65 勇者達の蛮行
クラスメイト達や騎士団見習いの毒は完全に治ったが、体力はまだ回復しきれてはいなかった。このままここに居るよりも21階層の魔物の居ない階層を目指した方が良さそうだが階層主戦で相当堪えたのか皆の腰が重かった。
「みんなここに居るよりも「魔物の居ない階層を目指そう。そこに行けばアイテムも買えるし、お金さえあれば衣食住も用意してもらえる」
「そうだぜ!!湖が綺麗だし体力を回復するのもそこの方が良いだろ」
「俺たちはもう雪待に付いていけない…」「怖いよ……戦いたくないよう…」「勇者殿のご機嫌取りの為に騎士になったのではない…」「身体が……重い……」
見習い騎士の方もクラスメイト達ももう我慢の限界を迎えているようだ。まだ10階層、目指す階層は50階層なのに早くもバラバラになりかけている、あの3バカ勇者と先に行った人たちも心配だ。
「この先の11層から階層主の部屋までは僕達が先行して行くよ。魔物の数を減らしておくから付いて来てくれ。涼宮とキールさんもそれでいいかな?」
「お前たちだけで大丈夫なのか?無職………だったよな?」
「俺っち達に任せなさーい!!もう20階層なんて何回も来ているからお茶の子さいさいよ!!」
「今の自分がどのくらいできるか分からないですが頑張りまっす!!」
僕達は下層を目指して降りていく。残ったメンバーの中にも探索系の職業の方が居たので問題なく付いて来てくれるはずだ。僕達は出来るだけ下層へのルート上の魔物の数を減らす事だけに専念すればいいだけだ。
「相棒……魔物の数が先に進むほど多くなっていないか?」
「おかしいですね?下層への階段の周辺にコボルトが20匹ぐらい居ますよ」
「まさかあいつら、魔物を引き連れて下層に逃げていったんじゃ」
「それなら納得でっす…でもモンスターを故意に引き連れて一か所に集めるのは、ダンジョンで御法度の行為でっす。冒険者にバレたら袋叩きになりますよ」
「俺っち達には好都合だぜこんなに集まってくれてるなら。まとめて始末してやるぜ」
コボルトたちに涼宮の飛翔斬とキールさんの風の矢で攻撃していく。近づいて来た魔物を僕が黒剣で倒していった。キールさんの遠距離攻撃と涼宮の中距離攻撃で殆どのコボルトたちは倒れていったので僕の出番は少ししかなかったけど…
次の階層もその次の階層も下層に続く階段の前に魔物が集まっていた。そして遂に20階層ダイナモス・アラクネが待ち構える階層主の部屋の前までやってきた。クラスメイト達は疲れ切っているのか座り込んでしまっている。
大蜘蛛が雪待達に糸を吐きかけて動きを封じようとするが雪待の魔法で糸を燃やして防いでいる。緑谷も自身の風魔法で攻撃するが大蜘蛛の外骨格が堅すぎるせいかダメージが入っているようには見えない。
「何なんだこいつ!!堅すぎるだろうエクスプロージョン!!」
「クキャキャキャキャ!!」
ダイナモス・アラクネは爆炎の中から糸を吐き出し緑谷を締め付ける。身動きを取れなくなりパニック状態になってしまって魔法を連発するがすべて避けられてしまっていた。雪待が面倒くさそうに魔法で緑谷を縛っている糸を燃やして今度は緑谷と共に魔法を放つ
「やるぞ緑谷!!あのおっさんから教えてもらったこの魔法で奴を仕留める『フローガ・ヴァント』!!」
「分かったよ雪待君これで終わらせる『アネモス・ウインド』!」
雪待の炎を緑谷の風魔法が取り込み炎の竜巻になってダイナモス・アラクネに襲い掛かった。雪待のエクスプロージョンの魔法では歯が立たなかった大蜘蛛も二人の魔法には敵わなかったようでそのまま倒れてしまう。
「おいおい…もう終わっちまったのか?俺様にも残しておけよな」
「僕と雪待くんが力を合わせれば階層主なんてモブモンスターと同じだよ」
「俺を煩わせやがって……何もかもこいつらが役に立たなすぎるからだ。この程度の雑魚に何時間も掛けやがって!俺達は50層まで力を温存しておきたいって言ってるよな!!」
