第十三話 焔覚醒
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・事件等は架空であり、実在のものとは関係ありません
阿蘇の火口から吹き上がる熱風は、もはや蓮の肌を焼く刃ではなかった。
雷火の過酷な修行を経て、蓮の身体は周囲の熱量を拒絶するのではなく、自らの生命活動の燃料として取り込み出力する術を会得していた。
火口の縁に立つ蓮の姿は、以前の面影を完全に脱ぎ捨て、作務衣の裾は熱で焦げ、露わになった腕には、血管に沿って淡い赤銅色の光が脈打っていた。
「……成ったか、小僧」
背後で雷火が、満足げに、しかし寂しげに呟きました。
「お前のその歩みこそが、断たれた世界を繋ぐ唯一の火だ。灰にするな、溶かし、繋げろ」
蓮は、垂直に近い火口の壁から蹴り降りてきた。
かつては死の象徴だったマグマの赤が、今の蓮には生命の脈動そのものに感じられた。
雷火が近づいてきた。
「小僧、お前に見せたいものがある。」
雷火の手には、凪が身に着けていた髪飾りが、無残にひび割れて転がっていた。
「……!これをどこで!」
「ここに来た無礼な奴らの親玉が投げつけてきおったわ、」
『ここに蓮が来るはずだ、不知火を持って日本最古の「風」が吹き抜ける、あの断崖へ来いと伝えろ。凪と不知火の交換だ!』
「と言い残してな、、」
雷火が蓮の隣に立ち、煙を吐き出す火口の先を見つめました。
「風、か……。それは北の果て。かつて神々が風に乗ってこの国を創り上げたという、『神風の杜』のことだろう」




