第十五話 鏡合わせ
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・事件等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
かつての門下生はよく見るとカイトだった。
体型も同じで良く手合わせをしていた。今となっては懐かしさすら感じてしまう。
その後ろに、見覚えのある男、九条凱がそこに立っていた。
「君のデータを解析させてもらった。不知火も、君の弱さも……そして、その対処方法をそいつの中にコピーさせてもらったよ。」
彼の手にあるのは、蓮の不知火と寸分違わぬ黒色の刀が握られていた。
「……俺をコピーしただと?」
「そうだ。君の全ては、数値化して再現できるただの現象に過ぎないんだよ」
カイトが動き出した。
その速さは、蓮の動きそのものだった。
一瞬で距離を詰め、蓮の死角から正確無比な一撃を放ってきた。
キィィィン!
激しい衝撃と熱波が、周囲に伝わる。
蓮は防戦に回らざるを得なかった。相手は自分。自分の動き、思考の癖、そして「不知火」を維持するための呼吸のタイミングまで、すべてを先読みしてぶつけてくる。
「どうした、本物。自分に勝つ術がないのか?」
カイトの猛攻が続きます。
蓮の心に、かつての「怯え」がわずかに鎌首をもたげました。
(僕が学んできたことは、すべて模倣される程度のものだったのか……?)
その心の揺らぎは不知火に伝わった。不知火の熱が暴走し、蓮の構えが崩れた。
喉元に突きつけられる刃。
その絶体絶命の瞬間、蓮の耳に、崖の上から囁くように「風の音」が聞こえた。
(それは過去のあなたよ・・・)
(……!!そうだ。解析できるのは『過去の僕』だけだ)
蓮は、目を閉じました。
「不知火」の型を、自ら内側から破壊します。
過去の完成された正解を捨て、ただその瞬間の風の流れ、大地の震え、そして「凪を助けたい」という、理論では説明できない衝動に身を任せました。
「凪・・・」
カイトの刃が蓮を貫く直前、蓮の身体が陽炎のように揺らぎました。
カイトはデータによりそれに対応した。
蓮は、カイトの腕を掴むのではなく、寄り添うように密着し、背中を密着させた状態で自らの熱量を逆流させ相手に伝えた。
「解析できないはずだ……。今の俺は、一秒前の俺ですらないんだから」
蓮の背中から、膨大な力がカイトの体を跳ね飛ばした。
「……あり、え……な……」
カイトの身体が、跳ね飛ばされ地面に転ばされ、意識を失った。
「ちっ・・・」
九条凱はその場を立ち去り、あとに残ったのは、凪へと続く、さらに高く、険しい崖の上の社だけだった。
自分自身という「壁」を乗り越えた蓮。
彼の瞳には、もはや惑いはなく、不知火の火は、より静かに、透き通った青白い光へと昇華していた。




