53 仲間の危機
何とかグラタンを作り終わると、タイミングを見計らったかのように涼宮が帰ってきた。黒川さんと天清さんも一緒に帰ってきた、どうやら一緒にダンジョンに潜っていたようだった。驚くことにダンジョンの34階層まで攻略しているそうだ。僕がヴェルタニアに居た頃は5階層の階層主ダヴラス・ホーンまで行くのにもかなり苦労していたのに…
「俺っちも相棒が居なくなってからダンジョンで鍛えまくってさ!!なんとレベルが2になったんだよな!!」
「あの時ね。10階層の階層主が動きが鈍くて攻撃してこないからって言って、一人で突っ走って攻撃したところまで良いんだけど。体液に毒があったみたいで、体液をまともに浴びて死にかけていただけなのにレベル上がって喜んでいたやつね」
「階層主『ファルマキ・スラッグ』の事ね。何とか私たちと偶然来ていた廣瀬君のおかげで何とかなったけど…」
「あの時はマジで参ったぜははははは!!そのおかげで何と毒に耐性が付いたみたいだな」
僕がホイロス城砦に行っている間にも皆はダンジョンの攻略をしていたようだ。階層主の討伐やダンジョン内にある、魔物が出てこない場所での出来事の話を聞いていると僕もそこでみんなと冒険したかったなと思ってしまった。
「そうだ!!櫛枝さんが皆にグラタンを作っていたんだ冷めないうちに食べようよ」
「おおおおお!!俺っちの26番目の大好物じゃないのよ!!」
「すごいねクルミが作ったの?いつもは外で食べてばかりだったから、たまには私も作ってみようかな」
「「櫛枝さん(クルミちゃん)に任せて天清さん(アマちん)は止めた方が良いんじゃないかな(ないの)!!」」
涼宮と目が合うと小さく頷いていた。まさか僕が居ない間に天清さんの料理の犠牲者になっていたのか?黒川さんもよく見ると小さく震えているようなので食べてしまったのだろう。
「何だよクルミの分まで私の料理を食べていたのに…カイトそんなにクルミの料理が食べたいって事?」
「………………………………」
「クルミも照れちゃって冗談だよ。私だって料理よりは少し苦手……クルミ大丈夫?顔赤いけど」
櫛枝さんがグラタンを掬っていたスプーンをそのまま地面に落としてしまう。座っていた椅子からも落ちかけていたが涼宮が身体を支えた。熱があるようで意識も朦朧としていた。料理を作っていた時も心なしか顔が赤かったような……
「とにかく櫛枝さんを部屋まで連れて行って安静にさせないと。僕は医者を呼んでくる」
「私はカナタに付いていくよ病院の場所分からないでしょ」
病院にまで行くと中には初老の医者らしい人が居たので、櫛枝さんの様子を伝えると直ぐに来てくれるそうだ。だが今日は急患が来ているのでまだしばらくはここを出られないらしい。一刻も早くに診てもらいたいが仕方がないので待つことにした。扉が開き誰かが入って来る、見知った人が現れた。
「カナタ君、久しぶりだね。どこか体調が悪いのかな?まぁ、あれだけの事があったからね」
「エルクさん!!どうしてここに?そうだ僕の仲間が病気になってしまって………エルクさんなら!!」
「エルクさん?確か第7騎士団の……治癒術師だっけ?私からもお願いします。友達が……」
「2人とも分かったから落ち着いて……僕も薬の調達が終わったところだから直ぐに向かうよ」
エルクさんに騎士団寮に来てもらい櫛枝さんを診てもらった。大抵の風邪や病気ならエルクさんの治癒魔法で治るそうなのだが、エルクさんの治癒魔法を何度も行使しても櫛枝さんが快方していく様子が無い。エルクさんも原因が分からないと対処の使用がないらしい。
「エリクシルでも効果が無いとは……毒や病魔が原因ではないのか?」
「エルクさん何とかならないんですか?クルミちゃんがこんなに……」
「あんたも落ち着きなさいよ。病気や毒じゃないんだとしたら魔法とか呪いとか?」
「解呪はもう既にやっている。こんな症例は初めてだ……………」
