6 襲撃
馬車の外では先行部隊が襲われたと報告があってからか、周りの兵士たちは慌ただしく戦闘準備を始めている、武器を手に持つものや、格好が違うので恐らく衛生兵だろうか、先行部隊で戦ってケガをした人を簡易的に作った兵舎に運んでいる。
「すまない誰か手を貸してくれ、治癒術師を呼んでくれないか」
兵士が傷だらけになりながら助けを求めていたエルクさんに続き僕たちも馬車を降りる、別の馬車からは治癒術師と思われる人が負傷している兵士の方へ駆けつけている、兵士の近くに別の少女が居た。同じ学校の制服を着ている。
「櫛枝じゃねえか、まさかケガを…おい、大丈夫か?」
同じクラスの櫛枝胡桃さんみたいだ、涼宮は慌てて近づきどこかケガをしてないか櫛枝さん体をぺたぺた触れている、涼宮のキャラだから許されているけど違う人がやったら犯罪だなと思いつつも命に別状はなさそうだ、しかし櫛枝さんの様子を見ていた涼宮が目を見開き叫び出した。
「メディーーーック!!手にケガをしている至急治療されよ!!!」
治癒術師と僕は慌てて櫛枝さんに駆け寄り手を確認すると、紙で手を切ったくらいの切り傷があった、涼宮は櫛枝さんの手を握り、治癒術師にここに傷があるよと指を差し主張する、治癒術師は苦笑しながらも治癒魔法を櫛枝さんに掛けた、手を柔らかな光に包まれたと思ったら傷は無くなった
「すげーな、これが魔法か…クルミちゃん顔が赤いよまさか毒…メディーーーーーック!!!」
櫛枝さんは大丈夫だからと断り負傷した兵士は治療中の為、櫛枝さんがここに来た理由を説明した。
馬車は全てで六つ用意されていて、何かあった時の為に直ぐ退却できるようにと二つに部隊を分けて時間差で円形闘技場を出発していた。先行部隊の馬車にはオルキア王と直属の騎士団、後行部隊には護衛の為に第7騎士団が、僕達召喚者も先行と後方で別れて乗っていた。櫛枝さんが言うには先行部隊がオークの群れに襲撃されたみたいだ、騎士団が対処しているが戦況はあまり良くないみたいで、後方部隊は別ルートからの退却と第7騎士団から何名か増援が欲しいとの事だった。
「増援には私が行こう、君たちは別ルートで王都へ向かってくれ」
エルクさんが増援に向かうみたいだ、僕は逃げる事しかできないのか…涼宮の言っていた通り後悔はしたくない。行っても足手まといにしかならないかもしれない。でも大切な人たちが傷つけられたら僕は耐えられるのか?でも今は櫛枝さんを馬車に乗せて別ルートで逃げないと行けない。
「……分かりました、僕達は王都へ行きます、櫛枝さんケガは無いんだよね?立てる?」
「私は大丈夫、でも早く助けに行かなきゃ、先行の馬車には狛井君と黒川さんが…」
気付いたら僕は駆け出していた、後ろの方でエルクさんが叫んでいる、隣には涼宮が同じく駆け出していた、僕たちは目が合い思わず吹き出していた、幼い頃に同じように色んな所を涼宮と走り回っていた事を思い出した、僕の中で何かが進む音が確かにした。
「オークってどんなのかな?やっぱでかいのか?」
涼宮はいつもと変わらない調子で話しかけてくる負傷した兵士達をみるとそんな生易しい者では無いのだろうでも、知っている人たちが傷ついたり、死んでしまう方がよほど怖かった、涼宮もそうだと思う。その証拠に軽口は言っているがさっきから手は震えている、僕も手どころか足も震えて何度も転びそうになっていた。
「待ちたまえ、君たちが行っても傷つく者が増えるだけだ」
後ろの方から馬に乗ったエルクさんがやって来た何も考えずに走って来たけれど先行の馬車とは結構離れていたから馬で乗ってくるのは当たり前か…他の馬に乗った兵士たちも続々やって来た。
「俺達も行く、カスミンやラブリちゃんが危ない目にあってんだ、助けに行かないと」」
「僕も何が出来るかわからない…でも後悔はしたくないんだ…それに僕たちは召喚者だから何か役に立てるかもしれない、だから一緒に連れて行ってください、お願いします。」
僕たちの熱意に負けたのかエルクさんは少し考え、深く溜息を吐いた、諦めたかのように両手を上げ、まいったと言い、僕たちを馬に乗せてくれた、馬上では僕たちに一振りずつ剣を持たせてくれた。敵のオーク数は10体以上、魔族だが知性が低く普段は群れて狩りをする事が無いみたいだが、なぜか群れで襲ってきている、体長は3メートル、力は強大で決してまともに受けては普通の体ではまず耐えられない。
「怖いかい?今なら引き返せるがどうする?私はその方がよいと思うが」
エルクさんが改めて覚悟を問う、僕はもう迷わない、助けるんだ昔に夢見た勇者や英雄みたいに。涼宮と視線を合わせるお互いに頷きこのまま助けに向かう意思を伝えた。
「敵が見えたら直ぐに戦闘を開始する、無理だと思ったらすぐに退却してくれ」
「了解であります、ちょっち怖いけど俺っちも頑張るぜ、ヤバかったらすぐ逃げる!」
相変わらずの軽口を叩く涼宮にエルクさん達が苦笑する緊張で強張っていた他の兵士たちも笑っている
自分自身も怖いはずなのに、こうして涼宮は皆の緊張を解いていく僕も少し緊張が和らいだ。
暫く走り続けていると見えて来た、オークが何体か倒れている、奥の方ではまだ戦闘が続いているようだ剣戟の音が聞こえる、先行の馬車は大破している、嫌な予感がよぎる、皆は?黒川さんはどこにいる?距離はまだ遠い、兵士の皆も距離が近づくにつれて手綱を引いている手に力が入っているのが見て取れた。
「私達はオークと戦闘に入る、君達はここで降りて、他の召喚者救出に向かってくれ、死ぬなよ」
エルクさんは僕達を降ろすと剣戟の音がする方へ他の兵士の方と向かって行った
「涼宮、とにかく馬車の方へ行ってみよう皆が待っているかもしれない」
「おっけい、早く行こうぜ、ヒーローは遅れてくるもんだけど遅れすぎて誰も救えないとか洒落にならないからな」
馬車の前に着くと1体のオークの死体があった、馬車は破壊されつくしていたが、クラスメイトの姿は見えなかった、先行部隊の馬車は全部で3台ここにあるのは壊されている馬車は1台だけであった、残りの2台はどこにあるのだろうか、もしかしたら、残りの馬車で退却したのか?
「カナちゃん!!向こうにもう1台馬車が横転している、オークに襲われている、ヤバいぞ早く行こうぜ助けないと!!!」
涼宮の指し示す方向を見ると馬車があり、オーク3体に襲われていた。兵士達が決死に応戦しているが、兵士たちが何人か倒れていて劣勢なようだ。1人また1人と兵士が倒れて行った、兵士が守っている背後を見るとクラスメイト達が身を震わせ隠れていた。その中には黒川さんの姿も見えた…




