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異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


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第四章 天魔窟(地下現場)カチコミ編 ~聖獣の契約と、泥沼同人誌の真実~

創世神話と、聖獣機神の泥沼社内恋愛(同人誌)

ポポロ村の防衛戦から数日後。

優也たちは、ルナミス帝国郊外の荒野をひた走る『ロックバイソン・バス(岩牛が引く大型乗合馬車)』の最後列シートに揺られていた。

目的地は、魔人ワイズが逃げ込んだ先であり、彼らの親玉が眠るという巨大ダンジョン『天魔窟』。

自分の重機をハッキングして汚した機械蟲の生産ラインを、元から絶つための「カチコミ(出張工事)」である。

「……なぁ、キャルル。そもそもあのピエロが言ってた『死蟲王サルバロス』って、何者なんだ?」

優也が、新品の安全靴の靴紐を締め直しながら尋ねた。

「えっ? 優也君、サルバロスのこと知らないの?」

キャルルがウサギ耳をピンと立て、驚いたように目を見開く。

「俺はこの世界アナスタシアの歴史や神話にゃ疎いんだよ。現場の安全基準しか頭に入ってねぇからな」

「もう、仕方ないわね。この世界の根幹に関わる神話なんだから、ちゃんと聞いてよね」

キャルルはコホンと一つ咳払いをすると、吟遊詩人のような真面目なトーンで語り始めた。

「遥か昔。この世界には、女神ルチアナ、邪神デュアダロス、そして死蟲王サルバロスの三柱の神がいて、世界の覇権を巡って『神蟲魔大戦』と呼ばれる壮絶な争いを繰り広げていたの」

「ほう。三つ巴の神様の大ゲンカか」

「ええ。でも、死蟲王サルバロスの生み出す機械の蟲があまりにも強すぎた。だから、犬猿の仲だったルチアナとデュアダロスは一時休戦して、共闘することになったのよ」

「なるほど、昨日の敵は今日の友ってやつだな」

「そう! そして、その二柱の神の窮地に駆けつけたのが、世界の調停者たる『五柱の聖獣』たちよ!」

キャルルの声に熱がこもり始める。

「誇り高きメカライオンの『聖獣ガオン』を筆頭に、東の『青龍』、西の『白虎』、南の『朱雀』、北の『玄武』……。彼らは五体合体し、奇跡の巨大ロボ『聖獣機神ガオガオン』となって、サルバロスを天魔窟の奥深くに封印したの! ……そしてその後、勝利したルチアナ様がこの『アナスタシア世界』を創造した、っていうのが神話の真実よ」

「へぇ、巨大ロボねぇ。男のロマンじゃねぇか。で、その聖獣ってのは普段どこにいるんだ?」

優也が興味深そうに身を乗り出す。

「それぞれが孤高の存在だからね、普段はバラバラに世界のバランスを見守ってるわ。それぞれが『バイブル』にしてる名著があってね。ガオンは『ツァラトゥストラはこう語った』、白虎は『罪と罰』、青龍は『孫子兵法』……」

「随分と小難しい本を読んでるロボットだな」

「そうなの! 特に背中のパーツになる『朱雀』は、『君主論』を愛読するマキャベリストでね。常に自分が主導権を握りたくて、ライバル視してるガオンの派閥を切り崩すために、思い詰めるタイプの白虎に色目を使ってキープしつつ、裏では計算高い青龍の裏垢にDMを送って浮気してるのよ!」

「……ん?」

優也の眉間がピクリと動いた。

「そしたら、下半身パーツの『玄武』が『どうせ私なんて土台だし! 朱雀は構ってくれないし! もうリスカ(自重で崩壊)してやるぅ!』ってメンヘラムーブを発動しちゃって。メインコアのガオンは『俺に関係ないだろ! なんでこんな職場の連中と合体してダンテの《神曲》とか歌わなきゃいけねぇんだ……』って毎日胃を痛めてるんだから!」

「…………待て」

キャルルの瞳が、かつて100人の野盗をボコボコにした満月の夜以上に、血走った『ヤバい光(オタク特有の早口)』を放っている。

優也は、キャルルが先ほどから膝の上で大切そうに撫でている『分厚い本』を、ひったくるように奪い取った。

「ちょっと! 何するのよ優也君!」

「……『聖獣機神ガオガオンの社内恋愛事情は辛いよ。』(著:サークル・ルナミス月兎族)……って、なんだこの薄い……いや分厚い本は!!」

優也が本を開くと、そこには擬人化されたイケメンの四神獣たちが、壁ドンしたり、顎クイしたり、泥沼の愛憎劇を繰り広げている挿絵がギッシリと描かれていた。

「神々のスキャンダル読んでハァハァしてんじゃねぇ!! 神話が途中から完全にドロドロの同人誌(妄想)にすり替わってただろうが!」

優也の容赦ないツッコミがバスの車内に響き渡る。

「も、妄想じゃないもん! これはルナミス帝国の裏ルートでしか流通してない、神話の『真の解釈』なんだから!」

キャルルが顔を真っ赤にして本を取り返そうとピョンピョン飛び跳ねる。

「あら、神様たちの泥沼スキャンダルですって……?」

向かいの席でいびきをかいていたリーザが、ガバッと起き上がった。その瞳は完全に『ルチアナ円(金)』のマークになっている。

「そのネタ、週刊誌(タブロイド紙)に売り飛ばせば大儲けですぅ! 『スクープ! 朱雀の裏垢流出! 玄武のメンヘラ手首の傷跡!』……これで私、一生ロールケーキが食べ放題ですぅぅっ!!」

「神様をゆすって金にしようとするな! 天罰が下るぞ!」

強欲アイドルへの優也のツッコミが追いつかない。

「あらあら、玄武ちゃん可哀想♡」

ルナが、同人誌の挿絵を見ながらふんわりと微笑む。

「私の魔法で、絶対に切れない『鋼のツタ』でガチガチに縛って、一生逃げられないようにしてあげましょうか?♡」

「お前の善意が一番サイコパスなんだよ!!」

ロックバイソン・バスの中は、相も変わらずの動物園状態である。

優也は深いため息をつき、ひどく疲れた顔で窓の外に目を向けた。

(……だが、巨大ロボか。男のロマン……いや、待てよ。ただのデカい機械なら、あいつら(死寄生蟲型)の格好の餌食になるだけなんじゃねぇか?)

現場監督としての冷徹な思考が、優也の脳裏を過る。

その時、馬車のスピードが徐々に落ち、御者の大声が響いた。

「終点だァー! これより先は馬車は入れねぇ! ……命が惜しけりゃ、引き返すこったな!」

優也たちが馬車を降りると、そこには不気味な赤黒い瘴気が渦巻く、巨大な地割れのような大穴がポッカリと口を開けていた。

底が見えないほどの暗闇から、機械が擦れ合うような嫌な駆動音が、かすかに響いてくる。

「……ここが、サルバロスが眠る天魔窟」

キャルルが、同人誌をリュックにしまいながらゴクリと息を飲んだ。

優也は安全靴の底で地面の土を叩き、首をポキポキと鳴らした。

「よし、野郎ども。ヘルメット被れ! 安全帯ヨシ! ……これより、天魔窟の『解体工事』を開始する!」

神話と妄想が入り交じる中、優也たちはいよいよ最悪のダンジョンへと足を踏み入れた。

だがこの直後、優也は「異世界に来て最大のルール変更トラブル」に見舞われることになる。

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