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無職でも英雄や勇者になれますか?  作者: チム子


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64 緑の狩人の実力



ミゲルさんは怒りが収まっていないようだった。3バカ勇者がダンジョンに降りてからも、その方向を睨みつけるように見ていた。涼宮も雪待に攻撃された見習い騎士にポーションを与えているが、ケガの状態は余り良くないようだった。


ポーションを与えている涼宮の隣でミゲルさんも見習い騎士に手をかざして淡い光を出している。恐らくエルクさんのような治癒魔法を見習い騎士にかけているのだろう。



「すげーなミゲルさん。治癒魔法を使えたんですか?」


「私の職業は白騎士だからな。昔はディアス教の聖都ユリアナでこの力を磨いていたものさ」


「うう………ミゲルさ……ん」


「もう大丈夫だ。魔法が派手だったわりに、それほどダメージが無くて良かった」


ミゲルさんの回復魔法が効いたのか火傷の後も無くなり、起き上がれるまで回復した。見習い騎士の方の名前はキールさんと言うらしくこのダンジョン攻略も親に言われて嫌々来たらしい。



「ありがとうざいまっす!!おかげで助かりました」


「キールさんこれからどうするんだ?雪待の野郎に目を付けられたから、かなり面倒だぜ」


「そういわれても行くしかないでっす。親にも勇者様との縁を作るために行けと言われていまっす」


「それなら僕達と一緒に行きましょう。僕達も皆に置いて行かれたので不安だったんですよ」


「キールよ良かったな。四葉殿と涼宮殿が居れば安心だな!!がははははは!!」


回復魔法で完全に治してから僕達とキールさんの3人でダンジョン攻略に向かう事にした。しばらく進んでもキールさんの回復に時間が掛ってしまったのか3バカ勇者達の姿は見かけなかった。あの3バカ勇者と一緒にダンジョン攻略するのは勘弁だがシキさんの事は気になる。



「そういえばキールさんの職業って何ですか?」


「自分の職業は狩人でっす!!遠くの敵は任せてくださいっす」


「俺っち達は無職よ!!キールさん弓は持っているけど矢はどこにあるの?もしかして忘れてきちゃった系?」


「む……無職?はっ!!そういえば、黒と青の勇者の傍らには無職の家来が居るって劇で見たような…」


「アマちんの家来か……違うって言いきれないのも悔しいよな相棒……」


「そうだったんでっすね!!嬉しいな!!あの話大好きなんですよ!!そうそう矢の事でしたよね。見ていてください弓を引いて魔力を込めると………」


キールさんが弓を引くと緑色の魔力で作られた矢が現れた。そのまま放つと矢が壁に刺さって霧散する。矢の速度もかなり早かったし壁の傷を見る感じ威力も申し分なさそうだった。



「すげぇよキールさん!!魔法じゃないよな!!どうなっているんだ?」


「自分は魔法の才能は無かったでっすが、魔力を凝縮させる才能があったっす。自分は緑の狩人だから風属性の矢を作ることが出来まっす」


キールさんの弓矢はゴブリンやコボルト相手では敵では無かった。本人がダンジョン攻略は初めてと言っていたが、その強さはこの前行った40階層でも通用するような威力をしている。レベルもどんどん上がって行ったので速射や追尾する矢のスキルなども増えていった。



「相棒よ……これが職業を持つものと持たざる者の違いってやつなのか?」


「言うな涼宮……悲しくなるだろ…僕達は僕達のスピードで強くなるんだい…」


階層主が居る第5階層まで降りていくと治癒魔法を受けているクラスメイトと騎士団員たちがいた、ケガ人は少なくないが死者はいないようだった。3バカ勇者たちは何とかダヴラス・ホーンを討伐することが出来たみたいだ。


3バカ勇者たちは作戦や戦略などは考えていなくて皆にダヴラス・ホーンに向かって攻撃しろとしか言ってなかったみたいだ。逃げようとすると後ろから魔法が飛んでくるために必死で戦っていたのだと言っていた。



