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無職でも英雄や勇者になれますか?  作者: チム子


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48/63

48 結末



いつものように集光石の回収する為にホイロス城砦をいつもの順番で巡る。ここに来てから数か月は経っただろう、涼宮や黒川さん達は元気にしているのだろうか?ここでの仕事は慣れたもので地図とにらめっこしていたころが懐かしく思える。地下室に続いている扉の前を通ると何か焦げたような匂いが微かにする。扉の前を守る騎士団の方に尋ねてみた。



「何か焦げたような匂いがしませんか?」


「あ……そういえば昨日の夜にちょっとしたボヤ騒ぎがあったみたいだな」


「魔道具の誤作動か何かだった……よな!!」


何かを隠してあるような気がするが、仕事に戻ることにした。何度か仕事の合間にランカさんの部屋を訪ねてみたが人の気配はなかった。プアアの小屋に向かう途中で今の僕が1番会いたくない奴が居た。


雪待郝也《ゆきまつかくや》が、確かあそこはホイロス城砦の所属する治癒術師が待機している救護室から出て来た。ダンジョンでケガでもしたのだろうか?右腕に痛々しい包帯が巻かれていた。



「ちっ……気分が悪い時にお前の顔を見たくないんだけどな」


「それは僕のセリフだけどそのケガはどうしたんだ?また不様に階層主にやられたのか?」


ランカさんの一件があって僕の心のささくれがそうさせているのか、今は雪待の挑発する言葉を受け流す余裕はなかった。雪松の眉間の皺が深くなり、ギリっと歯軋りをする。携えている剣に手を掛けたので、僕も短剣へ手を伸ばした。



「くそっ……今日は気分が乗らねぇから許してやる。それに俺たちはヴェルタニアに戻る、お前とも二度と会うことが無いだろうからな。お前はこの豚くさい所で一生雑用していろ」


あの3バカ勇者がここを去るのは良いことなのだが、ここに来てまだ2日とかしか経っていないようだけど目標のレベルに達したのだろうか?僕には関係ない事だけど…早く居なくなってくれたので仕事を終わらせてダンジョンに向かう事にした。ホイロス城砦から出るとサイロさんが退屈そうに門番をしている。



「カナタ!今日はダンジョンに向かうのか?」


「勇者たちが帰ったみたいですから少し頑張ろうかなと思って、サイロさんの護衛任務はもう終わったのですか?何日か帰ってこないのかと思っていました」


「護衛ていっても、まぞ……いやあの方が雇っていた護衛が迎えに来たようだからすぐに引き返してきたんだ。まぁ楽な仕事でよかったよ」


サイロさんに別れを告げてダンジョンに向かった。ダンジョンの中ではいつゴブリン達が襲ってくるのか分からない全神経を通わせて集中しないといけない。ダンジョンでは余計な事を考えることが出来なくなるので今の自分には居心地が良い。ダンジョンは命の危険があるのに居心地が良いっておかしな話なのだが。


何匹目かのゴブリンを倒した後にダンジョンの外へ出ると、辺りはすっかり日が沈んでいた。まずい集光石を元に戻す仕事をしないといけなかったのに時間の事を考えてなかった。急いで帰るが魔物と出会ってしまう、夜の魔物は厄介だとランカさんも言っていた。目の前には大きな鎌を持つ昆虫型の魔物がこちらを見つめている。無機質な複眼には何を映しているのか分からない。



「キュイイイイイイイイイイイイ!!」


大きな鎌を振り上げて首を刈り取るべく振り下ろす。伏せて避けることが出来たが後ろに生えてある木が切り倒される。僕の胴体くらいの太さがある木が綺麗な断面を残して真っ二つになっている。もし当たれば即死は免れないだろう。こちらもこのままやられる訳には行かない。短剣で相手の喉元を切り付けるが昆虫型はゴブリンに比べて硬すぎて刃が通らない。


「キュイ!!キュイ!!」


威嚇をしているのだろうか大きな鎌を振り上げている。振り下ろすと鎌が直接当たらなくてもスキルなのか魔法なのかは分からないが、切られてしまうのでとにかく距離を詰めなくてはいけない。しかし距離を詰めるだけならあの鎌で直接切られてしまう。近づくと案の定、両鎌を振り下ろしてきたので避けて背中の方へ周り背中に飛び乗った。


