まだまだ知らないことがいっぱいですね
登場人物が基本男性キャラクターばかりのため、読まれる方によっては、若干のボーイズラブ要素を感じてしまうかも知れません。
ご注意のほどよろしくお願いします。
人っ子一人いない無人の商店街を抜け、駅を越え、例の不穏な気配を感じるという場にやって来た。俺には特に何も感じられないのだが、四人は何かを感じるようで、あからさまに表情を強ばらせている。
「やっぱり何かあるのか?」
四人の様子に、何も感じない俺まで不穏な気配を感じる様な気分になって来る。携帯をポケットから取り出し、いつ何が出て来てもいいように待ち構える。
「人というものは、時に神をも恐れさせるのですね・・・」
青龍はそう言って俺を庇うように前に立ち、ほかの三人も同じ様に俺を庇う様にして周りに立ってくれる。
「神をも恐れさせるって、一体どんな」
奴なんだ?そう続けようとした時、生温い風が吹き、街灯がちかちかと点滅する。すると、手の中の携帯が光を放ち熱くなる。そして、画面に表示された敵の名前は
「犬神です」
青龍が俺の前から離れ臨戦態勢に入る。入れ替わる様に玄武が俺の前に立ち、朱雀と白虎が両脇を固める。ここまで来て、ようやく俺にも辺りの不穏な気配を肌で感じる様になってきた。背筋がゾクゾクとし、鳥肌が立つ。冷や汗が吹き出し、歯の根も合わなくなってきた。がたがたと震える俺を、白虎が支えるように抱き寄せる。
夜空を黒い雲が覆い、辺りに吹く風が生臭くなる。そして、犬の唸り声が聞こえてくる。
「い、犬神って・・・?」
「犬神は、呪いの一種だ。可愛がっていた犬の首を刎ね、辻道に埋める。そしてその上を多くの人に踏ませ、怨念の増した霊を呪物として使う物だ。この犬神は戦時中に作られたが使われないまま、怨念だけが増して暴走している状態だろう。そのせいでこの土地の開発も進まないのだろう」
俺の問に玄武が答えてくれる。俺でさえも不穏な気配を感じられて、土地開発が進まなくなるレベルの怨念。今まで捕まえてきた妖怪とはレベルが違いすぎるじゃないか。青龍はそんな奴と戦うのか?大丈夫なのだろうか?
「大丈夫だって。青龍は普段はおかんポジションだけど、ちゃんと神様なんだからな」
朱雀が俺の心を読んだのだろう、のんきな口調で話す。
「そうそう、それにどこの家でもおかんって最強だしねー」
白虎も俺を支えたままのんきに話す。そんなのんきな二人の会話に玄武も黙って頷く。
「聞えてますよ、二人とも。誰がおかんですか。でも、まあ、良いでしょう。主も心配はいりません。この程度の怨霊、私にはなんてことありません」
青龍が二人の会話を聞いていた様で、小言が飛んで来る。普段のままの四人のやり取りが俺の緊張を解してくれる。
その時、俺達の目の前に大きな犬が姿を現した。その犬はところどころ毛が抜け皮膚が見え、その皮膚もところどころが爛れており、目に見えて負のオーラを纏っていた。今解れた緊張が一気に戻ってくる。
犬神は青龍に向かって飛び掛っていく。青龍は攻撃を避けるように横へ大きく飛び退く。そこへ、犬神が後を追うように何度も飛びかかっていく。それでも青龍は関係ないと言わんばかりに、ひょいひょいと攻撃をかわす。いや、交わすというより誘導しているようにも見えてくる。同じような攻撃とそれを交わす作業が繰り返される中、ふと見上げた空にさっきまで空を覆っていた雲がさらに分厚くここら一体だけを覆う様になっているのに気が付いた。雷がゴロゴロとなっている。そして、ぽつりぽつりと雨が降り始める。
「主、見ていてくださいね。これが私の戦い方です」
辺りが雨に濡れ始め、俺達はもちろん、青龍も犬神も濡れ始める。
「まだやるか?わんこ」
青龍が犬神に向かってからかうように挑発をする。挑発に乗ったのか犬神が今まで以上の迫力で青龍に飛び込んだ。
ーーザクっ・・・ーー
犬神が青龍に飛び込んだ瞬間だった、青龍の手が無数の植物で覆われ一つの槍の様になった。そして、犬神は自身の勢いそのままに青龍の手に貫かれる事となった。
「主、封印の義をお願いします」
「う、うん。臨兵闘者皆陣烈在前っと・・・」
慌てて携帯画面で九字を切り犬神を封印する。その瞬間、辺りの雰囲気が一気に変わる。それにしても、やっぱりいつもより大変だったんだろうな。心配して青龍を見ると青龍はにっこり笑ってくれる。
「本来の力を少し使った程度で大丈夫でしたよ」
本来の力?また何か知らないことが。
「聞きますか?」
俺の出歯亀根性を読まれたのは恥ずかしいけれど、気になるものは気になるので聞いておくことにする。うん、と頷くと青龍が話し始めてくれる。
「青龍とは四神の内の一つですが、本来は四神の中央に黄龍が存在し、我々四匹が東西南北をそれぞれ守護しています。私、青龍は東を守護し、同時に春も守護しています。属性は土です。今回の戦いでは犬神を避けながら雨雲を召喚するための方陣を作って雨を降らせ、私の霊力と雨で植物を一気に育てて武器にさせてもらいました。本来の龍の姿であれば雨は振らせますし、植物も生やし放題何ですけどね」
他の三人も似た様なものですよ。と笑って教えてくれ、他三人も同意するように笑っていた。今までの敵はあまり力を使うまでも無かったからなと。
「じゃあ、帰って祖父様に報告だー」
白虎がうーん、と背伸びして先頭を歩き始める。
「主、トウモロコシ忘れんなよ」
歩きながら俺を振り向きにかっと朱雀が笑う。
「魚肉ソーセージも嫌いでは無い」
玄武がボソリと呟きそのまま前を行く二人の後を追って歩いて行ってしまう。最後には俺と青龍が残されてしまう。
「青龍、お疲れ様。今日は疲れただろ?さっさと帰ってゆっくりしよう」
今までの奴らとはレベルが違う敵だった、きっと疲れているはずだ。
「そうですね、帰りましょうか主。でも、その前に一ついいですか?」
青龍が神妙な態度で尋ねてくる。
「なんだよ、改まって。ほうれん草より小松菜がいいとかか?」
「いえ、そうではなくてですね」
何だかとても言いにくそうだ。ここは主としてビシッと懐の広いところでも見せてやろうか。
「青龍、何でも言ってみろよ。何でも聞いてやるぞ?」
「それでは・・・、私も頭を撫でてもらいたいのです」
青龍が勢い込んで口にした願いは頭を撫でられる事。きっと玄武の影響だろうな。
「そんな事、いつだってやってやるよ」
おいでおいでと手招きして、頭を少し下げさせる。そして、青龍の望み通りわしゃわしゃと頭を撫で回してやる。しばらくそうした後、髪を軽く整えて顔を挙げさせると、青龍は少し高揚した顔をしていた。しかし、満足はした様で、帰りましょうかと俺の手を引き家へと連なって行った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。これからも続けていきますのでよろしくお願いします。
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*登場するキャラクターの性格等は全てフィクションであり、作者の書きやすいように作られたものです。




