45 階層主の討伐報酬
ランカさんが骨の刃に飲み込まれていくのが見えた。慌てて駆け寄るがもう目の前には骨の刃の山しか見えなかった。耳からは誰かの叫び声が聞こえて来る。男の人の声だ……誰の叫び声かと思っていたら僕の叫び声だった。
頭の中に色んな考えが浮かび消えていく。色々なもしもの可能性、もしもこのダンジョンに来なかったら…もしもあの場所で冒険者が来るのを待てば…もしもランカさんが僕の事を庇わなかったら…
目頭が熱い、喉が痛い……叫んだからなのか。色んな事が頭に浮かび消えていく、考えがまとまらない冷静になろうと努めれば務めるほど悲しみの波が押し寄せて来る……耳鳴りが鳴りいつものノイズが深くなっていく。
(ランカが死んだのはお前のせいなのか?)
「違う!!僕のせいじゃない!!!」
(あの骸骨の階層主のせいなのか?)
「違う違う違う違う!!!」
(だったら誰がお前たちをこんな目に合わせたんだ)
「安全圏から僕達を見下していたパラミデスだ!!」
(分かっているじゃねえか…だったらどうする?)
「決まっている……コロシテ……」」
「お~い…お~~~いお~…」
何者かに意識が飲み込まれになったが、ランカさんの声が聞こえた気がして何とか戻ってこられた。階層主が完全に消滅したのか骨の刃の山もダンジョンに飲み込まれていく。
残ったのは巨大な黒色の魔石と黒いボロボロのローブが地面に落ちてあった。ランカさんもダンジョンに飲み込まれたのだろうか死体すら残ってなかった。ランカさんが居ない事実を目の当たりにし涙が頬に伝う。
「無視すんなやゴルァアアアア!!!!」
足が何者かに噛みつかれ思わず絶叫してしまう。足元を見ると首には首輪のように銀色のペンダントを付けた、鈍色の毛並みをした犬が僕の足をガジガジ噛んでいる。
「カナタ!!!あたいを無視するとはいい度胸じゃねぇか!!この姿になるのはめちゃくちゃ恥ずかしいんだぞ!!」
「ランカさん?!ランカさーーーーーん」
犬を抱きかかえボロボロになりながら泣いてしまう。抱きかかえられたランカさんも小さな悲鳴を上げるがされるがままに抱かれ、僕の涙を舌で拭ってくれた。
獣人族は身体に深いダメージが与えられるとこの動物のような姿になってしまうらしい。この小さな姿で敵から身を隠し身体を治すのだそうだ。致死量のダメージだと動物の姿にもなれないので、獣人の格言に引くことを覚えろ家畜!!ってのがあるらしい。ランカさんのこの姿のままではどうすることも出来ないので階層主の部屋で休むことにする。
「この姿になるのは何年ぶりだろう…子供の頃にサードニクス流のタマ師範に悪戯してバツとして師範に1本入れるまで家に帰してもらえなかった時以来かな…嫌なことを思い出した」
「子供の頃からランカさんやっていたんですね…ランカさん…」
「人の事を蔑称で言うんじゃないよ!!ガブゥ!!」
「ぎゃああああああああああああああ!!!」
「よーし!何とか力を少し取り戻したし、元の姿に戻ってみるか!!」
犬の姿から戻ったランカさんはどや顔でこちらを見ているが何も身に着けていない犬の姿から獣人の姿になった訳なので、もちろんランカさんはあられもない姿になる。その姿が網膜に完全に焼き付く前にランカさんが自身の醜態に気が付き顔を赤く染めて渾身の右ストレートを僕の顔面に放った。
「き…気が付いたか…カナタ……」
「ランカさん……何か素敵な夢を見ていたようです。その姿、元に戻ったんですね」
「レベルダウンもしていないみたいだし、外に出るまでこの姿が持てば良いだろう……それよりカナタ何も覚えてないんだな…」
「何のことですか?僕は何も覚えてません。嘘じゃないよホントだよ…」
