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異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


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EP 9

絶望の手品破り。現場監督のタクティカル鉄拳と、砕け散る道化の仮面

「お、おのれぇぇっ……! 薄汚い泥水で私を汚し、美しい手品を台無しにするとはぁぁっ!」

全身泥まみれになり、宙に浮くこともできなくなった魔人ワイズが、怒りで仮面を赤黒く発光させながら絶叫した。

彼は身の丈ほどもある大鎌デスサイズを振りかざし、同時に、残った十指から『死糸』を優也に向けて一斉に放った。

「死ねェッ! 斬り刻まれて、挽肉になりなさいッ!!」

音速で迫る、人体など容易く切断する極細の魔力糸。

だが、優也は肩に担いだタクティカル鉄パイプを下ろすことなく、ただ静かに一歩、前へと踏み出した。

ヒュッ……!

優也の首筋を狙った糸が、空を切る。

ワイズが指を弾き、今度は足元と胴体を狙って糸を交差させるが、優也はボクサーのような滑らかなウィービングとダッキング(上半身の動き)で、それらをスレスレで躱していく。

「な……ッ!? なぜ当たらなイッ! 私の糸が見切れるはずが――ッ」

「見えりゃ当たらねぇんだよ」

優也の冷徹な声が響いた。

ワイズの放つ『見えない糸』には、先ほど大量に浴びせた泥水がベッタリと付着し、その軌道が空間に『茶色い線』として完全に可視化されていたのだ。

軌道さえ見えれば、あとは地下格闘技(MMA)で培った動体視力とステップの独壇場である。

「くそッ、ならば直接刈り取って差し上げまスヨォォッ!!」

焦燥に駆られたワイズが、大鎌を大きく振り被り、優也の胴を真っ二つにしようと横薙ぎに一閃した。

「テメェの攻撃は『大振り』すぎるんだよ。……現場じゃ労災モンだぞ」

ガキィィィィィィィンッ!!!

優也は回避せず、手に持った新品のタクティカル鉄パイプで、大鎌の刃の根元――の部分を強打した。

原付きバイクのサスペンションを利用した鉄パイプ。優也のフルスイングの威力と、大鎌の勢い、そしてサスペンションの爆発的な『反発力』が一点に集中する。

「あぐぅッ!?」

ワイズの手に強烈な痺れが走り、彼が誇る大鎌の柄が、乾いた音を立てて真っ二つにへし折れた。

「私、私のデスサイズが……ッ!?」

ワイズが驚愕に見開いた目(仮面)の前に、すでに優也が深く沈み込んだ姿勢で潜り込んでいた。

「手品の時間は終わりだ」

優也がワイズの腰に両腕を回し、強烈なタックルで泥の地面へと引き倒した。

完璧なテイクダウン。そして瞬時に馬乗りになり、ワイズの両腕を膝で押さえつける『マウントポジション』を奪う。

「こっからは……解体作業おしおきの時間だ」

「ひっ……! や、やめろ……! 私は死蟲王サルバロス様の――」

「俺の機械(現場)を汚した罪は、重いんだよッ!!」

ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!

優也の渾身の右ストレートが、ワイズの不気味な仮面に突き刺さった。

メキッ……パリーンッ!

「あべばぁぁぁぁぁぁっ!?」

人を嘲笑い、絶望の顔を好んだ道化師の仮面が、無惨に砕け散る。

その下から露わになったのは、鼻血を噴き出し、涙と鼻水で顔をグチャグチャにした、情けなく怯えきった素顔だった。

「ひぃぃぃっ! 許して……許してくださいぃぃっ!」

「他人の絶望を笑ってた奴が、自分の番になったら命乞いかよ。……ダセェな」

優也は冷たく吐き捨てると、容赦なく左拳を振り下ろし、右、左と、凄まじいパウンド(鉄拳の雨)をワイズの顔面に降らせた。

「オラッ! 俺の重機を返せ! オラッ! 村人を盾にしやがった落とし前だッ!!」

ドガッ! ゴスッ! メキャッ!!

「ひぎぃっ! ぐぼぇっ! あ、姉御ォォォッ! じゃなかった、監督ォォッ! 助けてぇぇっ!」

格闘家のマウントパンチから逃れる術を持たない魔法使いは、ただひたすらに顔面をボコボコにされ、最後は白目を剥いて完全に気絶した。

ワイズが意識を失った瞬間。

乗っ取られて奈落の底で空転していた『ホイールローダー』から紫色に発光する寄生蟲がドロドロと溶け落ち、機械蟲の残骸たちも一斉に活動を停止した。

「……フゥ」

優也は血と泥にまみれた拳を拭い、ゆっくりと立ち上がった。

「優也君!」

崖の上から、キャルル、ルナ、そして「ロールケーキ!」と叫びながらリーザが駆け寄ってくる。その後ろには、狂信者たちも歓声を上げて続いている。

「やったわね! あのピエロ、完全に伸びてるわ!」

キャルルがワイズを小突いて笑う。

「ああ。俺たちの『アナログ要塞』の完全勝利だ」

優也は、朝日が昇り始めた廃採石場を見渡し、満足げにタバコに火をつけた。

かくして、奪われた重機を取り戻し、ポポロ村を最悪の機械蟲から守り抜いた現場監督。

しかし、この戦いはまだ『天魔窟』という巨大な闇の、ほんの入り口に過ぎなかった。

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