第十九話 その先へ
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・事件等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
数ヶ月後
事件の傷跡が癒え始めた神代の里に、穏やかな木漏れ日が戻っていた。
神社の境内からは、小気味よい木刀の音が響いている。
多くの経験をした蓮の動きは、もはや武術という枠を超え、周囲の自然、そして世界の呼吸そのものと完全に調和しているようだった。
「ふぅ……」
蓮が木刀を収めると、拝殿のほうから神楽鈴の澄んだ音が聞こえてきました。
そこには、巫女装束に身を包んだ凪がいた。「予知」という絶望の呪縛から解き放たれ、
今を生きる彼女の瞳は、これまでにない輝きを放っていた。
「お疲れ様、蓮。はい、お茶」
「ありがとう、凪。……親父の調子はどう?」
「うん、もうすぐ退院できそう。神社の再建に向けて張り切ってるわよ」
蓮はお茶を啜りながら、懐からスマホを取り出した。
そこには、凱からのメッセージが映されていた。
『神代へ。お前たちが作る未来を、一足先に見届けている』
凱の行方は、今も分かっていない、
蓮は、彼が何をしたかったのか、これから何をするつもりなのか、
俺は何をすべきなのか、複雑な気持ちが渦巻いていた。
「蓮、何を考えてるの?」
凪が覗き込んできた。蓮はスマホをそっとポケットにしまい、広がる青空を見上げた。
「別に、……これから、この力をどう使っていこうかって。」
「そうね。でも、今の蓮なら大丈夫」
凪が微笑み、蓮の手をそっと握りました。
予知能力を失った凪には、数秒先の未来さえもう見えません。それでも、二人の間に流れる温かい気流が、これから始まる明日がどんなに不確定で、どれほど素晴らしいものになるかを告げているようだった。
風が吹き抜け、神社の杜の葉がサワサワと音を立てる。




