9 黒の巫女
エルクさんはこの世界の事について王都までの道中に話してくれた。エルクさんが団長を務める王国騎士団は第7騎士団まであるらしく、エルクさんはこの騎士団の中でも純粋な戦闘力では最下位みたいだが、それは部隊のほとんどが治癒術師で構成されている為であるからだとか。その7つある騎士団はどの部隊も個性的らしいその中でも特に第3騎士団には余り関わらないようにと釘を刺された。何故かと聞いても「悪い者たちではないけど命がいくつあっても足りない…会ったら分かるから」と詳しくは話してはくれなかった。
エルクさんは騎士団の仕事の他にもこの世界の歴史を調べている。僕たちの世界での考古学者みたいでこの世界の成り立ちを教えてくれた、僕と涼宮以外の人は女神さまに聞いてあったみたいだけれど…
この世界は大きく分けて魔族と人族に分かれて争い続けているらしい、魔族の中にはその中で特に力を持っている個体、魔王と呼ばれている者はその力を大いに振るい自身の統括する魔族領の発展と相対する人族の生活に大いに影響を与えてきた。数ある魔王の中で獣魔王に関しては、この国の先代剣聖によって討伐が為されたとの事だった。
伝承によると世界から光が消える、エルクさんは恐らく星の位置が関係していると言っていたので、この世界で日蝕が起こるのが200年周期で、その時が魔の力が最も大きくなると言われているこの時期に、女神により異世界人が召喚されている。全ては『ディアス』と呼ばれている人族の女神様が人族の未来を守るために異世界から勇者候補を呼び出していた。いずれにしても勇者たちの敗北または痛み分けで終わっている。特に最悪だったのが200年前のある勇者の裏切りによって人族はかなりの痛手を受けたらしい
「過去の召喚で勇者と呼ばれるものが魔王よりも数が少なかったのも人族側の劣勢の原因ではあるけれど、それは召喚された者の素質の問題だから何も言えないね…」
エルクさんによると400年前は3人、200年前は4人の勇者がこの世界の為、あるいは元の世界に戻るために活躍していた、そして勇者の裏切り…めちゃくちゃ気になる。エルクさんにその事について詳しく聴いてみた。
「あまり語りたくない話なんだけどね…」
前置きをしつつもエルクさんは重い口を開いた
「今から200年前、人族側の完全勝利まであと一歩の所まで行ってた。それはとてもじゃないけれど褒められた方法では無かった、ある召喚者の錬金術師が魔族にだけ効果がある毒を開発したんだ」
「それで、どうしたんだ?」
エルクさんは深く息を吸いゆっくり吐く、更に重くなる口を勇者候補である君達だからこそ聞いて欲しいと言い、続く言葉を紡いだ。
「魔族の国に『黒き雨』と言われているその毒を降らせたんだ、実験は成功しその小さな島の魔族は全滅したらしい、それに気を良くした当時の王は次は魔族領全域にその毒を降らせ無差別に魔族を虐殺し始めた。黒き雨の力により魔族全体の弱体化に成功した。当時の人族たちは大いに歓喜したそうだよ。そしてその力を持って『魔霊樹ユグドラシル』を有する森精人の国に攻め入ろうとした。その時に立ち上がったのがその黒の勇者、魔族たちには『黒の巫女』と呼ばれている人だった。あまりにも卑劣で卑怯で愚かだと…だから彼女は反旗を翻したんだ、魔族の為に」
「それってどっちが悪いんだ……その勇者なのか?王様なのか?」
「それは僕にもわからない。魔族は僕たちの敵だそれは確かだ歴史が証明している…でもどんな方法をとっても良いとは僕には思えない、それは甘い考えなのかな…」
僕ならどうするのだろう。王様に間違っていると断ずるのか?他の勇者と共に別の方法で人類側の勝利をもたらす為に模索したのだろうか…恐らくは全てやったんだろう、それでもうまくいかなくて許せなかったんだ。だから敵である魔族の為に立ち上がったんだろう。
「もしその勇者が裏切らなかったら、この戦いは終わっていたのですか?」
「そう言う者も居るだろうが恐らくはそれはないだろう…勇者と共に彼女も立ち上がったのだから」
彼女とはこの国が建立には既に魔王として存在し今尚、魔王として君臨し続けている『堕天王ルキフェル』、その最古の魔王の1人が人類を殲滅すべく立ち上がった。その脅威は人類の領土の半分は彼女と黒の巫女の手によって焦土と化した、中には国ごと消滅したところもあった。だがその時の勇者の手によって彼女は退けられたそうだ、勇者たちの命引き換えにして。
「裏切った勇者はどうしたんですか?」
「その戦いの後の勇者の痕跡が人類側にも魔族側にも全く無いんだ、恐らくはその戦いで命を落としたのだろう」
戦いの後は人類、魔族両方共に疲弊し争う余裕もなく。数100年間は互いの領土の回復に努めていた。十数年前は魔族と手を取りあって共に歩んでいこうと考える人もこの王国内に居たみたいだけれど、魔族側の裏切りによって破綻したみたいだ。
「もし君たちの中に勇者が居るとしたら、どうか道を間違えないで欲しい、過去の王や彼女『黒の巫女』の様に…おっと王都が見えて来た話の続きはまた機会があるときに」
馬車の窓から身を乗り出すと湖に囲まれた街が見えるその奥の方にが遠くの方に見えてくる
荘厳にして壮麗な城が佇んでいた。湖に架かる橋を渡ると遠くから見えていた街と城を守っている城壁が近くに見えてくる城壁には戦いの時に付けられたのであろう傷が生々しく残っていた。
色々あり過ぎたが僕達は王都ヴェルタニアにようやく到着した。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




