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無職でも英雄や勇者になれますか?  作者: チム子


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52 帰ってきたヴェルタニア王国



目を覚ますと黒川さんが座りながら眠っていた。体中が痛くて起き上がれない。ここは何処なんだろうか?僕はホイロス城砦で…最後にある記憶はあのランカさんのペンダントを見た所で途絶えている…あの光景を思い出して涙が溢れそうになる。


僕が早くパラミデスの悪行に気が付いて居ればランカさんを救う事が出来たのかも知れない……いくつものヒントがあったはずなのに僕は気づけなかった。



「四葉君?気が付いたの?良かった………良かったよう!」


「痛たたたたたた!!黒川さん?!ごめんね。心配かけたみたいいいだけど今は身体がああ!!」


僕が気が付いたのが嬉しかったのか強く抱きしめて来る黒川さん。嬉しい気持ちが大きいがしばらく会っていないうちに黒川さんも勇者として成長したのか力がものすごく強い、僕の叫び声に気が付いたのか涼宮ともう一人のメガネをかけた男の人が入ってきた。



「よう!!やっと気が付いたか相棒!!喜ばしい状況だな。まあその痛みはラブリちゃんに心配を掛けた罪としてありがたく受け入れておけ」


「私の事も忘れてもらっては困るな!!カナタをあの瓦礫の山から見つけ出し救ったのはこの私だぞ!!」


「その声……マサヨシなのか?なんか瘦せたな…」


「聞いてくれい!!私の悲しくも恐ろしい話を………………」


マサヨシは訓練場でクイナさんに連れ去られた後、自業自得だが過酷な状況に放り込まれたらしい。この国を荒らしている盗賊団の拠点を探すためにマサヨシをクイナさんは扱き使っていたらしい。


そのおかげか盗賊団は捕らえることが出来たのだがそれだけでは終わらなかったようだ。単体で魔族の拠点に行かされたりスキルの虹の光を囮に使われたりで、散々な目にあわされたみたいだった。



「でもそのおかげでマサやんは盗賊団から恐れられる存在になったんだろ。王様からも何か褒美貰っていたみたいだし」


「それはそれ、これはこれだ!!確かに召喚屋の中でも頭を一つ飛びぬけて活躍をしているのが狛井氏だが、今やこの私はこの国で2番目に有名な召喚者と言っても過言ではな~~い事になってしまっている!!」


「2番目はおキクだろ。いまや竜殺し(ドラゴンスレイヤー)だしカスミンと同様に魔王の眷属を倒してしまったって噂もあるぞ!俺っちも悪い奴をバッタバッタ倒して活躍したいぜ」


「とにかく私は大活躍なのだがこれ以上はもう耐えられない!!カナタよ起きたばかりで悪いがクイナ様にいや!!人でなしのクイナに頼んで私を解放するように言ってくれないか!!」


「……人でなしって酷いっすね………マサぁ…それにしても後輩ちゃん気が付いたんすね良かった。ちょっと任務があってコレ借りるっす」


「ひぃいいいいいい!!もう廃墟や森は嫌なのだあああああああ!!!」


マサヨシは任務の為クイナさんに引きずられて行ってしまった。涼宮によると僕を見つけるために大活躍をしたそうだ、今度マサヨシにお礼しないといけないな。他にもクイナさんやユーリさんも危険を顧みずに僕を救いにホイロス城砦まで来てくれたようだった。


「四葉君はホイロス城砦で何があったか憶えていないの?」


「僕は……………ランカさんを…………うぅ………」


何かあったのか思い出そうとすると頭痛が酷くなる。でもホイロス城砦で何が起きていたのかは何となく分かっていた。涼宮と黒川さんにホイロス城砦で会ったことを憶えている限り話すことにした。