エルクさんもお手上げ状態なようで、医者に見せたとしても原因は分からないようだ。櫛枝さんの事は皆に任せて何か少しでも情報を調べたいので外に出ようとすると、1階から何やら物音がする。こんな時に冗談じゃないと黒剣を抜き1階の部屋の明かりを点けるとそこには、グラタンを貪り食べているマサヨシの姿が見えた。
「すまないカナタ!!クイナ様から逃げ出してから何も食べてなかったのだ!」
「マサヨシ………今はそれどころじゃないんだ。櫛枝さんが倒れてしまって大変で……原因も解らないんだ。そうだマサヨシも今から城に行って原因を調べるのを手伝ってくれ!」
「城に行く必要はないぞ!!なぜなら私は鑑定士なのだぜ!!」
初めてマサヨシがカッコよく見えた気がした。確かにマサヨシのスキルなら櫛枝さんに何が起こっているのか分かるかもしれない。急いで櫛枝さんの下にマサヨシを連れて行った。
「部長?何でここに?そうか部長ならクルミの事が分かるかもね」
「そうだなあの虹色の光なら病気の原因が分かるかもしれない。マサやん頼むぜ!!」
「くくくくはーっはははははは!!や~っと私の時間が来たのだな!!あれから進化した我がスキルを刮目しろい!!メガ・アナラアアアアアアイイイイズ!!」
虹色の光るがマサヨシの片方の目に集まり、光の輪を作る。マサヨシはこのスキルに慣れていないのだろうか玉のような汗を流している。やがて光が収縮していき、かなりの体力が持って行かれたのか息切れを起こしている。
「噂に聞いて居たけどすごいね!!あれが闇の世界の住人に恐れられている『ゲミング』の能力か」
「ゲ……ゲミングって呼ばれているんですか?マサヨシは」
「召喚者が彼の光を見てそう言っていたのが、闇の住民にも伝わったそうだ」
「ふふっふううううう!!分かりましたぞ!!櫛枝氏のスリー……ではなくて。身体に瘴気のようなものが取り込まれ続けているようですな」
「部長……この事クイナさんに伝えておかないといけないね」
「ひぃいいいいいいいいご勘弁を!!桔梗女史いいいいい」
「瘴気か………まさか!!魔素かも知れない。なるほど、これなら薬草も魔法も効かないのも納得できる」
エルクさんによると特定の場所に魔素と呼ばれるものが溜まることがあるそうだ。放置しておけば魔物の大量発生の原因になるらしい。その魔素を大量に吸収してしまうと魔族なら狂化と言って理性を無くし、目の前の命を奪うだけの存在になってしまう。
魔素に対して耐性がある人族は魔素を吸った所で影響はまずないのだが、稀に症状が出てしまう事がある。暴れ狂う事は無いが、魔素を抜かないとやがて魔素が身体を侵食して命を奪ってしまうようだ。聖女様の奇跡の魔法で魔素を浄化するのが1番早いのだが今は何処に居るのかが分からない。
「どうすればいいんですか?このままじゃクルミちゃん死んでしまうってことですよね!!」
「このままだと持って2週間って所だね……40階層の階層主から稀にドロップされる『セラフィ・リング』があれば魔素を浄化してもらえるはずさ」
「40階層ってまともに攻略するだけでも片道1週間は掛かってしまうぜ……どこかで買う事は出来ないのかよ!!」
「買うとしても2週間以上は掛かる。僕の部隊を動かすことにしよう30階層までなら訓練の項目で動かすことが出来る」
「これなら行けるぜ!!34階層までなら俺っち達も言ったことがあるし」
「でも涼宮君35階層から罠が多くなるから探索のスキルを持つ仲間が欲しいって話になってなかった?」
「そうねシキさんがいてくれたら良かったけど。あの後どこ行ったのか分からないんだよね」
「だぁ~はっははははは何を言う!!私が居るではないか!!」
マサヨシの鑑定のスキルなら罠の多い35階層以降でも行けるかもしれない。涼宮はすぐにでも行こうと言っていたが、さすがにこの時間からだとエルクさんの部隊も動かす事は出来ないようだった。僕達はダンジョンの準備を整えて、次の日に40階層の階層主からドロップ品を手に入れるためにダンジョンの入口の前で集まった。
チム子です。
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