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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
四章

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11 周りでフォローしていくしかないね

「こんにちはー」

「こんにちは」

「二人とも、こんにちは」


 玄関で下村さん、藤堂さんと挨拶を交わす。

 僕は優太と一緒に二人を家に迎え入れた。


 二人の学校でえじそん先生による特別授業が行われた翌日。

 藤堂さんから困ったことになったと連絡があったので、僕らの家に集まったのだ。


 周りに聞かれたくない話をするときは、やっぱり僕達の家が都合が良いからね。


「あのね……」


 ちゃぶ台の前に座ると、藤堂さんが早速話を切り出した。

 どうやら昨日の特別授業自体は、何の問題もなく終わったみたいだ。

 授業内容は面白くて不思議な感じだったらしい。


「葉月のマジックみたいな感じだったわ」


 藤堂さんがそんな感想を漏らす。

 ふーん、それは興味深いね。


 それで特別授業では特に変なことは起きず、むしろ楽しかったぐらいだそうだ。

 えじそん先生自身もおかしな感じではなく、終始テレビで見るような感じだったのだとか。

 それで藤堂さんが言う、困ったことが起こったのは授業の後。

 えじそん先生が課外授業へ招待すると言い出して、それで……下村さんの友達が課外授業に誘われたらしい。


「そっか……下村さんの友達が……」


 横で一緒に話を聞いていた下村さんを見る。

 元気が前にも増して無いのは、既に話を聞いてたからだろう。


「……でも、番組の一環での授業なんだよね?」

「えぇ、そうよ」


 普段は学校へお邪魔して授業を行うのだけど、特番放送の際には番組が外に用意した舞台で授業を行う形態に変わるらしい。

 そういう時は子供達が自然と触れ合うことをテーマにするらしく、それもまた結構好評なのだとか。

 で、その課外授業では普段の特別授業と違い、全国から生徒を個人単位で集めるらしいんだけど、それをえじそん先生は名指しで指名したと。


 えじそん先生の真意は分からないけど、番組のイベントなら特別授業と一緒で、特に何事もなく終わる可能性は高い。

 悲観することも無いはずだ。


「逆にそれが困るのよ」

「……どういうこと?」


 彼女達の本音としては組織の一員がやってるイベントなんかに、参加してもらいたくはない。

 でも、そのイベントが公式番組のイベントである以上、怪しいから参加するのはやめてとは言えない。

 止める手段が無いと藤堂さんが語った。


「うーん、でも番組のイベントなら考え過ぎとかは無い?」


 皆の前で指名して何かが起これば、真っ先にえじそん先生や番組が疑われることになる。

 知名度を持ってる人がそんなことをするかな?