「ギュイ!!ギュイイイイイイイ!!」


背中に乗ると大きな鎌を背中に向けて攻撃しようとする。しかし、この魔物の鎌は身体の構造上背中には届かず僕を切り付けることが出来ないようだ。暴れまわるその昆虫型魔物の背中に短剣を何度も突き立てた。青色の血が噴き出て体中に掛かってしまうが相手の動きが止まるまで突き立て続けた。


「キュ………………イ………」


何とか勝利することが出来たのだが、ダンジョンとは違い魔物の身体が吸収されることは無かった。このまま放置するのももったいない気がしたので、身体の中心から魔石だけは短剣で抜き取り貰っておく。ホイロス城砦に戻ると、集光石の仕事をして居なかった件についてやはり怒られてしまった。しばらくの間ダンジョンの探索の禁止と特別キツい仕事があるので明日それをやるように言い渡された。


次の日、いつもの仕事を終わらせると騎士団の一人が僕を呼び留められた。言い渡されたキツい仕事に今から向かうようだった。騎士団の方2人と僕の3人で向かう、この2人は名前は知らないがランカさんとダンジョンに向かった時に居た人だと思う。ホイロス城砦に横付けされた馬車の荷台に乗った。



「今日は特別数が多いな……匂いも酷いしクソっ……」


「あれだよ。この前来ていた勇者………」


馬を操っている2人の会話が聞こえる。だが馬の足音のせいで声がかき消されていてあまり聞き取れなかった。勇者って聞こえたけれど…あの3バカ勇者が何かしたのか?それにこの荷物の匂い……焦げた匂いのするものと何かが腐っているような匂いがするものがある。ここに来た時のトラウマが蘇る、あの時の見たものを思い出し嗚咽しそうになった。前は1つの袋だがここには少なくとも5つぐらいある。まさかこの前と同じく死体が入っているんじゃ……



「ったくよ…………あの勇者………俺も………」


「だよな………先に目を………パラミデ……………良かった………」


「ランカ………………勇者共……………」


「ランカさんの事知っているんですか?!!」


「何だお前?………ああそうか今日はお前も居たんだったなすっかり忘れていた。」


「ランカなら、くくくっ。そうだな今頃は弟と一緒の所にいるんじゃないか?少なくとも、もうホイロス城砦にはいないぜ」


ランカさんの名前が出たので思わず会話に入ってしまった。ランカさんはもうホイロス城砦には居ない?しかも弟と一緒にいるなんて、病気が治ってもう出発したのか?僕に挨拶ぐらいしてくれても良いのにと思ったがやっとここから出られたんだ素直に祝福しよう。もしかしたら、またどこかで会えるかもしれないし、その時は一言くらい文句を言ってやろう。



「よっし着いたぞ。お前は穴を掘れよ今回は量が量だからな、かなり深く掘らないと魔物が寄ってきてしまう」


「このゴミが全部埋められそうな穴を掘ったら教えてくれ、俺たちは休んでいるからよ」


言われるがまま穴を掘っていく、掘り終えるころには辺りは日が沈みかけている。完全に夜になる前にこの荷物を埋めなくてはならない。2人を呼び3人で荷物を穴に運んでいく。1つ、2つ、3つと運んで行き穴に落としていった。荷物を持つと感じる重みが、さらにトラウマを刺激する。少し時間が掛ってしまったがようやく最後に1つになった。



「ったくよ……何で俺たちがこんな………」


「お前も早くしろよ!!お前が穴を掘るのが遅いからこんなに時間が掛ってしまっているんだぞ。完全に日が沈むまでには埋めて帰らないと魔物が寄って来るぞ」


最後の荷物を穴へと落とした時、その荷物から銀色の何かが出ていくのが見える。それを見た瞬間に心臓が高鳴った。嫌な予感がし穴へと駆け下りる。後ろの方で怒号が聞こえるが、今はこの銀色の何かを調べないと気が済まなかった。


心がざわざわする。先程から呼吸が浅くて息が出来ない。そこには想像した最悪以上のものが落ちてあった。銀色のペンダントが落ちていた、ペンダントの蓋が壊れているのか開かれている。拾い上げるとそこには、髪の色が青色のランカさんによく似ている、犬の獣人の少年の写真が付けられていた。



チム子です。

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