空腹には勝てないようです
登場人物が基本男性キャラクターばかりのため、読まれる方によっては、若干のボーイズラブ要素を感じてしまうかも知れません。
ご注意のほどよろしくお願いします。
「それで、悩んだ結果、寄せ鍋にしてみたんだけど、どうかな?」
ちゃぶ台の中央には大きめの土鍋が鎮座し、その中には醤油と出汁をベースにしたオーソドックスな汁に、鶏肉、白菜、椎茸、えのき茸、もやし、豆腐、鱈、水菜、葛切りとたっぷりの具材を入れた寄せ鍋。もちろんお代わりも出来るように具材は多めに用意し、締めのうどんも準備してある。ちなみに、朱雀に鶏肉は食べられるのか尋ねたところ、なんら問題は無いと返答をもらった。
呼び出した狸と、四神達とちゃぶ台を囲みながら狸をじっと見つめる。
「儂を食い物なんぞで懐柔しようとはいい度胸じゃのう」
狸がまだ許す気は無いと言う様に俺を睨む。なかなか許してもらうのは難しそうだ。
「まあ、とりあえず、食べようよ。せっかく狸のために作ったんだから」
俺はにこにこと笑いながら狸のために鍋の具材を器によそうと狸の前に置いてやる。四神達はそれぞれ好きな様に鍋から具材を選んでいる。朱雀が鶏肉を器に入れている姿はなかなかに違和感を覚える絵面だ。
手を合わせてみんなで一斉に食べ始めるも、狸はなかなか食べ始めてくれない。でも、こういうのって強要しても意味無いしな。俺が狸を横目にちらちらと見ながら鍋を食べていると、四神達がわいわいと騒ぎ出す。
「主、この透明で長いものは何ですか?」
「葛切りって言って、鍋以外にも茹でて黒蜜なんかを掛けて食べても美味しいよ」
青龍は俺の答えに満足したのか、葛切りをなるほど、と見詰めながら頷いている。
「主、鶏肉って歯応えがあって美味いのな」
朱雀は鶏肉が思いのほか気に入った様で、喜んで食べている。人の姿で良かった。軍鶏の姿で食べていたらさぞシュールな光景だっただろう。
そうしてわいわいと鍋を食べ進めているうちに、狸の様子が少し変わってきた。どこか、そわそわとした様な落ち着きの無い様子になる。器に盛られた具材と鍋をちらちらと見ながら何かを我慢しているようだ。その時、
「ぐるるるるる・・・」
何かの鳴き声のような音が聞こえてきた。音のした方を見ると、狸が下を向いて震えている。どうやら、聞こえてきた音は狸の腹の虫の鳴き声だった様だ。そのまま黙って狸を見ていると、意を決した様に箸を手に持つ。
「こんな物程度では許さんからな」
そう言うと、勢いよく鍋を食べていく。もちろんお代わり用の具材も、締めのうどんもあっと言う間に全員の腹の中に収まっていく。一通り食べ終わり、食後のお茶を飲み、みんなでほっと一息吐く。すると狸は、はっと気が付いた様に身構えると、
「今日は仕方なかったが、まだまだ儂は貴様を許してはおらんからな」
そう言うと、また庭を走り抜け町の方へ逃げていく。俺は仕方ないな、と諦め、携帯を取りだし狸を返還する。
狸と仲良くするにはまだまだ時間が掛かりそうだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。これからも続けていきますのでよろしくお願いします。
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*登場するキャラクターの性格等は全てフィクションであり、作者の書きやすいように作られたものです。