「………ランカさんて魔族の人がね。ってかやっぱり雪待達だったのか!ホイロス城砦に呼ばれた勇者って、それにダンジョンとか無茶するな相棒」


「魔族の人にもいい人が居るって知ってしまったら、私はやっぱり戦いたくないよ……話し合いで解決できないかな?」


「僕もそう思うよ……元の世界に戻るのも大切だけど別の世界だと言っても良い人が傷つく世界は僕は許せない……」


「俺っちもパラミデスの野郎が恨みを買う原因を作っていたのが分かったからな」


「パラ………ミデス………」


それから数週間後、退院することが出来た。元々外傷は少なかった、どちらかと言うと魔力を使うための回路が焼き切れていたようだ。魔法も使えない僕がどうしてかと思ったが結局原因は分からずじまいだった。その後にユーリさんにお礼をするために第3騎士団の所へ向かう事にした。



「おお四葉殿!!無事に退院出来て良かった。ホイロス城砦の惨状を見て一度は覚悟したが帰ってきてくれてありがとう」


「ここに戻ってこれたのもユーリさんやクイナさんのおかげって聞きました本当にありがとうございます」


「私もあの後に思うところがあって魔族について色々調べてみたのだが………私の伯母上の話を憶えているだろうか………」


「処刑されてしまったメアリーさんですよね………たしか魔族との友好に尽力していたとか」


「ああそうだ、その処刑されることになった原因の事件で気になる事があって調べたところ、あれには私の妹とアンドラス宰相が関わっていたことが分かった。」


魔族が一方的に裏切り貴族達を惨殺した事件だった。首謀者の魔王は先代剣聖の手によって討たれたのだが、惨殺を実行した魔族に付いては調べても何も出てこなかったようだ。


分かったことはメアリーさんの考えに妹のアテナさんが支持していた事と、式典の参加者の中にはアンドラス宰相の名前もあったのだが惨殺されたのは魔族と友好的な貴族ばかりで、アンドラス宰相とその派閥の貴族無事なのだそうだ。



「この長き戦争の原因は魔族にあると妄信していたが……今は迷ってしまっている……昔、妹に兄さまは頭が固すぎると言われたことを思い出すよ」


「もしもその事件がアンドラス宰相によって仕組まれたものだったら、魔族と人族が仲良くなるのが良く思っていない者達の手で罠に嵌められた?もしかしたらアテナさんも何かの思惑に巻き込まれたとか」


「そうかもしれないな……この迷いを部下に悟らせるわけにも行かないからな。部下の多くは魔族によって大切なものを奪われた者ばかりだ、この私が今更……」


「誰だって迷いますよ僕だってホイロス城砦でランカさんに会って居なかったら魔族を悪だと思い込んでいたと思います」


「ありがとう四葉殿………私も調べないといけないな妹の事や叔母の事を…」


ユーリさんはまだ悩んでいるようだった。僕はどうするのが良いのだろうか。このまま女神ディアスの言う通りに魔王を討伐して元の世界に戻るのか。そもそも元の世界に戻るためになぜ魔王を討伐する必要があるのかが分からない。


女神ディアスは世界の危機みたいと言っていたようだが、数百年間は魔族から人族に対して侵略をしたようなことは無いみたいだし。ホイロス城砦の陥落はユーリさんも言っていたがパラミデスが魔族の恨みを買って復讐された魔族側が原因ではなく人族によるものだ。


ユーリさんと別れ、久しぶりの騎士団寮に戻ると櫛枝胡桃《くしえだくるみ》が騎士団寮の台所で何かを作っていた。あれは肉じゃがなのか?シチューなのか分からないが悪戦苦闘している。



「櫛枝さん………大丈夫?………」


「あっ……四葉君!!退院できたの?良かった。すご~く心配していたよ。私もお見舞いに行きたかったけどアイリちゃんが目を覚ましたら1番最初に声を掛けたいからって………これ言っちゃダメっだった?………」


「ああ!!櫛枝さん!!焦げてる焦げてる!!」


「きゃ~今日はわたしが料理当番なのに……下手だって思われちゃう……」


櫛枝さんが泣きそうになるのを見ていると同い年のはずなのだが……何とかしてあげたい欲が出てきてしまう。妹がもし居ればこの感情になってしまうのか?とにかく皆が戻ってくるまでには時間がまだあるようなので料理を手伝うことにした。


ちなみに櫛枝さんが作ろうとしていたのは肉じゃがでもシチューでもなくグラタンだったようだ。そういえばアイツの大好物だったような…



チム子です。

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