46 シンラさんの危機
ダンジョンから出るとサイロさんと騎士団の方々が険しい表情をしている何かあったのだろうか。僕達に気が付くと驚いた表情をしている、サイロさんが言うには魔道具で僕達の動向を確認していたのだが、僕が石柱に触れた瞬間に映像が途切れたので何かに巻き込まれて死んでしまったのかと思っていたらしい。
「無事でよかったよカナタ!!何なんだ?!そんな大きな魔石見たことが無いぞ!!」
「このダンジョンの階層主から出て来た魔石ですよ。」
「……………………」
「お前は……ランカか?……少し感じが変わった気がするけれど…」
相変わらずランカさんは無言無表情を貫いている。僕はサイロさんにダンジョンであったことを話すと階層主を2人で討伐したことに驚いていたのだが、その階層主に心当たりがあるらしい。僕達の調査をもとにまた騎士団か冒険者を派遣するようなのだが、とりあえずは僕達のパラミデスの頼み事は無事終わったようだ。
「おい、見ろよ……やっぱさ……よな」
他の騎士団の男の一人がランカさんを見て何かをもう一人に伝えてあるのだが、うまく聞こえない。2人のランカさんの見る目が気味が悪いことに何か引っかかったのだが、まずはホイロス城砦まで戻ろう。ダンジョンでの戦闘の疲れがたたって今にでも倒れそうだ。
ホイロス城砦に戻ると上機嫌なパラミデスが向かい入れてくれた。ダンジョンで手に入れた黒いローブは幸運にも映像にも映ってなかったので、拝借するとして黒色の魔石はサイロさんに見つかっているし、流石に隠し持っている訳にも行かないのでパラミデスに渡す。
「ほうほうこれは素晴らしいぞえ!!これで新たな……ごほん、良くやってくれた今日の所はご苦労だった休むぞい」
「……弟は……これで……」
「全然足らないぞい。しかしまあ、頑張ってくれたから薬は買ってやるえ。また頼みごとをする時はお願いするぞい」
ランカさんは安心したのかパラミデスにお辞儀をしていた。弟に何かあったのだろうか?パラミデスはこの後にダンジョンの調査結果を確認するのだそうだ。再調査ももしかしたらお願いするかもしれないと言っていた。それよりもランカさんの様子が気になる。
部屋に戻るとランカさんは犬の姿に僕の変身してベットに潜り込んでいく。ダンジョンでのダメージや疲労が戻っていなかったのだろう、僕もベットに腰を掛けて弟の事を聞いてみた。
「ランカさん…シンラさんに何かあったんですか?…薬って?」
「シンラがこの辺りの魔物の討伐の任務中にケガをしてしまったって……」
「だから薬のための危険なダンジョンに潜ることにしたんですか?」
「ごめんねカナタ…本当はあんな危険なこと断って良かったんだよ…あたいが了承したから…」
「あの時にランカさんが了承しなくても、何かと理由をつけて僕達はダンジョンに向かう事になっていたはずです。それにランカさんが困っているなら僕は喜んで手伝いますよ!!」
その言葉に喜んだランカさんは僕に飛びつき尻尾をぶんぶん振り回している。まだ会ったことが無いシンラさんだがランカさんと共にこのホイロス城砦から出してあげたいと心の底からそう思った。僕達はダンジョンの疲れのせいかそのまま眠ってしまった。
次の日からまたいつもの集光石の回収とプアアの小屋の掃除の仕事が始まる。ランカさんもシンラさんのケガが治るまではホイロス城砦で働いていくつもりのようだ。弟に引き続き力も認められたようでホイロス城砦の外の魔物討伐の任務も受ける事にしたみたいだ。
ランカさんは一刻も早く薬の代金払いたいようだ。かなりの負担が掛かるので心配なのだが、僕は応援することにした。仕事中のケガなのでパラミデスが払うべきだと思うがこの世界の決まりは違うのだろう。それからの数日間は魔物討伐の任務に掛かりきりになってしまったみたいでランカさんに会えない日々が続いた。
「……ただいま…カナタ…」
「大丈夫ですか?ランカさん!!」
しばらくぶりにあったランカさんは魔物の攻撃による傷なのかボロボロになっている。ヴェルタニアからの命令で、ホイロス城砦までの街道に出て来る魔物の討伐を早急にするよう命じられて今まで魔物退治に掛かりきりだったようだ。そのおかげで少なくない報酬を手に入れたようだが、シンラさんの病状は悪化したようなので更に高価な薬を使わないと命に係わるそうだ。
