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異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


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EP 5

契約成立! 聖剣ガオンマグナムソードの正しい悪用方法

「……ふぅ。これで駆動系の軋みは取れたはずだ。ちょっと動かしてみな」

天魔窟の中層、開けた広場。

優也が『KURE〇-56』の空き缶を投げ捨てると、聖獣ガオンが恐る恐る黄金の四肢を動かした。

「おお……! 軽い! 何百年ぶりだ、関節がシルクのように滑らかに動くぞ! 貴様、ただの人間ではないな!?」

ガオンが感動のあまり、バサァッ! と黄金のたてがみを揺らす。

「ただの底辺労働者(現場監督)だよ。……あんたみたいに、言うこと聞かねぇ部下と無茶振りしてくる上層部の間で板挟みになってる、な」

優也はチラリと背後を振り返った。

そこには、同人誌を読み込みながら「次は青龍の浮気現場ね……」とブツブツ呟くキャルル、死百足のスクラップを「1キロ100円……」と数えているリーザ、そして謎の毒キノコを栽培し始めているルナの姿があった。

「……なるほど。貴様も、なかなか『癖の強い』メンバーを抱えているようだな」

ガオンが深く、深く同情の溜め息をつく。

「ま、現場なんてそんなもんだ。上がどんなにポンコツでも、俺たち現場の人間が安全と品質を守らなきゃ、全てが崩れちまうからな」

優也がヘッドライトの角度を直し、ツルハシを肩に担ぎ直す。

その言葉を聞いた瞬間、ガオンの鋭い瞳に、かつてないほどの強い『光』が宿った。

「(……なんという男だ。神話の英雄でもないただの人間が、これほどまでに『全体を支える柱』としての自覚と誇りを持っているとは!)」

ガオンは厳かに立ち上がると、優也の前に歩み寄り、深く頭を下げた。

「高木優也。我輩は貴様のその『安全第一』の精神に感銘を受けた。……よかろう! 我輩の力、貴様に貸し与える!」

ガオンの胸のライオンのエンブレムが眩く発光し、そこから一本の巨大な『剣』が実体化して優也の目の前に突き刺さった。

「こいつは……?」

「我輩と契約した『コマンダー』のみが扱える専用武器……『ガオンマグナムソード』だ!」

白銀の刀身に、ライオンの意匠が施された黄金の柄。

そして、柄の部分は変形して『レーザーマグナム銃』にもなるという、男のロマンを全部乗せしたような神話級の武装だった。

「おおーっ! かっこいいですぅ! 金を削り取って売りましょう!」

「ダメよリーザちゃん、これは神聖な武具なんだから!」

ヒロインたちが騒ぐ中、ガオンはドヤ顔で必殺技の解説を始めた。

「さぁ、優也! その剣を抜け! スイッチを入れれば、刀身が数千度の超高熱を帯びる必殺の『ヒート・ブレイズエッジ』が発動する! どんな強固な魔物も、巨大な鉄の扉も、一刀両断に――」

「マジか。数千度まで上がるのか、こいつ」

優也の目の色が、別の意味で変わった。

彼はガオンマグナムソードを引き抜くと、スマホ(圏外)のポイント履歴から消費ポイント5pで『溶接用遮光面(真っ黒なゴーグル)』を召喚し、顔に装着した。

「……ん? 優也、なぜ顔を隠すのだ? 英雄の顔が見えないではないか」

「素眼で高熱の閃光を見たら、アーク目(雪目)になって最悪失明するからな。労災防止だ」

優也はそう言うと、マグナムソードの柄にあるスイッチをカチッと押し込んだ。

ブォンッ……! シュイィィィィィン!!

刀身が凄まじい熱を帯びて赤熱し、周囲の空気が一気に陽炎のように歪む。

「ちょうどよかったぜ。電波が通じなくて『ガスバーナー』も『プラズマカッター』も出せなくて困ってたんだ。こいつがあれば、地下鉄工事のスピードが百倍になる!」

優也は、ガオンが期待したような『勇者の構え(大上段)』を取ることはなかった。

代わりに、腰を深く落とし、脇をキュッと締めるという、極めて安定した『職人のフォーム』に移行した。

そして、先ほどルナがツタで補強した岩盤の崩落跡に設置してあった『鋼鉄のH鋼(支柱)』に向かい、赤熱したマグナムソードの切っ先を、ミリ単位の精密さで当てた。

ジュオォォォォォォォォォォッ!!!

火花が激しく散り、数千度の熱によって分厚いH鋼が、まるでバターのように滑らかに切断され、同時に別の鉄骨と見事に『溶接』されていく。

「……なっ!?」

ガオンが、目を真ん丸に見開いた。

「よし、溶け込みヨシ! スラグ(カス)の巻き込みもねぇ! すげぇなこれ、出力が安定してるから極上のビード(溶接跡)が引けるぞ! 最高の工具じゃねぇか!!」

優也が遮光面をパカッと上げ、満面の笑みで親指を立てる。

「ち、ちがァァァァァァァァッ!!!」

ガオガオンのメインコア、誇り高き聖獣の絶叫が地下空間にこだました。

「それは魔物を斬り裂くための神聖なる剣だ! なぜ鉄骨の溶接と切断に使っている!? しかも微妙に出力を調整して、先端だけ熱くするな!!」

「バカ野郎。剣で魔物を斬るなんて野蛮なマネ、現場監督が自らやるわけねぇだろ。俺の仕事は『安全な通路を作る』ことだ。……こいつは今日から、高木組の特注プラズマカッターだ」

「我輩の、我輩のマグナムソードがぁぁっ……!」

ガオンが前足で顔を覆い、再び胃を痛めて泣き崩れた。

神話の英雄の武器すらも、己のDIY(土木工事)のための『工具』に変換してしまう男。

最強のプラズマカッター(聖剣)を手に入れた現場監督の地下鉄掘削工事は、これより一切の障害を無視して、一直線に最深部(サルバロスの生産ライン)へと突き進む。

しかしその奥底では、屈辱に震える魔人ワイズが、優也たちを最も苦しめる「悪辣な幻覚トラップ」を仕掛けて待ち構えていた。

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