「止めの一撃はあいつらがが持って行くしよ……何なんだ?あれが勇者なのかよ…」


「雪待のやつ50階層の階層主戦の為に体力を温存するとか言っていたけど……くそっマジで痛てぇ…」


「本当に勇者殿達に付いて行って良いのか?同郷の者にまでこの仕打ち……」


あの3バカ勇者への罵詈雑言がクラスメイトや見習い騎士の方たちの口から次々と出て来る。当の本人たちはここに居る人達に40層まで死んでも降りて来いと言い残して、無事だった者達と一緒に次の階層に降りて行ったそうだ。



「雪待の野郎……俺たちだけじゃなくて他の皆にも迷惑を掛けているのかよ」


「僕達も先に向かおう、このままだと死人がいつ出てもおかしくないよ」


「自分もいきまっす!!見習い騎士仲間を放っておくわけにはいかないっす!!それにあの勇者たちと一緒に居るシキ先輩も心配でっすし」


「キールさんはシキさんの事知っていたの?俺っち達、シキさんの騎士団寮仲間なんだぜ」


「シキさんは見習い騎士団になって初めて優しくしてくれた先輩でっす。同じ探索系の職業の右も左も分からない自分に色々教えてくれてそしてこの本も頂いたっす」


キールさんの右手にはクイナ列伝があった。シキさん右も左も分からない見習い騎士にクイナさんを布教していたようだ。本には付箋がいっぱい挟まっていたのでかなり影響を受けているようだ。



「キールさんはシキさんが平民出身なのあんまり気にしてないんですね」


「母親が平民出身なので自分は余り気にしてないでっす。気にしているのってアンドラス宰相派の貴族ばかりでっすからね。自分は代々王家派でっす」


キールさんによると簡単に言うと王家派は実力至上主義でアンドラス宰相派は貴族至上主義のようだ。騎士団長の多くはアンドラス宰相派が多いみたいだ。王家派は最近やっと盛り返してきてはいるのだが力ははまだまだなので、勇者達を何とかして王家派に取り込みたいって話らしい。



「親に言われて来たものの、個人的にはあの勇者殿達とは仲良くなりたくないでっす」


「貴族も大変なんだな俺っちには出来ないな…」


10層まで降りて来ると、また何人かのケガ人が階層主の部屋で治療を受けている。ファルマキ・スラッグにやられてしまったらしく毒状態になってしまって苦しんでいるようだ。


「おいおい大丈夫かよ!!解毒ポーションは持ってきていなかったのか?」


「涼宮か……解毒ポーションなら持ってきていたけど雪待達に持って行かれたんだ」


「そうよ!!あいつら準備とか何もしていなくて、私達から全部奪って行ったのよ本当にサイテー」


今度は仲間のはずのクラスメイトのみんなからアイテムを奪って行ったそうだ。階層主の事を全く調べていなかった灰崎がファルマキ・スラッグに対してスキルで切り刻んだところ、体液が皆に掛かってしまったようだ。そのせいで3バカ勇者含む殆どの人が毒状態になってしまったようだ。



「俺たちは勇者だから優先して解毒しろって……灰崎のヤツ!!騎士団の人に止められていたのに調子に乗ってスキルで攻撃するから………ぐはっ」


「もう喋るなって。ほらあと少しあるから使ってくれ…」


「僕は上の階に行って助けを呼んでくるよ。もしかしたら5階層から解毒魔法が使える人が降りてきているかもしれないし。涼宮は皆にポーションを飲ませて、ここに置いておくから」


「自分もいきまっす!!探索スキルで誰かいないか調べまっす」


ここは涼宮に任せて僕とキールさんの2人で上層に助けを呼びに行った。運が良いことにすぐ近くまで降りて来ていたようだったので、すぐに毒状態の皆の下へ連れて行った。


このダンジョン攻略に来た半数がこの10階層で倒れてしまっている。このままでは攻略できる状態でなかったので皆が完全に回復するまで休むことにした。



チム子です。

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