43 ホイロスダンジョン
このホイロス城砦に来てからは毎日ランカさんは僕の部屋に侵入してきては僕の寝床で我が物顔で寝ていた。そして当たり前のように僕の掛布団はランカさんに奪われている。人間何回も同じ状況になると慣れるもんなんだな。
どぎまぎしていたあの頃が懐かしい。最近は特に動じることもなく、朝起きたらランカさんを起こして仕事に向かうのが日課になっていた。今日の仕事の準備をしていたら僕を呼びだす声が聞こえて来る。騎士団のサイロさんが僕の部屋に尋ねてきたようだ。
「久しぶりだなカナタ!!門番の仕事だからか中々会う機会が無かったけど、元気にしていたか?むむ…お前は…何だカナタも隅には置けんな!!」
「そんなんじゃありませんよサイロさん!!それよりこんな朝早くに何かあったのですか?」
「分かっているよ冗談だ。カナタも聞いて居るだろうが、ダンジョンが見つかったんだ。それでパラミデス様からカナタに頼みたいことが有るらしくそれを伝えに来た」
「………………」
パラミデスからの頼み事…ダンジョンが現れてから急に頼みたいことがあるなんて怪し過ぎる。どうせ碌なことが無いだろうが、今の僕の置かれた状況ではその頼みを聞かない選択肢はない。仕方なくパラミデスの下に向かおうとするが先程からランカさんの様子がおかしい。サイロさんが来てから無口になり存在を隠すようにしている。
「お前もだランカ、カナタと共にパラミデス様の所に行くんだ」
「……………はい……」
「カナタも大変だな。この可愛げのない無口と組まされるなんて、弟はまだ話が分かる奴だったがな……」
何を言っているのか分からない、ランカさんが無口?ランカさんも様子がおかしくなってしまったし、今はとにかくパラミデスの下に行ってその頼みの内容を聞いてみよう。サイロさんが去った後にランカさんは大きなため息をついた。
「ランカさんどうしたんですか?いつもと様子が違いましたけど、もしかしてパラミデスさんの頼みの内容が何か気になりますか?」
「違うよカナタ。あたい達の前任者のカミラさんってお世話になった獣人が居たんだけど、その人曰くこのホイロス城砦に居るに奴らに愛嬌を振りまいてはいけないって言われたんだ。カミラさんはあたい達に仕事を教えてくれた後に自分の村に戻って行ったって聞いたけど、何となくカミラさんの言いつけを守っているんだ」
人間は魔族に対して基本的に悪感情を持っている。気に入られた方が仕事をする面では楽なような気がするけれど、何かあるのだろう。僕たちはパラミデスの待つ部屋に向かく事にした。部屋には上機嫌にプアアのステーキを頬張るパラミデスが座っていた。
「待っていたぞえ、カナタとランカ。お前たち2人には発見されたダンジョンの調査をして貰うぞい」
「あの新しく発見されたダンジョンですか?大丈夫なんですか?それを僕達2人で?」
「だから調査をして貰うぞい。我が騎士団はホイロス城砦を守るという任務があるので動くことは出来ないえ」
簡単な話、僕たちは炭鉱のカナリアなのだろう。前人未到のダンジョンに向かうには自身の騎士団を使うのが危険なので、もし死んでしまったも替えが効く獣人のランカさんと最悪死んでも構わない罪人の僕で調査するという事だろう。ランカさんも珍しく憤っているがパラミデスから何か耳打ちされると青い顔になりダンジョンに行くことを渋々了承した。
ダンジョンまでの道中は、サイロさんと他2名の騎士団で送ってくれるそうだ。武器と防具は持たせて貰えたが、サイロさんや他の騎士団の方々はダンジョンには入らずに入口で待機するそうだ。パラミデスの命令だから仕方がないという事らしい。
「あとそうだカナタ。この魔道具も装備してもらう、これはかなり珍しい魔道具でカナタが見た景色を対になっている別の魔道具に記録されるから決して外さないようにな」
「おい見ろよ…ちょっと勿体ないよな……俺たちもパラミデス様に……」
「おい!!お前らもさぼってないで周囲を警戒しろ!!ここも魔物が来るから安全じゃないんだ!カナタが戻ってくるまでここを守っておくのが俺たちの仕事だろうが!!分かったな!!」
「「は…はい!!」」
怒られて委縮する騎士団を尻目に僕たちはダンジョンの入口に入っていく。降りていくとヴェルタニアのダンジョンに非常に似ている気がする。どこまで続いているのか分からない見通しの悪い迷宮の道が続いている。前に入った時はミゲルさんに貰ったルートの書かれた地図を見ながら攻略していたので迷いはしなかったが、今度は手探りで攻略していくしかない。帰りの事も考えて道中に印をつけながら進んでいく。
「カナタ!!この匂いゴブリンが来るよ!!気を付けて」
「グギャギャギャアアアア」
