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無職でも英雄や勇者になれますか?  作者: チム子


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54 階層主ダイモナス・アラクネ



騎士団の方が先行して僕達を連れて行ってくれるそうだ。表向きは新人騎士団員のダンジョン訓練という事にしてあるみたい、31階層から難易度が跳ね上がるので30階層までしか許可出来ないそうだ。


僕は黒剣を携えて第7騎士団の後を追いダンジョンの40階層まで目指していく。ホイロス城砦で鍛えた短剣の方が戦いやすいはずなのだが、ランカさんを思い出してしまうので短剣を持つ気にはなれなかった。



「相棒!!一緒にダンジョンに潜るのは久しぶりだよな!!」


「そうだな。前とは違って今回はエルクさんの部隊も来てくれたし、早く40階層に行って櫛枝さんを救おう」


「私はダンジョンは初めてなのだが……何かあったら守ってくれよカナタ氏」


「部長もクイナさんに散々鍛えてもらったんでしょ。ダンジョンでは自分の身は自分で守らないとね」


先行してくれたおかげなのか、僕達が10階層まで行くのに魔物はほとんど現れなかった。1階層から10階層までは人型の魔物が現れるのだそうだ。11階層から20階層は昆虫系の魔物が多いらしく、天清さんや黒川さんはとても苦労したそうだ。この間の階層の攻略が一番時間が掛ったようだ。


10階層に着くと第7騎士団の人達が階層主の『ファルマキ・スラッグ』と戦っていた。騎士団の方は相手の体液を気にせずに怒涛の攻撃をしていた。ファルマキ・スラッグも粘液を吐き出し毒の攻撃をするが、騎士団の方は避けずに盾で受け止めて直ぐに攻撃に転じた。



「すごいね…みんな毒の耐性が付いているのかな?」


「多分だけど、後ろに下がって仲間に魔法を使っている人たちが居るけど、あの人たちが回復魔法か何か使っているんだと思う」


「だぁ~はっはははは!!私が調べてあげよう!!小さな声でアナライズ……っは?!あの見目麗しいお姉さんと目が合った…優しい微笑みが逆に…怖いかも……」


「そういえばエルクさんの部隊は治癒術師の部隊だったね。私も回復魔法を使えるけれどあれだけの回復は出来ないかな」


特に危険な場面もなくファルマキ・スラッグは倒されてしまった。階層主戦で指揮を執っていたであろう女性の方がこちらに気づき近づいてくる。


「四葉さんですね。わたくしはセルマ=シルフィードですわ。団長のエルクさんから色々聞いて居ます。愛する者の為に危険なダンジョンに向かうなんて素晴らしいですわ」


「………四葉……くんが……愛する……」


「ちょっと違うよ、セルマさん。ここにいるカイトが可愛い可愛いクルミの為にダンジョン来ているんだよ」


「そうでしたか………素晴らしいですわ!!愛に困難なんて付き物ですわ。わたくし第7騎士団副隊長のセルマ=シルフィードがカイトさんを30階層まで必ず連れていきますわ」


「…………うっす………………」


「あと覗き見は、めっですわ………そこのあなた……」


「はいいいいいセルマ様………何なんだこの威圧感……クイナ様とは別のベクトルの…」


こんなに狼狽えている涼宮を見るのは初めてかもしれない。顔も何か赤く染まっている。天清さんはそんな涼宮の事をみて笑っているようだ。僕達はセルマさんに自己紹介をすると隊員を紹介してくれた。セルマさんは僕達に回復魔法をかけると次の階層に向かうべく下層に降りて行った。



「またお会いいたしましょう!!カイトさんもファイトですわ!!」


「まったく嵐のような人だったな……涼宮が何も言えない相手だなんて……恐ろしい」


「うるせいやい!!俺たちも少し休んだら下層に行くぞ!!」


僕達は少し休んでから11階層に向かった。涼宮たちの言っていた通り、昆虫系の魔物が出て来た。昆虫系の魔物は外骨格が固く、物理攻撃では歯が立たなかった。天清さんの魔法で攻撃するか、黒川さんの魔法で動きを止めてから徐々に体力を削るしかなかった。



