざけるんなら帰るよ」

『いや、もう冗談やん。本気にせんといてーなー』


 今度は猫なで声で媚びてきた。

 状況に合わせて声色変えるなんて、芸細かすぎでしょ。

 もういいや、面倒くさい。僕はため息を吐きながら、広げてた本に目を落とした。


『何を見てるん?』

「賃貸情報誌だよ」


 言葉にした通り、本にはこの街の賃貸物件の情報が載ってる。


「何か、隠れ家にできるとこないかなって」

『隠れ家?』


 僕はこの前、家に送る送らないで下村さんたちと揉めたことを伝えた。

 次の宝玉も一緒に取りに行くことになってしまったので、次回も同じような展開になる気がする。

 だから、次同じ話が出た時に誤魔化すための家を探したいのだ。


『嬢ちゃんの家教えたらいかんの?』


 それができたらいいけど、残念ながら僕はホテル住まいだ。

 そしてホテル住まいだと知られたら、何故ホテルなのか。家族は居ないのか。とか絶対追求される。

 面倒くさいことになるので、それは絶対に避けたい。


 ……ってことが言えたら早いけど、AIにも僕の家事情を教えるつもりはない。

 別にAIは僕の味方ではないからね。情報を伝える必要もないでしょ。


「ちょっとね。諸々の理由で見せたくないんだ」

『ふーん、秘密主義なんやね。でも嬢ちゃん一人じゃ部屋は借りれないんちゃう?』

「そこなんだよねー」


 僕は見た目が子供だとかいう話以前に、そもそも戸籍が無い。いや、正確には戸籍があるのかどうか分からない。

 仮にあったとしても二百年も経ってたら死亡扱いされてるだろう。つまり身分証明ができないのだ。

 加えて、僕には定期収入が無い。手品を使ってお金は稼いでいるけど、定職についてるわけでもなく、身分証明も無い僕が家を借りるのは無理だ。


 ちなみにホテルについては、身元確認がしっかりしてるところと、そうでない所がある。

 見た目子供で、かつ戸籍もない僕一人でも、探せば案外泊まれる所は見つかるのだ。


「何かいい方法は無いかなー」


 結局、良い物件があっても僕には借りることはできない。

 僕は賃貸誌を放り出して、背もたれにもたれかかった。


『嬢ちゃんの心配がよー分からんけど、それやったら空き家を使えばええんとちゃう?』

「空き家?」

『そう、空き家。空き家を嬢ちゃんの家ってことにするねん。家の中にはあげられへんけど、軒先までならいけるやろ。空き家やったら勝手に敷地内に入ってもバレへんし』

「いや。空き家だとしても、それって不法侵入になるじゃん」

「嬢ちゃん、何歳なん? たぶん、犯罪にならず触法行為で済むんちゃうかな」


 しょくほう? 

 よく分からないけど、たぶんAIは僕が子供であることを前提に話してるんだと思う。

 でも実際、僕は子供じゃないから不法侵入は完全にアウトだ。

 いや、僕の見た目は完全に子供だし捕まっても誤魔化せるのかな? 身分証明も無いわけだし。


 うーん、それでも犯罪を犯すのは気が引けるけど……。


『とりあえず調べるだけ調べてみてもええんちゃうかな』


 AIのそんな言葉と共にモニターに何か映った。

 これは……この街の地図?


『光っとる場所あるやろ?』


 確かに、地図上には幾つか光点がある。


『そこが空き家やで』


 えっ?

 空き家示してくれてるの? 仕事早すぎない?


「良く空き家なんて分かるね」

『うちのネットワークは死んどらんからね。情報を集めてきたんよ』


 凄いな……さすがAI。

 それはそうと空き家かー。うーん、さっきAIにも言ったけど不法侵入になるしなー。

 まあ……家の前を利用するならありなのかな?

 空き家の敷地に入らずに、家の前まで送ってもらって、そこで別れる。

 皆を見送ってから門に中に入る振りして、ホテルに戻る。

 ……うん、それなら不法侵入にもならないし彼女達も誤魔化せるかも。


 そうと決まれば、早速都合の良さそうな家を探しにいかないとね!


