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無職でも英雄や勇者になれますか?  作者: チム子


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62 いつしかの約束



僕達がホイロス城砦からヴェルタニアに戻ってきたのは櫛枝さんのタイムリミットを2日ほど過ぎた頃だった。僕達が急いで病院へ駈け込んでいくと櫛枝さんはベットの上で申し訳なさそうに手を振っていた。


天清さんは櫛枝さんの無事を確認すると抱き着いた。櫛枝さんはどうしていいのか両手の行き場を困らせていたが天清さんの頭に背中に置いて一緒に泣いてしまう。



「アイリも来なさいよ!!本当に良かったあああ」


「本当に良かったよ……」


天清さんに手を引かれて、黒川さんも一緒に3人の輪の中に入りお互いを抱きしめ合い泣いていた。僕達は邪魔にならないように病室から出ていこうとするが、一人の男が僥倖だか目の保養だとか訳の分からないことを言ってなかなか出ていこうとしなかったのを無理やり連れていく。



「なかなか良いものだな!!ゆ……いや女子たちの友情は!!私も一肌脱いだ甲斐があったというものよ!!」


「クルミちゃんも治って良かったぜ!!体力が魔素に奪われちまったから回復するのに暫くかかっちまうみたいだけどな」


「一時はどうなるかと思ったけど、涼宮とマサヨシに任せて良かったよ」


「クルミちゃんが治って本当に良かったっすね!!」


「そうだとも!!私の偉大なる活躍でってぎゃあああああああああああああああ!!!」


いつの間にかいたクイナさんにマサヨシは超反応で逃げようとするが、さすが探索系の伝説《レジェンド》なのか一瞬でマサヨシを拘束してしまった猿轡までされている。マサヨシはクイナさんから逃げて来たと言っていた、連れ戻しに来たのだろうか?



「ふんがふんふんごふんふん………」


「なになに~美し過ぎるクイナ様、許してくださいっす。死んだ方がましな任務でも、どこでも連れて行ってくださいっすって言ってるんすね」


「ふんふんふん!!!」


マサヨシは首を横にぶんぶん振っているがクイナさんは満足げに頷いている。クイナさんからマサヨシが逃げられるわけが……そう逃げられるわけが無いのになぜマサヨシは騎士団寮まで逃げてこられたんだ?


「クイナさん………」


「あ゛ぁ!!」


「クイナ先輩は逃げたマサヨシを連れ戻しにここまで来たんですか?」


「逃がした訳じゃないっす!!クイナ先輩も鬼じゃないっすからマサに休みをあげていたっすよ。2日ぐらい休みをあげようとしていたっすけど、急な任務が入ったのでそっちに行ってたっす」


ウインクするクイナさんの手には指輪の様なものがあった。セラフィ・リングだ。櫛枝さんの危機を聞きつけたクイナさんがこの国には無いと言われていた指輪を他の国まで取りに行ってくれていたのだろう。



「後輩ちゃんもマサも強くなった見たいっすね!!マサは今度はクイナさんの為に一肌脱ぐ見たいっすから借りていくっすよ」


「ふがふがふ………カナタ氏!!助け…」


「マサやんも大変そうだな……」


クイナさんに引きずられて出ていった。次に会う時にはまたあの瘦せこけた姿になってしまうのだろうか?空中で十字を切り手を合わせておこう、振り向くと涼宮も同じ事をしていた。


騎士団寮に帰るとベットに飛び込む、騎士団寮に戻るとやはりシキさんを思い出す。今どこに居るのだろうか?僕と一緒でユーリさんの働きにより罪は無くなったはずなのだがまだ戻ってきていないようだ。


ダンジョンから戻って来てから数日後のある日、険しい表情の天清さんに声を掛けられた。



「そういえばカナタ。色々あって離れ離れになっちゃったけどアイリとの約束を忘れてないよね?」


「………………何だっけ?」


「アイシクル・バインド!!」


「ぎゃああああああああああ!!何か月も前の事だったから…でも……お……思い出したよ!!城下町のスイーツ……」


「思い出したみたいね!!カナタもホイロス城砦でいろいろあったみたいだからね。そんな時には気分転換が必要よ!!明日にでも行ってきなよアイリには私から言っておくわ!」


