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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴


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11 話し合いは続くよどこまでも

 下村さんの家で話し合いを始めて数十分。

 皆から質問攻めを喰らってるなう。


「ねぇ。葉月ちゃんは……魔法が使える訳ではないんだよね?」


 オクタが黙っている間に、下村さんが質問してきた。

 特に困るような内容でもないので、僕は素直に頷いた。


「うん、そうだね」

「じゃあさ。どうやって怪我や火傷を治したの?」

「どうやって、はごめん。僕にも良く分かってないんだ」


 これは事実だ。僕の身体は不老不死になってるわけだけど、どういう仕組みで不労(老いず)不死(死なず)なのかは知らないし、分からない。どうやって治したのかと聞かれても、勝手に治る、としか言えないのだ。


 僕の答えを聞いて下村さんがオクタを見る。オクタは下村さんに応えるように頷いた。

 あ、これオクタには僕が嘘をついているのかどうかが分かってるっぽい。魔法でそういうのがあるのかもしれない。

 これまでの回答で僕、嘘ついたっけ?


「ねぇ。魔法が使えないなら、この前神社で消えたのはどうやったの?」


 これまでのやり取りを思い出そうとしてたら、今度は藤堂さんが尋ねてきた。

 神社ってことは、火の宝玉を手に入れた時のことだよね。

 てことは……最後の人体消失マジックのことか。


「あれは手品だよ」

「手品?」


 僕は懐から財布を取出した。そこから硬貨を抜き出して、皆に見せる。

 親指と人差し指で摘んで、表裏を見せつけることでタネは無い、ただの硬貨であることをアピールする。


 そうして皆の視線を集めたところで、軽く手を振りその場から硬貨を消した。


「消えた!?」

「えっ、すご!」

「……へぇ」


 僕はそこから手をくるくるさせて、硬貨がどこにも無いことをアピールする。

 それからもう一度手を振って、硬貨を再び出現させた。


「僕、手品が得意なんだよ」

「凄い凄い! ね。どうやってるの?」

「今やってるのはパームって技術の応用だよ」


 下村さんはとっても反応が良い。藤堂さんも言葉には出さないけど、真剣な顔で見てくれてる。

 こうまで反応してもらえると手品師冥利につきるね。


「てことは何? この前も同じような感じで消えたってこと?」

「そうだよ。タネについては教えられないけどね」


 教えられないと伝えると藤堂さんが微妙な顔をした。でもごめんね。

 手品師にとってタネは重要だ。広く知れ渡っているような手品ならともかく、特別な手品については相手が誰だろうと教えるわけにはいかない。


「ねぇ葉月ちゃん。他にはどういうのができるの??」

「え? えーと他のだと……」

「あさひ。今は大事な話してるんだから後にして」

「あ、そうだった。ごめんね」


 藤堂さんに(たしな)められて下村さんが謝る。

 僕は別に手品の話を続けてもいいんだけどね。まあ、そういうわけにもいかないか。

 藤堂さんが続けてオクタへと目を向けた。

 そういやオクタ、さっきから黙ったままだね。


「オクタ?」

「ん? あぁ、ごめんね。少し考え事をしててね。葉月さん、ありがとう。色々分かったよ……それでだ。今日話し合いたいのは、宝玉についてだ」


 あぁ、こっから話の本番か。中身が濃かったから、もう十分に話した気になってたけど、これまではお互いの紹介をしあってただけだもんね。


「君は宝玉を集めて何かをしたいんだよね?」

「うん、そうだね」

「でも僕達も宝玉が欲しい」

「平和な世界を作るために?」

「そうだね」


 つまりは、お互いに宝玉が欲しいというわけだ。

 想定通りだね。ここまでは、これまでのやり取りから分かってる共通認識だ。

 じゃあどうするかって話だけど、それについては僕も考えてきてる。

 

「僕としては今回は別に譲ってもいいよ」


 争うよりかは五十年待つ方がいい。この人達は悪いことに使う訳じゃないみたいだから、譲ることに対して躊躇することもないし。


「だから次は譲ってほしいな」

「次?」


 三人とも首を(かし)げてる。

 あれ、僕おかしいこと言ったかな?


「叶えた後のことだよ。平和のために使ったら、もう必要なくなるでしょ? そしたら、次は僕の願いを叶えたい」


 今度はキョトンとした顔をしてる。どうしたの?