「ふぅ~何とか倒せたぜ。おおドロップ品だぞ!!これは何なんだ甲虫の羽か?銀色に光っていて綺麗だけれど何かに使えるのか?」


「魔石もあるし一緒に持って帰ろうよ。黒川さんお願い」


「…………(ひそひそ)………」


「どうしたの?ラブリちゃん……相棒に嫌わ……そんな事ないけどな…………分かった」


「黒川さんも涼宮も何を話しているんだ?何かあったの?」


「すまんな……相棒、ラブリちゃん魔法とはいえ、虫の身体の一部を入れるのが無理みたいだぜ」


「カナタ氏!!乙女の機微を私のように感じ取らねば」


天清さんもすごく虫の羽のドロップ品を見て渋い顔をしている。甲虫カッコいいんだけどなと思いつつ。無理強いもしたくはないので羽は僕が持つことにして、魔石だけ回収して貰うことにした。


そのまま僕達は20階層まで突き進んだ。中でも活躍したのはマサヨシだった。11階層から森から砂漠地帯にダンジョンが変化していた。昆虫系の魔物は群れで行動するので1匹に見つかるだけで連続戦闘は避けられないのが厄介だった。その中でもアリジゴクの様な魔物が危険で知らずにその魔物の上を通ると土の中まで引きずり込まれそうになる。



「どうだどうだ!!私の力を思い知ったか!!カナタよ!!皆も遠慮せずに私の事を褒めてくれても良いのだぞ!!」


「くやしいけど、マサやんのおかげでめちゃくちゃ楽になっている。俺たちがここを攻略してる時より数段早いな」


「そうだろそうだろ!!あのアリジゴクの魔物も私のスキルであれば、まるっとお見通しよ!!」


「その分、マサヨシの光に引き寄せられた魔物も現れているけどな…」


20階層まで降りて来るとセルマさんたちが階層主と戦っている。20階層の階層主は大蜘蛛の魔物みたいだ。口から糸を出して身動きを取れないようにしようとしているのだろう。隙を見て攻撃をしているのだが外骨格に阻まれて大蜘蛛には効いて居ないようだった。



「相棒!!助けに行くぞ!!あの大蜘蛛は口から糸を出すのと後は足の爪には毒があるから気を付けてくれ。俺っちには効かないけどな」


「分かったよ。僕も40階層の階層主に向けて少しでも強くならないと」


「私も階層主を倒して、召喚されたら鑑定術師だったが実は最強で異世界ハーレム生活の件の計画を実行せねばならぬ」


「何バカなこと言ってんの部長、助けに行くなら早くしないと『アイシクル・ソード』本気で行くよ」


「私は魔物の動きを止めるね『グラビティ・アトモスフィア』」


黒川さんと天清さんが大蜘蛛に挑んでいく。グラビティ・アトモスフィアを右半身に当たり、押しつぶされていく。外骨格が固かろうが関係なく押しつぶされていった。天清さんも大蜘蛛の足の関節の付け根を氷の刃で切りつける、2本の足を落とすことが出来たようだ。切り落とした傷口も魔法の効果か凍りついていっている。



「あれ?僕達の出番ってもしかして……」


「ないかもな…………」


「私の鑑定によると階層主『ダイモナス・アラクネ』の体力はあと僅かのようですぞ」


セルマさん達も黒川さんや天清さんの攻撃に続いて追撃し、第20階層の階層主、ダイモナス・アラクネは2人の登場の後、成すすべも無く倒されてしまった。そういえばこの2人は勇者だった。道中は魔力を温存するために本気を出していなかったのか?ホイロス城砦に行っている間に2人は規格外に強くなっていたようだ。



「素晴らしいですわ!!さすがは黒と青の勇者様ですわね」


「すごいな!!」「これが勇者様の力か……」「可愛いな………」「我々も負けてはいられないな」


黒川さん達のおかげでセルマさんの隊員の士気まで上がっているようだ。一部聞き逃せないことを言っている者もいたが、口々に2人の勇者を褒めたたえていた。僕達とセルマさん達は次の階層の魔物が出ない階層(セーフティ・ポイント)に向かう事にする。


この20階層まで来るのに驚異的な速さなのだが3日ほど掛かっている。交代で警戒をしてダンジョン内で仮眠は取っているのだが、そろそろ本格的に休まないと体力的にも危ない所だった。1日は完全に休む日を作って体力が回復したら一気に40階層まで向かおう。階層主たちも再び現れるまで1週間以上はあるので再び現れてしまう前に帰りたいところだ。




チム子です。

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