51 四葉奏多の行方 Side 黒川愛梨
ホイロス城砦の中に入ると私は思わず目を覆い隠してしまった。人の遺体なんて見たことが無かった…それもあんなに沢山の人たちの…私に気を使って涼宮君は気丈に振舞っているけど内心は私と同じだと思う。
血の匂いに誘われてか魔物たちもホイロス城砦に入っていた。私たちには目もくれずに目の前のそれを食べていた。私たちに引き続いて他の騎士団の方たちもやってきたみたい。この現状を目の当たりにして青い顔をしていたが生存者の捜索を始めるようだ。
「これでは四葉殿を捜索する事も出来ない。私は魔物を何とかしよう」
「俺も手伝います!ラブリちゃんは瓦礫の撤去を手伝ってあげてラブリちゃんの魔法なら百人力よ!!」
私は魔法を使って瓦礫の撤去作業を無我夢中でした。出て来るのは亡くなってしまっている人達ばかりだった。だんだん焦る気持ちが強くなっている。もしも四葉君がこの人たちと同じように…嫌な考えがぐるぐると駆け回っていった。
「おっす!!顔色悪いっすけど大丈夫っすか?ラブリちゃん」
「……クイナさん……四葉君が……見つからなくて……」
「この状況なら探すの難しいかもっすね…こうなるかと思ってヤツを連れてきたっすよ!!」
クイナさんも他の騎士団の方たちと一緒に合流してきたようだ。クイナさんに急に声を掛けられても驚く気力も出なかった。クイナさんの隣にはおかっぱ頭に眼鏡をかけている方が居た。榎本君によく似ている凄く痩せている方がぷるぷる震えている。
「おい!!マサ!後輩ちゃんの痕跡もしくは本人が居ないかこの辺りをいつものように鑑定するんだ!!」
「クイナ様!!イエス!クイナ様!!」
「マサって………榎本君なの?!」
「メガネの同志!!黒川氏ではないか!!聞いてくれい私の可哀そうな話を……」
「マサぁ…何度言わせたら分かるっすか?まずは上司の命令が先っすよね…感動の再開の前に仕事だよね…」
「ひぃいいいいいい!!ルレエエエピス・スゥウウウアアアチイイ!!」
榎本君の身体の周りが虹色に光りだす。その光が粒子となってホイロス城砦に降り注いでいった。力を使い終わったのか光が収縮していく。榎本君は力を使い果たしたのか、そのまま倒れそうになっていたので支えるために体で受け止めようとするが、その前にクイナさんが現れて榎本君を蹴り飛ばしていた。
「そんなやわに鍛えちゃいないっすよ。マサの事だからこの状況なら不可抗力で抱き着けると思っただけっすよ」
「…………ぎくっ……………………………」
「気絶したふりをやめて鑑定の結果を言わないと次のやば~い任務にマサも連れていくっすよ」
「クイナ様!今報告するであります!!私めの『レピス・サーチ』によりますとカナタ氏の魔力反応は南?じゃなくて……北東にあります!!」
「見た事がある光だと思ったら相棒の危機に来てくれたのか!!それにマサやん今の話は本当か?魔力反応って事は相棒は生きているんだな!!」
「四葉殿が無事で本当に良かった…」
四葉君が生きていた!もし失っていたのかと思うと私は……とにかく涼宮君とルークさんと合流したことだし榎本君のスキルで魔力反応があったところに向かった。正門に比べて比較的に被害は少なかったのか建物の形は保っている。
だが外に豚の様な魔物がたくさん出て来ていて騎士団の方は近づけないようだ。クイナさんにあの魔物について聞いてみるとプアアと言う魔物でよく人族にも食べられているが、あのプアアは人間の味を知ってしまったが故に、とても凶暴になっているようだった。
「待ってろよ!!相棒!!今助けに行くぜ!!」
「私も助太刀いたそう涼宮殿!!『ガラート流・弐の型篠突く雨』!!」
「クイナちゃんもプアアちゃん倒して団長にいい所見せたいっす!!」
周りの凶暴化した魔物を次々と倒していった。私は四葉君が使っていた黒剣を鞘から抜いてみるが、次々と倒されていく魔物を私は見ているだけだった……魔法で間接的には何とか倒せるようになったけど、直接私の手で命を奪うのがどうしても出来なかった。四葉君の黒剣なら私に勇気を与えてくれかと思ったが私には到底出来そうにない……