「そう言えば願いって何回叶えられるの?」

「……さぁね。何でも願いが叶う、なんて空想じみた現象を起こせるのに、二回も三回も願いを叶えられるなんて考えたこともなかったよ」


 下村さんがオクタに尋ねるけど、オクタも首を横に振ってる。

 二人の言葉的に、一回ぽっきりしか願いは叶えられないって思ってたっぽいね。

 ていうかオクタが空想じみたって言うのは違和感あるね。僕からしたら君も、君の魔法とやらも空想じみてるよ。


「宝玉は自然の力を五十年溜めることで願いを叶えることができるらしいよ。だから、そっちがまず願いを叶えてもらって。で、五十年溜めなおして、次は僕が願いを叶えるってこと」

「五十年!?」

「待って、葉月ちゃん、そんなに待てるの? 五十年って凄く長いよ?」


 下村さんが目を丸くしながら聞いてくる。

 五十年がどれだけ長いかについては、僕の方が絶対詳しいけどね。

 五十年はそんなに長くないよ。ぼーっと過ごしたら、わりかしあっという間に過ぎるんじゃないかな。


「全然問題ないよ。僕は五十年待てるから」


 だから構わないって伝えたけど、下村さんも藤堂さんも微妙そうな顔をした。

 あまり信じてないのかな?


「聞きたいんだけど、その五十年ってのも胡散臭いやつから教えてもらったのかい?」

「そうだよ。……あぁ、信憑性が気になる?」


 確かに、いきなり五十年って言われても、この子達からしたら本当かどうか分からないよね。胡散臭いやつの情報って言われると、余計信じられないだろうし。

 うーん。とはいえ、胡散臭いやつが宝玉を造った集団の仲間なんて言って、そこからロボットを作ったやつらの仲間って気づかれても嫌だしなぁ。それ以外で信じてもらえるようなものもないし。

 噓にしろ本当にしろ、先に願いを譲るんだから受け入れて欲しいんだけど。

 そんな風に考えてると、オクタが首を横に振った。


「君の話は分かったよ。願いを先に譲ってもらえるなら助かる」


 あ、信じてくれるんだ。

 そういえばオクタは、嘘をついてるかどうか分かってるっぽいんだった。


「ねぇ。それなら、あなたが持っていった宝玉はどうするの?」

「あぁ、それも渡すよ。今は持ってないから、今度持ってくるね」

「待って。もしかして葉月ちゃんが持っていった宝玉って、今は胡散臭いやつが持ってるってこと?」

「うん? まあそうなるかな」


 廃病院の地下施設。そこのとある部屋に宝玉は隠してある。あの施設の汚れ具合からして相当長い間、誰も訪れてないことは分かってるし、AIが宝玉に手を出すとも思えない。

 だから隠し場所としては、結構安全な場所じゃないかなって思ってるんだよね。

 そして、あの施設に置いてある以上はAIが持ってるって言っても差し支えないと思う。


「大丈夫かな……ねぇ、オクタ」

「うん、そうだね」


 下村さんとオクタが、何か頷きあってる。

 どうしたのかな?


「なら、後でいいよ」

「後で?」

「うん、後で。君が持ってるのを今貰うとすると、色々と大変そうだ。先に他を揃えてから貰うよ」


 色々大変ってなんだろう。特に大変なことなんて無いと思うんだけど……まぁ、いいか。

 この子達が後でいいって言ってるんだから、後にしよう。


「分かった。じゃあ折を見て渡すようにするよ」


 てことは、これで宝玉についての話し合いも終わりだね。

 いやぁ、平和に終わって良かった良かった。

 後は向こうに任せちゃえばいいね。


 それじゃあ、そろそろ帰ろうかな? なんて考えてると、最後に下村さんが爆弾発言をかましてきた。


「ねぇ、葉月ちゃん。提案なんだけど、一緒に宝玉集めない?」

「……一緒に?」


 えぇ……それはちょっとなぁ。


「そ! 葉月ちゃんも色々宝玉について詳しいみたいだしさ。私達に教えてよ!」

「一緒に行動してたらさっ。全部の宝玉を集めた後、葉月ちゃんが持ってったのをもらう時にも直ぐに相談できるし」

「仲間も居ないなら、私達と一緒に行動しても大丈夫だよね?」

「それとも、宝玉のことを教えてくれた胡散臭いやつと行動してるから無理とか?」


 畳み掛けるように下村さんが言ってくる。

 うーん、僕としてはこの子達とはできるだけ関わりたくないんだよなぁ。


 横目で見ると、オクタは頷いてるし藤堂さんも黙ったまま何も言わない。

 下村さんの暴走って感じじゃないのか。元から僕のことを誘うつもりだったのかな……。


「でもなぁ……」

「じゃあ一回お試しでさ! 一緒に宝玉を取りに行こーよ。ね?」


 あまりにも無垢な誘いに押し返せずにいると、そんな提案をされた。

 むぅ、一回なら良いかなー。

 下村さん、引き下がらなさそうだし。


「……分かったよ。一回だけお試しね」

「やった! よろしくね、葉月ちゃん!」


 下村さんがガッツポーズした。

 そんなに嬉しいもんなの?


「よろしく。足は引っ張らないでね」

「これからよろしくね」


 藤堂さんとオクタがようやく口を開いた。

 この感じ、やっぱり元から誘うつもりだったみたいだね。

 仕方ない、次の一回だけだ。諦めよう。


 結局、僕は下村さんの誘いを断ることはできなかった。


「うん、よろしくね」


 下村さんから差し出された手を軽く握る。

 僕より少し大きな手は、なんだか暖かかった。 

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