8 エルクさんの正体
意識がだんだんと戻ってくる、酷い風邪を引いた時と似たような感覚だ。瞼が重くて開けられないまだ睡眠を欲しているようだ。オークとの戦いで死にかけて狛井君に助けられたんだっけ?後でお礼を言わないと…体が上下に揺られている、どうやらここは馬車の中らしい、それにしても身体中が痛い、特に右腕の痛みが酷い。早く身体を起こさないと、皆は…涼宮は無事なのか確かめないと。
「う…う……」
身体を起こそうとするが重力が倍になったかと思うほどに身体が重く持ち上がれなかった、うっすらと瞼を開けると温かな光に包まれていた、周りには黒川さんと涼宮そして狛井君が居た。
「おっと動いちゃ駄目だからね、治療魔法を使ってるから骨が変なところに付いちゃうよ」
エルクさんの声が聞こえる体を後方に向けるとエルクさんが手をかざし温かな光を放っていた。
「だから、動いちゃ駄目だって、采配の儀式も受けて無いのに無茶して、止めなかったとはいえ死ぬところだったんだよ」
「そうだぜ、無茶しやがって俺なんかもう死んじゃったのかと思ったぜ」
「涼宮にだけは言われたくないよ、オークに吹き飛ばされた時死んだかと思ったよ」
涼宮の姿を見ると大きなケガなどしている様子は無かった恐らく治療魔法で直したのだろうかそれに比べて余程ケガの状態がひどかったのだろうか、僕は未だに身体中が悲鳴を上げている。
「おれっちはもう治ってんのよ魔法ってすごいのな」
腕をぶんぶん振り回して治ったことをアピールしてくる、隣の黒川さんが申し訳なさそうに俯いていた
「黒川さんも無事で良かった、ケガは無い?」
「ごめんなさい、私のせいで私が動けなかったせいで…」
頭を深々と下げるとその頭を涼宮がぐりぐりと乱暴に撫でた、その光景を見た瞬間黒い感情が…僕が身体が動けないこと良いことに、悔しい僕がやりたかった…万全の状態でも出来る訳ないか。
「こういう時はありがとうって言えばカナちゃんも喜ぶよな、だろ」
「そうだよ、このケガも黒川さんのせいじゃないから全ては先にやられた雑魚の涼宮のせいだからね」
答えると黒川さんは微笑み、エルクさんも笑い、涼宮はそりゃないぜとぷんすか怒ってたと思ったていたら、急に悪い顔でニヤッと笑いだしたこの顔はろくでもないこと考えている顔だ。
「それにしてもカナちゃんは頑張ったからな、頑張ったところじゃない。あれはなんだぁ…ス~パ~頑張ったからな、ありがとうだけじゃ足りないかも知れない、ラブリちゃん、カナちゃんにお礼のキスでもすれば一気に元気になる事間違いないよ」
「「えっ」」
顔に血流が一気に流れるのが分かる黒川さんの方に視線を向けると顔が赤くなっているのが分かった涼宮の方を見るとニヤニヤしているのが分かるエルクさんも後方で笑いを堪えているのが聞こえてくる、黒川さんが意を決したように一歩足を踏み出した、ろくでもない事って言ってごめん涼宮…そしてありがとう涼宮…
「あの…仲が良いことは分かるけど僕が居る事も思い出してほしいな」
声のする方向を見ると狛井君が申し訳なさそうに少し手を上げていた。黒川さんは我に返ったかのように顔を更に赤らめて頭を抱えた。くそう狛井君、居るのは知ってはいたんだよ。空気読んでよと恨み言心の中でつぶやいた。
「あーそうだった、カスミンがカナちゃんの事心配だからって一緒に来たんだった」
「忘れないで欲しいな、さすがに悲しくなるよ……それで体調の方は大丈夫かい?」
「魔法でだいぶ良くなっているよ。だけど右腕はまだ結構痛いね」
右腕を動かそうとしてみるが痛くて力がうまく動かせない、エルクさんが治癒魔法で右腕を集中的に治癒しているがあまり効いてはいないようだった。
「君には魔法の耐性が非常に強いようだね、城に着くまで出来るだけ魔法で治療するけど完全には治らないかもしれない。ポーションで一気に直すのも手だけど骨が変な方向にくっ付いてしまうかもしれないからね。気休めだが自然治癒力上昇を付与した包帯も付けて様子を見よう」
どうやら僕は魔法耐性が高いようだった、攻撃魔法も精神干渉魔法、あらゆる魔法に耐性があるのがメリットなのだが同様に治癒魔法にも耐性を持ってしまうのが最大のデメリットらしいこの世界は魔法がある為、外科的医療の発達が著しく遅れているというのがエルクさんの話から分かった。
「そうゆうことだからあまり無理しないように、耐性のおかげで魔法によるケガはし難いかも知れないけれど、もし致命的なケガをしてしまうと僕達では救えないかも知れないってことを覚えておいて欲しい」
「もしかしてエルクさんって結構偉い人だったりするの?」
涼宮が単刀直入に聞く、実は僕も気になってはいた所だった、他の兵士さんのエルクさんに対する態度だったり、何よりもこの治癒の魔法が他の兵士の魔法と比べて輝きも色の濃さも段違いであった。
「僕かい、別に偉いわけではないけれど、第7騎士団の団長を任されているよ」
本名エルク・メルトヴェイン第7騎士団の団長様は、この僕達とあまり年が変わらないだろう少年だとは、ここにいる僕達の誰もが思いにもよらなかった。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