次の日、城下町の噴水の前で黒川さんが待っていると天清さんから聞いたので向かう事にした。僕が同じ騎士団寮に居るんだから一緒に行けばいいのにと口に出してしまったときに。天清さんの魔法が頬を掠めたので余計な事は言わずに考えずに大人しく噴水のある場所に向かう事にする。



「ごめん黒川さん。待たせしまったかな?」


「ううん、今来たところだよ」


何なんだこの状況は!!まるでデートではないか!!マサヨシみたいな口調になってしまっているが、そういう事にしておこう。黒川さんはいつものダンジョン装備ではなくて薄いおしゃれな服装をしている……一目した時に女神が現れたのかと幻視してしまったが現実だ……ありがとう天清さんいや桔梗様!!


「そ……そろそろ行こうにょ……」


「くすくす…」


言葉を噛んでしまい顔が熱くなっていくのが分かる。黒川さんにも笑われてしまい頭が真っ白になって行った。ピンチになったら開いてと天清さんに言われたのを思い出し、昨日持たされたメモ書きを開く。


(カナタの事だからアイリに会って直ぐにこのメモを開いてると思うけど…とりあえず露店のある通りに行ってみたら?何かアクセか何か身に着ける物を買う事!!)


さすが桔梗様!!出会って直ぐにってなぜ分かった?もしかして予知能力者なのか?メモは続いているので目を通しておいて、とにかく今は露店の方へ向かおう。アクセサリーだよな僕のセンスで大丈夫なのか不安なのだが……


そうだあの時の指輪…いまだに返せてなくてポケットに入れて持っているけど、元々は黒川さんの物だったよな。子供の頃から好みは変わっているかもしれないけれど、それに近いものをあげればいいのでは……我ながら冴えているぞ!!



「黒川さん、露店のある通りに行きませんか?日頃のお礼も兼ねて何かプレゼントとか……はは…」


「お礼をするなら四葉君に助けてもらってばかりの私の方で……」


「じゃあ、お互いに感謝の気持ちって事で何か今日の思い出になるものを買いましょう」


黒川さんと僕は露店の方へ歩いていく。桔梗様のメモをもう一度見てみると先程の会話の流れが寸分違わず書かれていた。黒川さんの会話も桔梗様の想定内らしくスマートにプレゼントを渡せるようになっていた。


※には初めてのプレゼントだから値段が高すぎると重いから普段使いしやすいようなものにする事と書かれている。意気揚々と露店でプレゼントを吟味していると、冒険者パーティがこちらに気づくと小走りで近づいてきた。


「黒の勇者様ですよね!!僕らは魔物の居ない階層で(セーフティ・ポイント)で勇者様と一緒にあのの化け物と戦っていました!!あの時の言葉で折れていた心を奮い立たせることが出来ました!」


「俺もあの場所に居ました!!魔物たちを蹴散らした青の魔法も凄まじかったでしたよね。今日は青の勇者様は一緒じゃなかったんですか…あの時から俺の憧れで…」


「私も!私も居たんだよ!!あの言葉好きなんだ!大切な人を……大好きな……」


「あ~~ああ~~あ~」


黒川さんは遮るように大きな声を出している。なんて言ったか気になったので冒険者たちに聞いてみたが黒川さんが口に人差し指を近づけて秘密にするようにと圧力をかけていたので聞けなかった。


「なるほど彼がそうなんですね!!今や黒の勇者様と青の勇者様は大人気ですからね。あの戦いの事を吟遊詩人に歌われていたり、劇になったりしてますよ!!」


「黒の勇者様が居るぞおおおおお!!」「俺もあの劇を見に行ったよ感動した」「歌も良いよねぇ~」


黒川さんは顔を真っ赤に染めて頭から湯気が出ているように見える。冒険者たちの話は本当の様で黒の勇者を一目でも見ようと大勢の人々が集まって来る。終いには騒ぎを聞きつけた騎士団の方も来てしまい黒川さんの護衛まで始めてしまった。


桔梗様のメモ書きには露店の後にスイーツの有名店に行くことになっていた。その後に行く予定だったらしい夕日が見える絶景スポットの地図まで書き込まれている。


メモ書きの最後の※には決めちゃいなさい!!とだけ書かれていたが意味は良くわからない。だがこのような騒ぎになってしまったので何もできずに僕達は騎士団寮に逃げるように帰った。



チム子です。

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