このダンジョンの1層もゴブリンが出てくるようだ、3体出て来たが1人で倒すことが出来た。黒剣で戦うより短剣の二刀流の方が向いているのか扱いやすい。ユーリさんから貰った黒剣には思入れがあるので、ヴェルタニアに戻ることが出来たら黒剣も扱えるようにしたい。レベルは相変わらず上がってはいないので難なく倒せたのはランカさんの訓練の成果なのだろう。
「カナタやるじゃない!!これもあたいの訓練の成果だよね!!次も来るよ今度はあたいに任せて」
このダンジョンに誰も入ったことが無かったせいなのか、ゴブリンたちがヴェルタニアのダンジョンの比ではないくらいに現れる。そして聞いた事があるこの何かが崩れる音、壁のひびから赤ゴブリンが這い出て来る。前に戦った時とは違い今度は2人で相手をする事になった。
僕とランカさんで赤ゴブリンを何とか倒すことが出来たが、体力はかなり消耗されてしまった。しかしランカさんは僕とは違い、どんどん元気になっていく。気のせいかランカさんの身長も伸びた感じがする。それに髪の毛も伸びているような気がするしお胸の方も……
「何かどんどん力が湧いてくるよ!!」
「なんかランカさん成長してませんか??僕の目がおかしくなってる?」
「おお……12歳の時からこの姿だったけど、もしかしてレベルが上がった?!!やったよカナタ!!」
更に大人びた姿のランカさんに抱きしめられて顔が熱くなってしまう。それにしても12歳からこの姿?ランカさんに詳しく話を聞いてみると、なんとランカさんは僕と同い年だった。
僕の世界でいうと大学生くらいかの年齢かと思っていたが違ったようだ。魔族は年齢だけではなく、レベルによっても身体は成長するそうだ。3歳で私と同じくらいの成長をしている獣人も居ると言われたときは開いた口がふさがらなかった。
獣人はレベルによって寿命も変わるらしく、レベルが1000近づくにつれて老化の進みが遅くなるそうだ、レベル10000やそれ以上のレベルとなると魔神になるとかならないとか神話レベルのお話らしい。
「調子がいいからガンガン行こうよ!!カナタ!!」
「ダメですよランカさん!!ここは前人未到のダンジョンですから何があるかわかりません。慎重に行きましょう」
それから何時間か歩いたのだが、下層へとつながる階段らしいものは見つからなかった。もしかしたらこのダンジョンは1階層だけなのかと思ったが、階層主の部屋まではいかないが開けた場所を発見した。モンスター部屋なのかと身構えたが、中に入っても罠が作動したり、魔物が襲ってくる様子はない。中央には石柱が置かれていて何か書かれてあるようだ。
「何だろう?カナタ……文字みたいだけれど読めないや」
「手で触れれば……まで行ける……削れて読めないや」
「カナタ読めるの?!すごいすごい!!どれどれ~」
「ランカさん危ないから無暗に触ったらダメだ!!」
ランカさんの周りに魔法陣が浮かび上がり輝きを放つと、目の前からランカさんの姿が消えてしまった。僕も追いかけるために石柱に触れると、魔法陣が浮かび上がり目の前が真っ白になる。気が付くと辺りは明かりが無いので暗くて何も見えない、あの魔法陣に別の場所に飛ばされたようだ。
「ランカさん!!居ますか!!居たら返事を下さい!!!」
「カナタ!!良かったあたい死んじゃったかと思ったよ」
「とにかく暗いので明かりをつけますね集光石は持って来てあるはずだから……」
集光石で辺りを照らすとそこは石柱があるが他には何もない部屋だった。石柱に触れてみるが、なにも反応はしない。閉じ込められて後は餓死するのを待つだけなのかと絶望しかけた時、ランカさんが何かを見つけたみたいだ。
「ここの壁に今度は石板があるよ…何か書かれてあるけどやっぱり読めないや」
「同じことが書かれてありますねでも『手で触れれば不死の主の扉開かれん』って書いてあります嫌な予感しかしませんが、他には何もなさそうなので危険ですが、今度は僕が先に触ってみます。何かあったら逃げてください」
石板に触れると地響きは鳴り壁が震えて開いていく。この部屋に光が差し込み目の前には巨大な馬に乗った骸骨の騎士が目の前に待機している。あれだけの音がしたのに僕達に襲い掛かってくる様子はない。この感じどこかで見た気がしたが思い出した階層主の部屋と同じだ。どうやら僕達はあの魔法陣で階層主の部屋の前まで飛ばされてしまったようだ。
チム子です。
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初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
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