49 ホイロス城砦の陥落 Side 黒川愛梨
ホイロス城砦の襲撃の知らせを聞いたのは四葉君がヴェルタニアから追放されてから数か月が過ぎた頃だった。追放の話を聞いた時は四葉君が私の前から居なくなるなんてすごく嫌だった。ホイロス城砦は森精人との数百年前は戦いの最前線だったが、本来は戦いの好まない種族なのでこちらから何かしない限りは攻め込まれることはないだろうとユーリさんもクイナさんも言っていた。
私はホイロス城砦に追放された四葉君を追いかけることはしなかった。だって私は階層主との戦いのとき傷だらけの四葉君を見ていられなかったから。四葉君が戦って傷つくくらいなら今はどこか遠い所で安全に暮らしていけるならいいと思っていた。だけどこんな事になるなら……
「ラブリちゃんにカイっち落ち着いて聞いて欲しいっす……ホイロス城砦が襲撃されたっす…」
「クイナさん!!その話は本当なんですか?相棒は?カナタはどうなったんですか?」
「四葉君……それに攻め込まれること無いって話は?………私、行かなくちゃ!!」
「黒川殿、待ってくれ!!私も共に向かおう……ホイロス城砦が落ちたのは、にわかに信じがたいが…パラミデスとルナが繋がっている証拠を早く探し出していれば!!四葉殿を……また私は大切なものを…」
「落ち着けってユーリさんもラブリちゃんも!!相棒はそう簡単に死んだりしないって!!今頃ブルブル震えて俺たちの助けを待っているはず。迎えに行こうぜ!ラブリちゃんが来てくれたら泣いて喜ぶはず!!」
涼宮君の言う通りに決まっている、私が諦めてどうするのよ。いつも助けられてきたから今度は私が助けに行く番になっただけ。私と涼宮君はユーリさんと共にホイロス城砦に向けて出発の準備をした。クイナさんはもう一人連れていきたい人が居るらしく、別の馬車で追いかけてくるようだ。私は馬車の中で何があったのかを詳しく聞くことにした。
「私が聞いた話では2日前にヴェルタニアとホイロス城砦の間にある、クルニ村にホイロス城砦から騎士が夜中に逃げて来たので匿っていたそうだ。その騎士が村の者にホイロス城砦が落ちた事を村の人に伝えたらしい」
「その騎士の方なら四葉君の事を知っているのかも知れないわ。まだクルニ村に居るのなら、まずはその人に話を聞いてみれば何か分かるかもしれないですよね?」
「そうだよな!!ラブリちゃんの言う通りだよな!!ユーリさんそのクルニ村に直ぐに行こう!!いま行こう!!」
「涼宮殿に黒川殿……それは無理な話だ、その人はもうこの世には居ない。その後に大きな角が生えたヤギのような横長の瞳孔の目をした者に殺されてしまったそうだ。それも悲惨な形でな……」
私たちがクルニ村に着く頃には辺りは日が暮れかけていた。夜は魔物が活発になって危険なので今日の所はこのクルニ村で休むことにした。クルニ村に入ると人の気配はしなかった。家のドアは固く閉じられて、窓は外から何も見えないように何かで塞がれていた。それでも話を聞きたくて家を1つ1つ尋ねてみるが反応は無かった。村の奥から1人の老人がこちらに向かい歩いてくる。
「この村に何か用がございますか?騎士の方もお見受けしますが、私はこの村の村長のカムリと申します。早くこの村から出て行ってはくださらぬか。騎士の方が居られると、いつまたあの悪魔が来るのかと思うと怖くて…村の者達も怯えてしまっている…」
「カムリ殿。私はユーリ・モルドレイだ、第3騎士団長を任されている。何があったのか詳しく聞きたいだけだ。」
「騎士団団長様でしたか……ヴェルタニアにはもう報告はしたのですが……分かりました。今一度、話すことにしましょうか」
あの日の夜、この村に来た騎士団はホイロス城砦が落ちた事をヴェルタニアに伝えてくれるよう頼むと、この村の食料の備蓄庫の地下に隠れてしまった。その数時間後にヤギのような目を持つ悪魔が現れたらしい、その悪魔はサイロという者を探しているようだった。村長はサイロと言う名前は聞き覚えは無いが、あの騎士の事だと直ぐに理解をしたらしい。だが村長はそのサイロという騎士を守るために嘘を吐いたようだ。
「サイロは何処にいる……サイロを出せダセ出せ………………コロ殺す………出さなければ」
「魔族の方だとお見受けする……サイロというものはここには居りませぬ…」
「嘘をツクな僕にはワカルカラあああああああああ!!」
村長は身を守るために右腕で攻撃を防いだがその悪魔に触れられた瞬間に腕が自身の形を忘れてしまったのか、ドロドロと溶けていってしまったらしい。私たちはその話を聞いた時に村長の右腕を見てみるが溶けた様には見えなかった。村長も私たちの視線に気が付いたのか右手を守るように擦っている。村長は話の続きをした。
「ああああああ!!腕があああああああ!!」
「……………っは!!ゴメンなさい……ゴメんああああああ……」
悪魔は自身の攻撃に酷く狼狽えていたそうだ。村長に近づいてたので、その時はとどめを刺されるのかと思い死を覚悟したのだが。その悪魔の左手が村長の千切られた右腕に触れた瞬間に何事もなかったかのように右腕が治っていたみたいだ。その奇跡のような悪魔のような所業を村の人々が目の当たりにすると一瞬にして村の人々はパニックになってしまったようだ。
「村長!!もう良いだろう!!こいつだろあんたが探しているのは!!」
「む~む~…………む~」
悪魔の力を目の当たりにした村人の一人が、猿轡をされて身動きが取れないようにされている、サイロを悪魔の目の前に突き出したそうだ。村長はその者の事を必死で庇っていた。
私を助けるためにサイロと言う騎士を悪魔に差し出したので、罰するなら私を罰してくださいとユーリさんに懇願していた。ユーリさんは罪に問われることは無いだろうと言うと安心したようだ。村長は一息を入れて自身を落ち着かせて話し出した。悪魔はサイロを視線に捕らえると右腕を伸ばしてサイロの顔面を掴み上げたそうだ。
「グワアアアアアア!!止めてくれえええええ命だけは助けてく……カ」
「あはははははは!!あの騎士の奴ラは逃がシハしない誰も………絶対に………赦さないイ」
サイロは身体を徐々に溶かされてしまったそうだ。あの断末魔は今でも耳から離れていないと言っていた。悪魔はその後は村や村人には手は出さずにホイロス城砦の方へ向かっていったそうだ。仲間がいるならあきらめた方が良いとも村長は言っていた。あの悪魔に目を付けられたのだとしたら決して逃れられないだろうと。
この話を聞いても私は四葉君が無事であることを信じる事しかできない。私たちはクルニ村で一晩休んで日が昇ると同時に、四葉君を見つけるためにホイロス城砦へと向かう。
チム子です。
ここからちょいちょい別の視点もあるので分かりにくかったりすることもあると思いますが、頑張って書きます!!
少しでも心に残ったらブックマークと評価★★★★★をポチっと押していただけると嬉しいです!!リアクションとコメントもして頂けるとモチベーションに繋がりますのでお願いいたします!!!