 僕は映しだされた空き家の位置をメモに取ると、椅子を飛び下りた。


『え? もう行ってまうん? おーい……』




 ――それから僕は、AIの教えてくれた空き家を見て回った。


 と言っても良いところはなかなか無い。

 まず、門扉があるとこは基本的に扉に鍵がかかってる。最悪、門を開けて中に入る振りまですることを考えると、鍵がかかってないところを見つけないといけない。

 そして、空き家になって長い所は庭が荒れてたり、家そのものにボロがきてたりする。

 送ってもらうとしたら夜だから、あまり目立たないとはいえ、明らかに人が住んでなさそうな家だと怪しまれてしまう。


 何軒か回って、ようやく良さそうなところを見つけた。


 二十坪ぐらいの一軒家。柵と門で敷地が区切られてるけど、その門に鍵がかかっていない。

 空き家になってから間もないのか、外壁も荒れてない。

 家の周囲、敷地外で見える範囲の雑草を抜いてしまえば空き家には見えないはずだ。


 うん。ここなら、カモフラージュはバッチリなはずだ。

 これで次また下村さんに送るって言われても大丈夫だね!

 安心して次、また彼女達に会えるや。



「――本当に分かってる?」

「……ごめん」


 何か、下村さんからめっちゃ怒られてるんだけど。


 下村さん達の学校の授業が終わった後、再び下村さんの家に集合し作戦会議をすることになった。

 そして集合した彼女の家で、何故か僕は今、仁王立ちで怒る下村さんの前で正座しながら説教を聞いている。


「夜道は本当に危ないんだからね! ああいう時は一人で帰ったら絶対ダメだよ!」

「はい……反省してます」


 どうやら一人で帰ったのがお気に召さなかったみたいだ。


 同じ部屋にはオクタと藤堂さんもいるけど、誰も下村さんを止めようとしない。

 僕が叱られるのはどうやら全員の既定路線らしい。

 何でこんなに怒られてるのかなぁ。


 二百歳を超える大人が中学生に説教を食らうなんて、新鮮だよ。

 まあ、僕の見た目は下村さんよりも子供っぽいから、周りからの見え方には違和感は無いんだろうけど。


「ちゃんと聞いてるの?」

「はい、聞いてます」


 おかしいな。別のことを考えてるって、何故かバレたみたいだ。

 下村さんの勘の鋭さに戦慄しながら、殊勝な振りをして頷いてみせる。


 うーん、それにしても一人で帰ったことが何でそんなに駄目だったんだろう。

 下村さんの言葉を聞いてる限りだと、夜遅くだったことが良くなかったみたいだけど。

 夜道を一人で歩かせたくなくて、僕がそれをしたから怒る。

 言いつけを守らなかったから、叱ってるって訳ではないよね。


「何かあってからじゃ遅いんだからね」


 何かあってから……あぁ、なるほど。

 この子は僕が一人で夜道を歩くことで、何か事件に巻き込まれないかを心配してくれてるんだ。

 心配してるのに、肝心の僕自身が全く自分を省みないから、怒ってるんだね。


「次は絶対送るから、分かった??」

「はい……」


 理由が分かって、それが理不尽なんかじゃないと分かったので、今度は本当に殊勝に頷いた。


 心配されるなんて久しぶりだ。何かむず痒いね。

 でもなぁ……。


「――終わったかい?」


 頃合いを見たのか、オクタが横から声をかけてきた。


「じゃあ、次の宝玉の話をしよう。今、僕らは四個の宝玉を持ってる。で、葉月さんの仲間が一個。合計五個の宝玉を集めてるわけだ――」


 そのままオクタが次の宝玉がどこにあるかを語り、いつ行くか。の話し合いに移っていく。

 それを横で聞きながらも、僕の心は別にところにあった。


「――あんた、まだ気にしてるの?」


 ふと頭に手を乗せられながら、そんな言葉を言われた。

 顔を上げると藤堂さんが僕を見ていた。


「皆、あなたが心配なのよ」

「うん……分かってる」


 大丈夫だと答えると、頭をわしわしと撫でられた。

 話に集中してなかった僕を気にかけてくれたのかな。

 この子もなんだかんだ良い子だね。


 皆が心配してくれてるってのは分かってる。

 この子達が良い子だってのも分かった。


 でも……。


 考えながら、彼女達の顔を見る。

 明るい表情で、良く知りもしない僕なんかを気に掛けてくる優しい子達。


 ……でも僕が不老不死って分かったら、君たちも態度を変えるんでしょ?

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