61 決死の脱出劇 Side 涼宮檜人
魔物のいない階層のはずだが、町は襲われていた。俺とマサやんはクルミちゃんを助けるために上層へ向かう、町の人達はあの出目金と戦っているが形勢は不利なようだ。魔物や出目金の攻撃を受けて倒れてしまっている人たちも居た。
「このまま行って良いのだろうか?私達にも出来ることが……」
「相棒が居るから大丈夫だ俺たちはここを抜け出して早くクルミちゃんの下へ向かおう」
「キュルルルルルゥウウウウ」
あの出目金が俺たちの事に気づいたようでこちらをじっと見ている。町の人の総攻撃で体液をまき散らすが直ぐに時間が巻き戻ったかのように傷口は塞がっていく、出目金は口から泡のようなものを出している。泡が物体に当たると弾けてその部分が抉れるように消えている。町にはアンデット系の魔物やケノス・エルフたちが押し寄せるように侵入していた。
「ギュルルルルルルルゥウウウウ!!!」
口から大きな泡を出して俺たちの方へ放ってきた。間一髪で上層に入ることが出来たが出目金の攻撃で魔物が出ない階層への入口が完全に塞がれてしまった。
このままではあの町の人達も逃げることが出来なくなってしまった。何とか邪魔な大岩を取り除こうとするが俺たちの力ではどうすることも出来ない。目の前には昆虫系の魔物も下層へ降りるためなのか階層主の部屋に集まってきている。
「何なんだ?俺たちの事が見えてないみたいだぜ」
「なるほどな………奴らには魅了のステータスが付与されているようだぞ!!だが道が途絶えたからか魅了が切れてしまいそうだ。その前にここを離れようぞ」
階層主の部屋を抜けて砂漠地帯に入る。虫たちが下層に向けて大移動していた。何匹か魅了が切れた昆虫の魔物に襲われてしまう、刺激を与えないようにマサやんのスキルで魔物の群れを出来るだけ避けつつ上層を目指していった。
「魔物が出ない階層への道が途絶えたのは案外良かったかもしれないな」
「うむ!!敵の増援を防ぐことが出来たわけだからな!!カナタ氏達の援護にもなった事だろう」
「そうだな俺たちはこのまま上層へまで行くしかない。後の事は皆に任せるぜ」
砂漠地帯を抜けて森林地帯に戻ることが出来た。この辺まで来ると魅了状態の魔物は居なくなっているようで、コボルトたちが俺たちに向かって攻撃をしてくる。マサやんもレベルが上がった影響なのかコボルト相手なら戦えるようになっていた。
「よっ!!はああああ!!喰らえ我が光いいい!!眩しかろう!」
「マサやんやるう!!俺も負けてられないな!!よっと!!」
コボルトたちはマサやんの光に目をやられてしまっている。魔力の調整によって光量を調節できるらしいが隣にいる俺まで目がやられそうになるがコボルトたちには効果てきめんだった。
「砂漠地帯が予定よりも早く上がってこられたのは良かったな!!」
「ここの魔物なら今の私なら何とかなりそうだ!!だぁ~はっははははは」
このまま森林地帯を駆け抜けて5層のダヴラス・ホーンの居る階層まで駆け抜けていった。階層主の部屋まで来ると目の前にはダヴラス・ホーンが待ち構えている。まだ復活するには早いはずなのに…
「あれがダヴラス・ホーンだな……私たちだけで勝てるのか?」
「ここを抜けるしかないからな…でもマサやん、俺たちは階層主に勝ちに来たんじゃないからな」
「そうか!!通り抜けさえすればよいのだな!それなら私も行けそうな気がするぞ」
俺たちは階層主の部屋に入っていく。ダヴラス・ホーンは後ろに振り返り俺たちを視認すると雄たけび上げて両刃斧で襲い掛かって来る。この攻撃は前にも見ている。避けてがら空きの腹に攻撃を加えるが、鋼のように固くて弾かれてしまう。隣を抜けようとするも相手の方が素早くて回り込まれてしまった。