「ラブリちゃん!!終わったぜ!早く相棒を迎えに行こう。相棒が待っているぜ!」
「うん!!」
建物の中に入ると一際大きいプアアが餌を食べていた。プアアは鳴いているのか分からないが不気味な声を発している。クイナさんも不思議そうにそのプアアを見ていた。他には何もなさそうに見える、クイナさんはもう一度スキルを使うように言うと榎本君は再び虹色に光だし辺りを調べていく。
「……クイナ様…何がどうなっているのか分からないのですが、あのプアアからカナタ氏の魔力反応が出ているようです」
「何を訳の分からないこと言ってんすか?」
「まて、クイナ!あのプアア何かがおかしいぞ!!」
「……ごえんなさいだえ………許……してえ……コロ…して…………」
プアアの鳴き声かと思って居たけど、プアアの身体に付いている人の顔が発している声だった。繰り返し何かを謝っていて最後には死を懇願している。この不気味な生物に皆が言葉を失っていた。ユーリさんがそのプアアに付いている顔をみて何かに気が付いたようだ。
「これは……もしやパラミデス卿?……なんと惨い……」
「本当っすね!!確かによく見るとパラミデスの変態の顔に良く似てるっす……でも何で後輩ちゃんの魔力反応が出ているんすか?どういう事っすかマサ!」
「私にも良くわからないですよ魔力の痕跡を見ているだけですぞ!!ここが1番反応が大きかったので来ただけで…」
「榎本君!!他にも四葉君の魔力反応があるの?」
「最初に調べたところの南の方に微力ながら魔力反応があったような気が……」
私たちは急いでそこに向かった。そこは特に崩壊が酷くて瓦礫の山が築かれていた。私も魔法を使って騎士団の方たちと共に瓦礫を撤去すると、ヴェルタニアに保管されているホイロス城砦の設計図に載っていない地下への通路が発見された。地下に降りる階段からは血の匂いが酷くする、私たちは一刻も早く四葉君を助けるために降りて行った。
降りていくとそこには地獄が広がっていた。魔族を閉じ込めるための檻や痛めつけるための道具などが転がっている。床は赤く染まっており、血溜まりが出来ていた。そこには夥しい数の遺体があった。
「やはり魔族の復讐なのか……私にはもう分からなくなったよ。長年宿敵である魔族を恨んできたが人もまた………」
「そうっすね…何をやっていたのなんか大体想像つくっす。昔から悪い貴族の奴らの相手をしているっすけど、ここまで酷いのは見たことが無いっす。でも魔族よりたちが悪い奴らも結構いるっす」
「俺たちはこんな奴らを救うためにこの世界に来………」
「………………うぅ………………」
うめき声がする方向を見ると全身が血にまみれている四葉君が眠っていた。悪夢にうなされている四葉君を抱きかかえて必死に名前を呼び続けた。涙が頬を伝っていくのが分かる。四葉君は少し目を開けると私が泣いていることに気づいたのか私が流した涙を手で拭うと再び眠ってしまった。
生存者は四葉君パラミデスさんの2名だけだった。四葉君を連れてヴェルタニアに帰ってきた。四葉君の国外追放もホイロス城砦の陥落のどさくさに紛れて無かったことにしたようだ、アンドラス宰相が何やら言っていたようだが。クイナさんとユーリさんの超平和的交渉?によって黙らせたらしい。
パラミデスさんはエルクさん率いる第7騎士団によって治療が開始されたようだが、魂レベルでプアアと融合しているらしく元の姿に戻すことが出来なかったようだ。
このままでは哀れだと思ったのかパラミデスさんの望み通りに死なせてあげようとするもプアアの自動回復のスキルが強化されているようで、首を落としても魔法を使っても回復してしまうので、死ぬことすら許されなかったようだ。ホイロス城砦から帰って来てから1週間後に四葉君は目を覚ました。
チム子です。
少しでも心に残ったらブックマークと評価★★★★★をポチっと押していただけると嬉しいです!!リアクションとコメントもして頂けるとモチベーションに繋がりますのでお願いいたします!!!