「お前らは勇者だろうけど俺たちは………」
「言い訳をするとか本気で俺を怒らせたいのか?お前も殺したら少しは経験値になるか?……」
「もう止めろよな!!これ以上、皆を傷つけたら俺は……」
涼宮が雪待の蛮行に耐えきれずにクラスメイトと雪待の間に割って入った。雪待の眉間の皺が深くなっている。分かりやすく不機嫌になっているようだ、だが僕達の存在に気が付くと表情を一変させた。
「おやおや誰かと思いきや、青と黒の金魚のフンの涼宮君と四葉君じゃないか!!俺は感動したよ!!勇者の力に頼らずにここまで逃げずに来るなんて…」
「雪待……皆に迷惑を掛けるのはもう止めてくれ。このままだといつ死人が出てもおかしくない」
「迷惑だと!!俺様や雪待がこいつらに迷惑を掛けられてんだよ!!」
「そうだよ!!四葉も見ていたよね?僕と雪待君の魔法があればここのダンジョンの階層主なんて簡単に倒せるんだから!!早く50階層の階層主を倒して、僕の英雄譚も城下町で劇にして貰うんだ。だから邪魔をしないでよね」
「俺たちは歩みを止める訳には行かない何たって俺たちは勇者だからな!!付いてこられない者や役に立たない者は切り捨てていく」
「あらあら……なかなか来ないって思っていたら、こんな所で痛い子達の相手をしていたのね。カナタ君」
一触即発の雰囲気の中に入ってきたのは第3騎士団副団長のフレイさんだった。ミゲルさんが第3騎士団も僕達の助けにすぐに入れるように魔物の居ない階層まで内緒で付いていくと言っていたが、内緒とは何だったのか?フレイさんの事だから何か考えが…
「誰だ?てめぇは四葉の知り合いかぁ、なんで袋なんか被ってんのか知らねぇが身体つきは良いな、俺様が直々に遊んでやっても良いぜ…」
「フレイの姐さんに何言ってんだよ!!お前なんて遊ぶどころか身ぐるみはがされてボロボロにされるのが落ちだぜ」
「あらあらカイちゃんったら……弱いものいじめなんて、そんな酷い事あまりしないわ」
「誰が弱いってええええ!!殺すぞおおお!このアバズレがああああ!!」
フレイさんに向かって灰崎は自身の刃の腕で切り付けるがフレイさんは人差し指と親指で優しく摘まむと灰崎はその場から動けなくなってしまう。そのまま持ち上げて蹴り上げると灰崎は白目を剥いて悶絶してしまう、男子なら目を背けてしまうところに蹴りが入ってしまったようだ。
「てへっ、やり過ぎちゃったかな?」
「どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがってインフェ……」
「ダメよ……女性には優しくしないとね…殺されちゃうわよ」
どこから出て来たのかフレイさんの両刃斧が雪待の喉元に押し当てられている。少しでも顔が前に行こうものなら断頭台のように首が落とされてしまうだろう、雪待は額から汗が滲み出て来ている。
緑谷は2人に圧倒的な力を見せつけているフレイさんに対して恐怖を抱いているのか小刻みに震えているばかりで何も出来ないようだ。
「フレイさんこのくらいにしておいた方が……ひそひそ(内緒で付いてくるはずでは…)」
「あらあらそうだったわ!!21階層で弱い勇者に巻き込まれてかわいそうなカナタ君をすぐに助けられるように待機しておくんだったわ」
「相棒が気を利かせて小声で喋っていたのに…フレイの姐さん全部声に出して言っちゃってます…」
「てへっ」
自分の頭に拳を当てて可愛い仕草でごまかそうとしているが、3バカ勇者にすべて聞かれてしまったようだ。プライドが限界突破しちゃっている雪待は頭に血が上り過ぎて茹でたこみたいになっている。この危機をどう乗り切るか考えるだけで頭の痛みが治まらなかった。
チム子です。
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