「ランカさんを見てられません。僕もパラミデスに頼んで何か仕事を貰います。そのお金も使ってシンラさんを助けてください」
「悪いよ……カナタ……あたい何も返せないよ……」
「ランカさんには色んなものを頂いたので僕が借りを返しているだけですよ。だからランカさんは無理をしないで休んでいてください」
「ありがとう……カナタ……」
僕はパラミデスの下に向かった。パラミデスはいつものようにプアアのステーキを食べている。だがその表情は苛立ちと怒りが見え隠れしていた。ダンジョンの調査結果が良くなかったみたいだ。僕達が戦った階層主はヴェルタニアのダンジョンの30階層の階層主と特徴が似ており、王国から派遣された冒険者が調査した所間違いないそうだ。
ホイロスから30階層へ行くと下層への入口は出現しないので、下層へのショートカットには利用できないようだ。利用価値と言えば1階層から30階層の所まで行けるのでレベル上げや階層主のドロップ品を狙いやすいぐらい見たいなのだが、あくまでヴェルタニアダンジョンの物なのでドロップ品の黒色の魔石も近々ヴェルタニアに回収されてしまうそうだ。
「くそう気に食わないだえ…ようやくあれが入荷したって言うのに…そうだカナタはどうしたんだえ」
「ランカさんの弟の薬代の為に僕にも仕事をください。このままではランカさんが死んでしまいます」
「ランカが死ぬのは困るぞい。だが薬も高いのも事実だえ、ダンジョンが上手くいかないとなるとこのホイロス城砦の資金では厳しいぞい」
「ダンジョンに入る許可を下さい。魔物が落とすアイテムや魔石を全てお渡ししますから」
「う~む、ホイロスダンジョンの方はゴブリンしか出ないが、良いぞい。だが本来の仕事も疎かにするなえ。それにランカには近々別の仕事を与えるえ安心するぞい」
許可されたのでこれからは集光石とプアアの世話が終わったらダンジョンに向かう事にする。ランカさんのおかげかホイロス城砦の周辺には魔物があまり見かけなくなった。騎士団の方を連れていくことも出来るはずもないので、ダンジョンまでは1人で行きダンジョンはソロでの探索になる。
ダンジョン調査も兼ねているので、映像を記録する魔道具も身に着けている。1人でダンジョン探索は初めてなので慎重に進んでいるとゴブリンが3体目の前から現れた。僕は慌てて短剣を引き抜き応戦する。何とか勝利したが黒川さんとは違い魔物が落としたアイテムや魔石を直接運ばないといけないので、あまり多くは持てそうにはない。赤いゴブリンが出て来た時には死を覚悟したが何とか倒してアイテムと魔石を回収していく。夜になると外の魔物が活発になるので日が暮れる前にはホイロス城砦に帰ることにした。
「カナタ!!ゴブリンだと甘く見ていたぞい!アイテムは価値があるものは少ないようだが、この魔石の数々は素晴らしいぞえ!!これからも頑張るぞい」
次の日からもダンジョンで魔石やアイテムの回収に向かう。ランカさんもついて来ようとしたのだが、今は身体を治すことを優先してもらい、その代わりに集光石やプアアの世話を頼んだ。あれから何回かダンジョンに行ってパラミデスに回収した物を渡したのだが、シンラさんは一向に回復する様子も無いようで治療費が重なっていった。
ランカさんがパラミデス呼び出された日から数日たっても戻っては来なかった。さらに数日たったある日、僕がいつもなら寝静まっている時間に僕の部屋の前に誰の足音が聞こえた。ランカさんかと思ったのだが僕の部屋を通り過ぎてランカさんの部屋のドアノブを回す音が聞こえる。誰かが中に入ったようなので僕はランカさんの扉の前まで来る。中からはすすり泣くような声が聞こえた。ランカさんの声のような気がしたので堪らずノックをした。
「ランカさん!!大丈夫ですか?ぼく心配していて…」
「ごめんね…起こしちゃったか……あたいは大丈夫だから明日も早いでしょ早く寝ないとね…」
「ランカさん…本当に大丈夫ですか?開けますね…」
「開けないで!!今は放っておいて!!」
ランカさんに強く拒絶され、僕は手を掛けていたドアノブから手を降ろした。ランカさんは泣いていたように思った。心臓が押しつぶされそうな感覚に陥る。自室に戻るがそのまま寝られるはずもなく気が付くと朝になっていた。
チム子です。
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