「ダヴラス・ホーンは物理攻撃が効かないようですな!魔法があればよいのだが…私も涼宮氏も使えない…」
「前は効いたんだけどな。怯んだ隙に通り抜けようと思ったんだけど仕方ない、こうなったら……」
敵視を完全に俺の方に集めて、あの攻撃を引き出さないといけない。ダヴラス・ホーンは余裕の表情で鼻息を荒くして俺たちを見ていた。
「へいへいへい!!牛ちゃんよおおお!!これでも喰らいな飛翔斬!飛翔斬!!飛翔斬!!!」
「ブヒィイイイイイイイ!!」
前もそうだったがこの魔物には挑発がかなり効くようだ、遠くから効かないとはいえ攻撃をされて怒り出したダヴラス・ホーンの瞳が赤く染まってきている。姿勢を低くして突進攻撃の準備をしている。
「お~またまた豚ちゃんになっているじゃないの?飛翔斬!!」
「ブルルルブモォオオオオオオオオ!!」
両刃斧を投げつけて来るが距離が開いていたので軽々避けることが出来た。しかし壁際に追い詰められてしまう奴の狙いは壁際に追い込んでからの突進攻撃だろう。高速で近づいてくる奴の大角だが俺の狙いもこの場所にある。相棒もこの場所で奴を誘い込んでいた。近づいてきたら奴の目に向かって飛翔斬を放って後ろの壁に奴の大角を突き立てさせる。
「このまま突っ込んできなさいよ!!おまけの飛翔斬!!」
「ブモォオオオオオオオオオオ!!!!」
「効いては無いではないか!!涼宮氏よ目を瞑れえええ!!マサヨシィイイフラッシュウウウウ!!」
マサやんが虹色のでダヴラス・ホーンは思わず目を瞑ってしまった。その隙に俺は懐へ潜り込み突進攻撃を避けることが出来た。目は皮膚と違って攻撃が通るかと思っていたが結果オーライだ、マサやんのおかげで命拾いしたようだ。
「ありがとよ!!危なかったぜマサやん!!奴の角が壁に刺さっている内にずらかろうぜ!!」
「だぁ~はっはははは!!ダヴラス・ホーンよお前との対戦は次回に持ち越そうぞ!!」
階層主の部屋を抜けてその足で俺たちはダンジョン外まで行くと辺りは暗くなっていた。ヴェルタニアに戻る馬車は無くなっていたので徒歩で帰るしかない。マサやんに明かりになってもらってクルミちゃんの所まで走って向かった。
「クルミちゃんは大丈夫か?先生!!」
「お仲間の方ですな……辛うじて息をして居るって感じですな……今夜を越えられるかはもう……」
「涼宮氏!!早くセラフィ・リングを櫛枝氏に!!」
「そうだな!!クルミちゃん今、楽にしてやるからな」
クルミちゃんの呼吸は浅く早くなっている苦しそうだ、心臓の方から根のように黒い何かが生やしている。セラフィ・リングを指に着けてあげると黒い何かが指輪に吸い込まれていくと限界を迎えたのか指輪は砕け散ってしまったようだ。
「………………ううん……涼宮……くん?」
「私も居るぞ!!」
「クルミちゃん!!大丈夫?!」
「倒れた所までは………覚えているけど……涼宮君が助けて……くれたの?」
「私も頑張ったぞ!!!」
「良かった!!めちゃくちゃ心配してたんだぜ!!黒いの消えたし大丈夫だよな?」
「あり…………がと……涼宮………くん………すうすう……」
「お~い私の事もここに居るのだが……寝てしまったようだな」
相棒たちが戻ってきたのは2日後だった、向こうは向こうでかなりの無茶をしていたようだ。ヴェルタニアは今回のダンジョンの異常の件を調査するらしい。クルミちゃんも本調子ではないが、安静にしていれば良くなるって医者のおじいさんが言っていた。数日後にあの3バカ勇者からの招集が来た、嫌な予感しかしない。
チム子です。
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