ジト目で見つめて来るランカさんだが……本当は僕はうっすらと覚えていた。まぁ完全に記憶を無くした体にしておいた方がお互いに良いだろう。ランカさんが言っていたレベルダウンは人族も魔族も自身の今の限界を無理やり超えて潜在能力を引き出すことが出来る事があるが反動でレベルがかなり下がることがあるらしい。
そのデメリットのおかけで身体の能力がかなり向上したり、自身が使える魔法やスキルより上位の技が使えるようになる時もあるとらしい。だがこの自信の限界を超えた状態を長く続けると体の方が先に限界を迎えて下手をすると死んでしまう事もあるそうだ。
「私は限界を超えた時間が少なかったから大丈夫だったようだな」
「ランカさんが無事で本当に良かったです。これからどうしますか?」
階層主を倒したが、入り口のドアは閉まったままで下層への入口も開いた様子はなかった。やはり裏ルートからの攻略はダンジョンは認めてくれなかったのだろうか?僕達が転移された部屋の方へ向かうと。地響きが鳴りだし、壁が開いていく。部屋の中の石柱が淡く光っていた。
「カナタ!!石柱が光っているぞ!!もしかしたら元の場所に戻れるんじゃあ」
「そうですね!!また違う場所に飛ばされる可能性もありますが行くしかないですね!!その前にせっかく倒した階層主のアイテムを回収しましょう」
後でパラミデスに回収されるかもしれないが、魔石と黒いローブを回収する。ランカさんが黒いローブはカナタが身に着けると良いと言われたので羽織ってみる。見た目よりも丈夫そうだ。これならば帰り道も身につけていれば魔物からの攻撃から身を守れそうだ。フードもあるので被ってみた。
「お前は誰なんだ?!ここで何をしている!!」
「ラ…ランカさんちょっと待ってくださいよ!!僕ですよカナタですよ!」
「カナタなのか??言われてみればそうだなカナタだな……でも意識してないと誰なのか忘れてしまう…何なんだ?」
被っていたフードを外すとランカさんは僕の事をはっきり認識できるようだ。フードを被ると人が居ることが認識できるが。それが僕の事までは意識をしっかり持たないと僕だと認識できないようだ。魔物と戦闘中は外して戦わないとランカさんに間違えて攻撃されてしまうかもしれないので気を付けよう。
僕達は淡く光る石柱に触れる。ここに飛ばされた時と同じように目の前が真っ白になり、気が付くと目の前には1番最初に触れた石柱があった。どうやら僕達はダンジョンの1階層の場所に戻ってこられたようだ。
「やったね!!カナタ!あたいまた別の場所に飛ばされるのかと思ってドキドキしていたよ!!」
「僕もまた違う階層主の部屋とかに飛ばされるのかと冷や冷やしていましたが、戻ってこられて良かったです!!」
帰りの道中で魔物と出会ったので黒のローブを試してみたが、魔物には効かないようだ。あくまで僕自身の存在の認識が阻害されるだけのようなので、ダンジョンに侵入してきた人族である時点でダンジョンの魔物は遠慮なく攻撃して来る。もしかしたら僕の存在の認識が変わって攻撃されなくなると思ったけど甘くはなかった。
「もうすぐ出口が見えて来るよ!カナタ!!あたい達頑張ったから報酬もいっぱい貰えるよね!!」
「そうだと良いですね。ランカさん、僕は疲れたので早く休みたいですよ…」
今回も何とか生き残れたが、次はどうなるのか分からない。早くクイナさん助けに来てくれないかな、ダンジョンの発見はイレギュラーだったのかも知れないけれど、これが続いたら間違いなく死んでしまう。ランカさんも僕がホイロス城砦で問題なく仕事ができるようになったら、弟と一緒にここを発つだろうし…
ダンジョンの出口まであと少し…ダンジョン攻略に階層主の討伐。通知音はなっていないがさすがにレベルが上がっただろうと思い、ステータスを見てみるがレベルは1のままで何も変わっていなかった。
チム子です。
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