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異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


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EP 4

魔人ワイズの嘲笑。弄ばれる命と、現場監督の屈辱

ボロロロロロロロォォォォォォォッ!!!

紫色に発光する魔石ハイブリッド・エンジンが、禍々しい駆動音を響かせる。

15トンの鋼鉄の獣――大型ホイールローダーは、運転席キャビンにいる優也のコントロールを完全に拒絶し、死寄生蟲型デス・パラサイトの意志によって動いていた。

「キャルル、下がれェッ! こいつはもう、俺の機械じゃねぇッ!!」

優也が運転席の中で、利かなくなったブレーキペダルを床まで踏み込みながら、拡声器で絶叫する。

窓の向こうでは、キャルルがマッハの速度でバックステップを踏み、巨大なバケットが地面を粉砕する衝撃波をギリギリで躱していた。

「ひ……ひぃぃっ! 優也君のゴーレムが、完全に暴走してるわよぉぉっ!」

リーザが札束の袋を抱きしめ、木の陰に隠れてガタガタと震える。

「あらあら、元気なゴーレムね♡ 私が『世界樹のツタ』で動きを止めてあげましょうか?」

ルナが呑気に杖を構えた、その時だった。

パチ……パチ……パチ……。

戦場に不似合いな、ゆっくりとした、芝居がかった拍手の音が聞こえた。

死蟲機マシン・インセクトの群れがサァッ……と左右に割れ、その奥から、一人の男が優雅な足取りで歩み出てきた。

「あははッ! 素晴らしいッ! 実に素晴らしい『絶望の顔』ですネェ、現場監督さん♡」

優也は、運転席の窓越しにその男を見て、背筋に冷たいものが走った。

長身痩躯。全身に派手で歪なパッチワークの『道化師ピエロ』の衣装を纏い、顔には不気味な、笑っているのか怒っているのか判らない『仮面』をつけている。

そして、その背中には、身の丈ほどもある巨大な『大鎌デスサイズ』が担がれていた。

死蟲軍 指揮官――魔人ワイズ。

「な……ッ!? アンタ、何者なの……ッ!」

キャルルがトンファーを構え、ワイズを睨みつける。

「おや、兎の村長さん。私はワイズ。死蟲王サルバロス様に仕える、ただの『絶望の手品師』ですよ」

ワイズは仮面越しに慇懃無礼な一礼をすると、運転席の優也に向かって、芝居がかった動作で大鎌を突きつけた。

「現場監督さん。貴方が精魂込めて『DIY』したその黄色いおもちゃ(ホイールローダー)……、今度は私のおもちゃ(殺戮兵器)として、貴方の仲間を皆殺しにするんですヨ。……どうです? 最高に『絶望』できるシチュエーションでしょう? あははははッ!」

「テメェ……ッ! 俺の機械を、道具を……汚しやがってッ!!」

優也の怒りが頂点に達する。

モノを大切にし、壊れた機械を直して人を助けることを誇りとしてきたガテン系主人公にとって、自分の機械が「最悪の殺戮兵器」に改造され、仲間を襲う現状は、何よりも許しがたい侮辱だった。

「おっと、怒らないでくださいヨ。私の手品は、これからが本番です」

ワイズは、仮面の下でニヤリと笑うと、空いた手を、魂を抜かれて広場に倒れ込んでいる村人たちに向けた。

「さぁ、皆様! 楽しいショーの時間です! 『死糸の操り人形マリオネット・ライン』ッッッ!!」

ワイズの指先から、見えないほど細く、強靭な魔力の『糸』が数百本、放出された。

その糸は、魂を抜かれた抜け殻の村人たちの神経に直接繋がれ――。

……ガクリ。ガクガクッ。

死んでいたはずの数十人の村人たちが、不気味な機械のような動きで、一斉に立ち上がった。

「な……ッ!? 村の人たちが、動いた……?」

キャルルが目を見開く。

「あははッ! 私、操り人形マリオネットが大好きなんですよ♡ さぁ、現場監督さん。兎の村長さん。そしてエルフの王女様」

ワイズは、操り人形となった村人たちを、暴走するホイールローダーの前面に、**『肉の盾』**としてズラリと並べた。

「貴方たちは、この無辜むこの村人たちを轢き殺して、この黄色いおもちゃを止めますか? それとも、村人たちに阻まれている間に、ホイールローダーのバケットでミンチになりますか? ……さぁ、選んでください! 絶望の選択肢をォッ!!」

「テメェェェェェェェェッッッ!!!」

優也の咆哮が、運転席の中に響いた。

自分の重機が仲間を狙い、さらにその前面には、助けるべき村人たちが『肉の盾』として操られている。

ルナの魔法も、村人を盾にされては撃てない。キャルルのマッハの蹴りも、村人を傷つけずに重機だけを止めることは不可能。

ワイズは、仮面の下で、優也たちが絶望に染まっていく顔を、最高に愉悦に満ちた目で見つめていた。

「(クソッ……! どうする、どうする……! 俺一人なら、この運転席の窓を破って脱出できる。だが、その後は? 重機は暴走し続け、村人たちはワイズの操り人形……)」

優也は、利かなくなった操作レバーを握りしめ、冷や汗を流しながら、必死に『段取り(作戦)』を組もうとする。

だが、どの工程を選んでも、仲間か村人のどちらかが死ぬ。

「……キャルル!! ルナ!! リーザ!!」

優也は、拡声器のボリュームを最大にした。

その声には、怒りでも絶望でもない、静かで、冷徹な『決意』が込められていた。

「今は……引くぞッ!!」

「え……ッ!? で、でも、村の人たちは……ッ!」

キャルルが抗議の声を上げる。

「今の俺たちじゃ、こいつらを助けられねぇ……! ここで全滅したら、元も子もねぇんだよッ! 俺が窓を破って脱出する! お前らは、リーザと難民を連れて、森の奥へ逃げろッ! ……現場監督の命令だ、行けッッ!!」

優也は、タクティカル鉄パイプの残骸を使い、運転席の強化ガラスを内側から猛烈に殴りつけた。

ガシャァァァァァンッ!!!

ガラスを粉砕し、優也がホイールローダーから飛び出すと同時に、キャルルが泣く泣く、ワイズの糸に操られる村人たちを傷つけないように、彼らの動きを封じる『月影流・影縫い』を放った。

「……あははッ! 逃げるんですか? 現場監督さん♡ 貴方の負け犬の顔、最高に愉快でしたヨ!」

ワイズの嘲笑を背に、優也たちはリーザと数人の難民を連れて、森の奥へと撤退した。

自分の全ポイントを使い、仲間を守るために召喚した最強の武器ホイールローダーを、最悪の敵に奪われ、さらに仲間を殺戮するための『盾』として利用された。

現場監督・高木優也にとって、これまでの異世界生活で最大の、そして最も屈辱的な『敗北』であった。

「……待っていろ、ワイズ」

森の闇に身を隠しながら、優也は、紫色に発光する自分の重機と、嘲笑する道化師の姿を、その瞳に焼き付けた。

「俺の機械を汚した落とし前……、地球の『アナログな暴力』で、きっちりつけてやる……!」

章の開幕は、優也たちの屈辱的な敗北と、重機チートの強奪という、かつてない絶望から始まった。

だが、現場監督のDIY魂は、まだ折れてはいなかった。

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