 そんなことを伝えると、藤堂さんが眉を顰めた。


「そういう可能性もあるけど、気になることがあって」

「気になること?」

「私も誘われたのよ」


 ぎょっとした。


 あっけらかんとした表情で言ってるけど……それは確かに気になる。

 たぶん、たまたまなんだとは思う。何せ、藤堂さんの存在は統制局には知られていないって、ヴィクターさんからは聞いてるし。


 でも、藤堂さんを指名したのは共栄会の……組織の人間だ。

 たまたまだとは思うけど……組織の人から名指しで藤堂さんが選ばれたら、どうしても穿った見方をしてしまっても仕方ないと思う。

 ――実は課外授業というイベントを隠れ蓑にして、何かを企んでるんじゃないかって。


「気になるから……まーかには行ってほしくないんだけど……まーか、楽しみにしててさ」


 下村さんが今日、初めて喋った。

 言葉が凄く弱々しい。


「それは……確かに困った話だね……」


 下村さんとしては凄く心配なわけだ。

 本当はまーかさんに行ってほしくない。でも楽しみにしてる彼女に、危ないからやめときなよとは言いにくい。

 何せ、危なそうな雰囲気が一向に見られないんだから。


「それで朝陽がね……」


 藤堂さんが言いにくそうに下村さんをみた。


 下村さんがどうしたんだろう。

 釣られて僕も下村さんを見る。


「私……課外授業を見に行こうかなって」


 下村さんが絞り出すように言った。


「見に行くって……見学でってこと?」

「うん」


 下村さんとしても、たぶん大丈夫だとは思ってる。

 でも絶対では無い。だから不安になってる。

 万が一、友達に何かあったら……そう考えた時に、せめて近くで見守りたいってことらしい。


「ちょっと待って、そんな簡単に見学ってできるの?」


 尋ねると、それは藤堂さんが答えてくれた。


 一般観覧席があるらしい。

 子供が参加するから保護者の同伴も多いし、その保護者が優先にはなるけど、見学はできるのだそうだ。


 そっか……そうなると問題は二つになるのかな。


 一つは下村さんが今、魔法少女に変身できないってこと。

 万が一、何かあってもお友達を助けることができない。


 もう一つは下村さんの身バレの問題だ。

 一般観覧席なら目立ちはしないだろうけど、えじそん先生に気づかれる可能性がゼロとは言えない。


 でも、そういった問題があったとしても……。


「お友達の傍に居たいんだね」

「……うん」


 下村さんが頷いた。

 表情は弱々しいけど、瞳には決意がこもってる。


 仕方ないね……。


「分かった、僕達も一緒に行くよ。優太も良いよね?」

「大丈夫だよ」


 優太に問いかけると、頷いてくれた。

 ありがとう、優太。


 下村さんの目を見る限りこのまま引き留めたとしても、下村さん一人で行きかねない。


 だったら僕達も一緒に行って、下村さんのフォローをした方が良い。

 優太が居れば、認識阻害の魔法で姿を誤魔化せるからね。


「ありがとう……っ!」


 下村さんが嬉しそうに頷いた。


「優太の認識阻害で多少は誤魔化せるけど……無茶はダメだからね」


 優太がかけてくれる認識阻害の魔法は誰かに触れられると解除されてしまう。

 一般観覧席で人が多いと、間違って誰かに触れちゃって解除されてしまう可能性がある。


 見に行くなら慎重に行動しないといけない。


「うん、気を付ける」


 下村さんが力強く頷いた。

 返事が良くなった。

 少し元気が出てきたのかもしれない。


 良いことだけど……優太が一緒に居てくれても、問題が全部解決するわけじゃない。

 身バレ問題が解決したとしても、下村さんが今は魔法少女になれないってことは変わらない。

 何かあった時には結局、見ていることしかできないかもしれない。

 ……まぁ、その時は優太や僕が動くとは思うけど。


 とにかく下村さんに無茶をさせるわけにはいかないので、そこは僕達が気を付けないといけない。

 下村さんは何だかんだ、何かあったら生身で飛び出してしまいそうだしね。


「そんな気負わなくても大丈夫よ。もし何かあったら……私が助けるから」


 藤堂さんも下村さんの様子から何かを察したのか、そう発言した。

 確かに、藤堂さんはえじそん先生から招待されてるわけだから、まーかさんの一番近くにいれる。

 でも……。


「いいの?」


 そんな危ない人の招待を受けてしまって。

 そう尋ねると、藤堂さんはため息を吐いた。


「仕方ないじゃない。私が断ったら、他の人が招待されちゃうかもしれなかったし」


 藤堂さんの言葉に納得する。

 確かに藤堂さんが断ってたら、他の人が呼ばれてただろう。

 そうなると、藤堂さんは何も関われなくなってしまう。

 藤堂さん自身は参加したくないけど、でも自分が関われない所で、クラスの人が危ない目に遭うって方がもっと嫌なんだろうね。


 でも、そうなると。藤堂さんが一番えじそん先生の近くにいることになる。


「藤堂さん、気を付けてね」

「えぇ、分かってるわ。ありがとう」


 藤堂さんが頷く。


 そうして、一応方針が決まった。

 後は……もう少しえじそん先生の情報があると助かるんだけど……。

 ヴィクターさんから連絡来ないんだよねぇ。

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